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新しい転校生と恋人を巡って一悶着があったらしい。そんな真新しい噂が流れてそれを聞いた人が「ホントなのかな?!」と恋愛ドラマの展開にドキドキするような感覚で話題に出した。見てた見てたと目撃証言はいくつも上がり、「あづきも見てたでしょ?」と回ってきて正直に首肯した。女の子だと明るみになるところもしっかりと見ていた。その後の(幼馴染の)惨状も。
またもやクセのある転校生が隣のクラスに仲間入りしたようだ。いいよなー。またかわいい子が。うらやましい。と、クラスメイトの男子たちは不平不満羨望が駄々洩れであり、「これだから男子は」やれやれと呆れ果てる女子の中に一人ぼんやりとしているのは、普段からぼうっとしていることが多いと言われがちのあづきだった。彼女はこの時話題に上がっていた幼馴染のことを考えていた、訳でもなく単純に睡魔と闘っていただけだった。だからか校内放送に気付かなくて友達の声掛けで自分が呼び出されたことを知ったのだった。
ところ変わってお隣のクラスでは。今しがたの放送を聞いて反応する生徒が数名。同じ出身中学の二人がアッと気付き、幼馴染の男がオッと嬉しそうにスピーカーを見上げ、恋人同士の二人がエッと意外そうに驚いていた。一人青いリボンを傾けるのは先日の転校生である鶫誠士郎だった。
「知り合いですかお嬢?」
「あ、うん。そうなの友達なの。今度紹介するわ」
「あづきちゃんが呼び出されるとか何だろーねー?」
「・・・・・・すっげぇ心配になってきた」
「・・・私まで心配になってきちゃった・・・」
「小咲たちが考えてる悪い呼び出しじゃないと思うけど」
と言うとつられて青くなった親友は少し顔色を明るくさせて同調する。その一方で未だ青い顔色の男は払拭し切れない思いを携帯に打ち込んでいた。宮本るりは思わず眉を寄せてその様子を見つめた。
親友の想い人である楽がそばから離れない女性、が居ながら千棘と恋人とはどういう事だと交際宣言を見聞した時に思い切り顔を歪めてしまったのも彼女の存在を知っていたからで無理のない話だった。だから我慢できずに本人に直接問い詰めたら「あづきとは元々付き合って、ねぇから」と何だか歯切れが悪そうに聞こえるような否定をされた。中学の時に同様の質問を彼女のほうにぶつけて返ってきた答えと同じである。が、どこか腑に落ちない。親友の小野寺小咲に言った「相手に好きな人がいるからって云々」は曲げないけど今まで見てきた現実は一体何だったのか。否定しながらも隠しきれない感情が滲んだ顔はやはり気のせいではなかったのか。こうして気に掛ける様子はやっぱりそうなんじゃないの?
るりが懐疑心を強めている頃。職員室に向かっていたあづきは呼び出される心当たりを一つ思い浮かべていた。
「良かったな。第一関門は無事通過だ」
そしてにこやかに手渡される書類を目にして言い様のない安堵が広がるのを感じていた。