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通された部屋にはテーブルを挟んだ向かい合うソファーがあり「何もない事務所ですけどどうぞ」と眼鏡の少年が言っていた。そのひとつにカナちゃんと並んで腰掛けた。向かいではジト目をした銀髪の男の人が座っていて案内してくれた少年はお茶を用意するとかで姿がない。お客様への礼儀という口実でいち早く逃げたのだ。お茶はいいからこの場にいて欲しかったと初対面だけど恨めしい。
この空気を瞬間的に読み取った少年が早く戻って来ることを願いながら視線を落として彼らが話し始めるのを待った。それにしてもなんだろう。見られているような気がしてならない。前から伝わる見られている感じに居心地の悪さはメーターを振り切った。(帰りたい帰りたい)コマーシャルのようなあったかい歌とはまるで違う呪文を繰り返す私はまるで先生に叱られる前の生徒みたいにビクビクしている。そんな私に気付いたカナちゃんが「この子が怯えるからそんな怖い顔すんなって」と男の人に向かって口を開いた。

「久しぶりに会って積もる話もあるけどそれは追々ってことで。まずは本題から話すよ」

ここへ来た理由を話そうとしているカナちゃんの横顔に視線を移す。その時、目の前のこの人が『依頼』と聞いてきたことが頭をよぎって、そのことかなと浅く考えていた。そして次には、このあとはどれくらい歩いたらカナちゃんの家に着くんだろうと他のことを考える。だからこの時カナちゃんの言葉の先を全く想像もしていなかった。

「この子をここに住まわせてあげて」