双子の一日(高2)


一日のサイクル

AM.5:30
双子の兄、たいがはすやすやと寝ている私の布団を剥ぎ取り、
寒い寒いと丸まる私を問答無用で抱き上げ、
洗面台のところまで、連れて行く。
靴下嫌いの私は冬だろうが夏だろうが、年中裸足である。
そんな私がまだ春も間もない、寒い朝に、冷たい床に足を下ろそうものなら…、
想像するのも恐ろしい。
だが、たいがは朝の時間は冷酷な一面を見せる。

朝の時間の過ぎ方というものは不思議なもので、恐ろしいほど早く経つのである。
夜の十分は朝の一時間と言ってもいいくらいに、とても早く時間が経つ。
たいがはそれを知っているので、朝はこれまた恐ろしいほど、行動が早く、
その行動を遅くするような真似をすれば、強硬手段に出るのである。

それが今されていることである。

「…!」

床に下ろされたときに、着地に失敗した。
足だけではなく、尻餅もついてしまった。
足の裏は直接、お尻はパジャマ越しに、冷たさが私を襲う。

ベッドの中に帰りたい…!

内心はそう叫ぶが、今戻ってしまったら、学校には行けなくなる。
そんな気がする。

冷たさに震え上がる私にも目もくれず、たいがはリビングへと姿を消していく。

今度、たいがのプリン食べてやる…!

ヘアバンドで髪を上げて、水道の蛇口を捻る。
流れる水を見つめ、覚悟を決める。

縦に流れていく水に手を突っ込んだ瞬間に、先ほど以上の冷たさに襲われたが、
息を止めて我慢して、その水を顔にかける。
ぞわぞわ、と背中に鳥肌が立って、ふくらはぎに変に力が入った。

「ぷっは」

事前に準備をしておいたタオルで顔を拭きながら、やっと目が覚めたと
あー、と息を吐く。
最低限のお肌のケアをした後に、髪を櫛で説いて、一度思い切り笑ってみる。

「うわ、ぶさいく」

思い切り顔を動かすのは、むくみをとろうとしているからである。
効果あるかは知らないけど、気分だけ。

そして、とろんとしかける目元を擦りつつ、
ドラム式洗濯機に昨日の夜から既に入れてある洗濯物を確認してから、
洗剤を入れて、スイッチオン。


AM.6:00

制服に着替え、リビングへ行くとテーブルには既に並ぶご飯。
味噌汁、白米、だし巻き卵、大根おろし、納豆。

「…和風だね」
「まあ、たまにはな」
「だし巻き卵美味しい。初めて作ったのに、すごいね、たいが」
「…まぁな」

うちの兄は、初めて作ったものが美味いと褒められると、ドヤ顔するくらいには
嬉しくなるようだ。

褒められて、誇らしげにするたいがを可愛い奴め、とニヤニヤしている間に、
朝食の時間が終わった。

AM.6:30

静かになった洗濯機の元へ急ぎ、洗濯物を取り出す。
二人分なので、あまり量があるわけではないが、いかせん兄は背が大きいものだから、
どうしてもその分、洗濯物が多いように見える。

水分を含んでいる服は重い。
洗濯物が入ったかごを引きずるように、ベランダへともっていく。

火神家の物干し竿は平均より低めというか、洗濯物係の妹のための
物干し竿なので、必然的に低くなった。

自分の衣服はスムーズにハンガーにかけていくが、兄のものは
どうしても手間取る。

内心、くっそ無駄に背高いなっ!なんて、思うが
口にしたら、怒られるので、今日も妹は黙って洗濯物を干す。

AM.7:00

登校時間。
妹がカギを閉めたのを確かめると、兄はやっと歩き出す。

「ちひろさん寝てるかな」
「まあ、学校近いしな、あの人」
「私たちは中学近かったけど、高校そうでもないよね」
「遠くもないだろ」
「そうだけど…」
「お前はも少し歩け」
「…」
「無視すんな」

PM 12:20

「名前お腹空いたね」
「ね」
「顔色悪い?」
「家に帰りたくて」
「体調良くなってるのに、引き篭もり癖悪化させてどうするの」
「すまんね、母さん」
「本当よ、もう」

私は綾お手製のお弁当を突きながら、思う。
家に帰りたい。

高1の頃はあまりまともに行けなかった学校への憧れで、毎日学校へ行くのが楽しかった。
しかし、慣れというものは恐ろしく、毎日毎日似たような授業を座って聞く…つまらない!飽きるわ!

と、綾さんに、ぶちまけると、飽きるの早すぎるだろと怒られた。

女心は秋の空って言うじゃないか、綾さん。

「明日は名前が弁当作る日だね。何つくってくれるの?」
「え、うーん、餃子?」
「大我の冷凍食品使い過ぎだから」
「…朝起きれないもん」

綾と私は毎日交代交代でお弁当を作りあいっこしています。
花嫁修業です。

PM 15:30

「終わったー!綾帰ろう」
「はいはい」

私は基本登下校を一人ですることがあまりありません。
倒れると大変だからだそうです。

綾が居ない場合はたいがの部活が終わるまで、待たないといけません。
非常に面倒です。
過保護過ぎです。

ですが、一度一人で帰ったときに限って、倒れてしまったので、もう何も言えません。


「じゃあ、ばいばい」
「明日も学校来なよ」
「たぶんね」
「こらー」

なんて、会話をしながら、マンションの下で別れる。
綾は向かいの一軒家だ。

PM 16:30

「わぁい、我が家だ」

家に帰ってすぐすること、お風呂に入ることです。
お風呂に入って、身体のケアをしながら、ネットサーフィン。
歯磨きをして、お風呂から上がります。


上がったら、髪を乾かして、ベッドの中へ。

PM 21:00 or 22:00

「ただいまー」

火神兄が帰宅です。
火神兄は部活でくたくたになった身体を引きずりつつ、妹の部屋へ行きます。

そこには、ベッドの上にノートパソコンを持ち出して、そのままうつ伏せで寝ている
妹が居ます。

火神兄は呆れた顔をしつつ、その寝姿を満足そうに見つめて、
部屋を後にします。

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