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朝ごはんをしっかりいただき、行ってきますとドアを潜り抜け、通学路を進む。その途中立派な門構えをした家を通り過ぎる――ところに門のそばで箒を握る強面の男が片手を上げる。「おはようあづきちゃん。いや〜もう高校生なんて時間が経つの早いな〜」と締まった顔がゆるりと崩れる。小さな頃から見ていた女の子がすっかり成長しちゃってまあ、と頬に手を当てて笑うおばちゃんのような感想に思わず照れ笑いを返す。この人の目から見たらそうだろうな。実際昔からの顔見知りだった。
「・・・じゃあ行ってきます」
気恥ずかしい思いをしたまま頭を軽く下げて歩き出そうとした時。バタバタと慌ただしい音が次第に近づいて、「行くぞあづき!」慣れ親しんだ声色に焦りが含んだそれは強引に腕を掴み取った。「坊っちゃん!危ないから送っていきやすって!」「いらねぇよ!!」いきなりのことに走り出す背中を目を白黒させながら追いかける。
「始まって間もねぇのに家のことで目立ってたまるか」
(あ〜またか)
後ろを振り返って追っ手が来ないことがわかると速度を落として息をついた一条楽は朝のドタバタに巻き込んだ少女に詫びた。「わりぃな。朝から走らせて」「べつにいいよ。いつものことだし」怒った風な言い方ではなかったがどこか不機嫌な様子に楽はえらく動揺する。
「わ、わるかった!ごめんな!?っすみませんでした!!」
「? だからいいって。それより遅れるから急ごう」
じゃあなんで機嫌悪そうだったんだよ。納得できなくて楽は思い切り顔を顰める。後ろで幼なじみがそんな顔をしていたことを知らないあづきはこっそり溜息を吐いた。