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「あの、なんですか今の。それって依頼じゃないですよね・・・?」
「まてまて話が見えない」
用意したお茶を持参して今頃戻ってきた少年は会話が聞こえたらしい。理解したくない気持ちがアリアリと伝わる表情で、片手を顔に貼りつける彼の後ろに立った。二人のこの反応は当然だろう。私だってそうだ。これでは。
「話が違う!」
憤るほかない。だってこんな話じゃなかったはずなのだ。
カナちゃんはあの時こう言っていた。周りのあからさまな態度に息苦しさを覚えた私に上京を勧めたあの時に、住む家の心配はしなくていいと言っていた。こういうことではない。私が考えていた住む家というのはこういうことではない。
今にして思えば何でよく考えもせずに納得なんてしてしまったのかと、これからの都会暮らしを夢想していた私を殴りにいきたい気分だ。握り拳を浮かれている私の頭に落としたい。そしたらこんな自分に非がないと思っている顔を見ることはなかっただろうに。
「何が違うって?初めからこう言わなかった?」
「言ってない!」
「あれ?」
「こんな話は聞いてない!」
「そうだっ、・・・けぇくしょいっ!」
盛大なくしゃみが4連発。溜まっていたものを吐きだすような勢いのあるくしゃみを目の前でかまされて思わず気勢が削がれた。ぽかんと固まっていると再びどこからともなく取り出したティッシュ箱からちり紙を引き抜き鼻をかみ始める。「だめだ・・・ここ息しにくい」
「は?」
「実はここに着いてから鼻がムズムズしてたんだよね。君が出てきた時にくしゃみ出そうになったし話の途中でも出そうだったからずっと我慢してたんだけどもう無理」
眼鏡の少年を指差して出会い先のあの出来事の事実をこうして知れば「場所を変えよう銀時」そう言って立ち上がった。