どうやら人生は一度きりではないらしい。

危険な行為を改めさせる大人のセリフ。「人生は一度きりなんだから」うんたらかんたら。はーいときちんと返事をする子供たちに交じるわたしは何とも言えない気持ちになりながら同じように返事をした。
突然だがわたしには生前の記憶がある。それは“前世”と呼べるものだろう。どうしてかという疑問に答えられるはずもない。だけどひとつだけわかることがある。わたしは『拾われた』のだ。野良猫を保護するような同じ意味で。
小さな島国のありふれた家庭で生まれ育ち、平等に与えられる教育を受け、これまでの経験を生かした道へと進み、さあこれからだって時に死んだ。自分自身の伝記を記すならば1ページにも及ばない短い人生だったと思う。これからだというのに、同情の言葉をどこかで聞いた気がするからたぶん若くして逝ったのだろう。あいにく死因は覚えていないが。
ただ死んだ後のことだろうか、それは覚えている。目を閉じた世界で体から引き離されたわたしは宇宙空間にいた。死んだら星になるなんて話はほんとうだったのだ。とか何とか思ったのかどうかはさておいて。そんな曖昧な意識は溶けて消えることなく、ぷかぷかと雲のような心地で浮かんでいた。時間的感覚は抜け落ちていたからどのくらいそうやっていたかはわからない。しばらくなのか、すぐなのか。わからないが変化は起きた。一瞬にして世界は白んだのだ。
『       』
『     ・・・に・・・』
『   ・・・なじ・・・だ』
「君は本来の流れから弾かれた」
先ほどから聞こえていた音が“言葉”だとやっと理解したらこれである。彷徨っていた魂を拾い上げた、形成が整うまで時がかかった、・・・言葉は理解した、が意味は不明。
「異なる世界の魂よ――君に託したいことがある」

あの声の人と話(?)を終えると、何かに引き寄せられるまま大きな大きな男の人と小さな小さな子どもがいる部屋を通れば、止まっていたはずの呼吸をしていることに気が付いた。そして目が潰れそうな眩さがふいに陰る。なんだと不思議がっていれば目の前で大の大人がえぐえぐと泣いていてぎょっとした。嗚咽を繰り返しながらわたしに笑いかけてくる男が「無事生まれてきてくれてよかった」とまた涙を流している。「ええ。泣かなくて心配だったけど、丸いお目目がかわいいわ」そう言ってのぞき込んでくるのは優しい眼差しをした女の人だった。(マジか)たくましい腕に抱き上げられ周りが見える。けど白くて小さい鳥がピイピイうるさいわ眩しいわで顔を顰めたら男の人が慌てだした。「ちょっえ!!?っ泣きそう!この子泣きそう!!」「あなた落ち着いて」目にした少ない現状から察するに、この人たちはどうやら父と母であり、わたしは生まれたばかりの赤ん坊であるらしい。マジか。

人生二度目の舞台は音の響きが懐かしく思える――煌いう小さな国だった。街もそこに住む人も昔見た歴史ドラマと似ていてとても住みやすく思っていた。けれど相次ぐ戦に大黒柱を失い、母と兄そして妹と一緒に国を出た。記憶と被るから気に入っていた場所を去らなければいけないのは残念に思うがしょうがないと簡単に割り切れたわたしと違いどこか悔しそうな兄と離れたくないとぐずる妹。色々と疲れ切った母に寄り添う父の言葉を借りるなら達観した子どものわたし、そんなわたしたち家族を見て荷車に居合わせた乗客が戸惑いの表情を浮かべているのがわかりこっそりとため息を吐いた。(一家離散よりマシだし、それにわたしは何も出来ない子どもだし。・・・ああだけど)言い訳をつらつら並べながらふと視界に過ぎる黒い鳥。ついてきたのか紛れ込んできたのか知らないがこの黒い小さな鳥は何だか気がかりだ。あの国で日に日に多くなっていくような、・・・まあいいや。新天地でのこれからを考えよう。身振り手振りを繰り返す父から目を逸らして気持ちを切り替えた。



(転生主。煌帝国出身。つづく・・・かもしれない)

18.04.14 18:01 magi(bun)
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