緑間と再会高尾と対面ノリノリ


水がかき混ぜられる大きなを音立てる洗濯機。
私はそれがちゃんと動いているのを確かめてからリビングへ戻る。

適当につけたテレビは芸能ニュースが流れていた。
その音に紛れて雨の音がしてベランダを見る。
結構な雨だ。

「たいが早くーお腹すいた…あ、たいが傘持ってたっけ?」

私は買い出し中の兄のために、バスタオルの準備に急いだ。
そろそろ帰ってくる頃だ。



「うわーもう最悪。タイミング悪過ぎ」
「…天気予報では晴れと言っていたはずだが」

真ちゃん、緑間真太郎は俺の相棒である。
その相棒の真ちゃんに付き合って今日はアイテム収集をしていたが、運悪く雨に降られてしまった。

「とえりあえず、あそこのマンションの下んとこで雨宿りしようぜ」
「そうだな。近くに店もないみたいだしな」

目に入ったマンションに向かって走る。
ぴちゃぴちゃ水が跳ねてズボンの裾が濡れる。
真ちゃんこういうの嫌いそうだな。その証拠にめっちゃ眉間に皺寄ってるし。

「チッ」
「舌打ちすんなって!」



「あーあー…びしゃびしゃ」

雨に濡れてぺたりとくっ付く髪を撫でる。
あーせっかくセットしてんのに。てか、服もくっ付くし気持ち悪。

「天気予報が外れる…なんて最悪だ。これも今日のラッキーアイテムラブリーニャンニャンネコミミが見つからない所為だ」
「真ちゃんよく恥ずかしげもなく言えるよな」
「?」

メガネを拭きながら、真ちゃんは不思議そうに首を傾げる。
カチューシャとか身につけるのは嫌な癖に言うのは平気なのか?
ラブリーニャンニャンネコミミってどんなだったけ?

「ねえ真ちゃんラブリーニャニャンネコミミって何なの?」
「白のネコミミに両サイドにピンク色のリボンに、小さく可愛いらしい鈴がついている。とてもラブリーなネコミミらしい。」

調べたらそう書いてあったと言って、真ちゃんはメガネをかける。

「真ちゃんそれつけんの?」
「…ラッキーアイテムだからな」

真ちゃんはまた眉間に皺を寄せた。
……ラッキーアイテムをつけた真ちゃん想像したら、何か危ない気する。目覚めちゃいけない何かが…
いや、普通にキツイワ。190超えた男のネコミミって。

「何だその顔は」
「ぶっは!今こっち見ないで!」

想像が余計にリアルになるだろ!せっかく人が笑うの我慢してんだから!
顔を背けると背中に訝しげな真ちゃんの視線が刺さる。
その視線を無視して肩を震わせていると、ぴちゃぴちゃ俺たちと同じような音を立てて誰かがこちらに向かってきた。

「ん?緑間と高尾!?」

その人物はエコバック片手に俺たちを見て驚いた顔をして、眉を顰めた。
そして、真ちゃんも眉を顰める。

「貴様、何故ここに居る!」



ガチャと玄関が開く音がする。

「たいが!おかえり!タオルあるよ!…?」

玄関で待機していた私はすぐにたいがにタオルを差しだ。
私は目をまん丸にして、あ、やべと思った。

「おーさんきゅ。名前コイツらの分も持ってこい」
「う、うん」

私は好奇心の目と、探るような目から逃げるように脱衣所に隠れた。



「へえー火神ん家ってここだったんだ」
「おい、火神あの幼児なんだ」
「真ちゃん幼児って…普通に妹だろ?」

雨宿りをしていた緑間と高尾を家へ招くと、二人はタオルで身体を拭きながらキョロキョロと部屋を見渡す。
あと、名前も。
人見知り発動中の名前俺の背中に貼りついて、ちょこちょこと頭を出して二人を見る。

俺の双子の妹だよ。と説明しようとしたときに、名前と緑間の目が合ってじっと見つめ合う。

「……」
「……」
「…あの、覚えてますか!二年前くらいに私おしるこもらったんですけど!」
「お前、やはりあの時の幼児か」

緑間は納得したように頷いた。
その言葉に、そう言えば名前は過去に青峰たちに偶然助けてもらったことがあるんだったと思い出す。

「え、なになに?どういうこと?」

一人状況は掴めていない高尾は首を傾げて名前と緑間を交互に見る。

「この幼児を」
「名前です。…幼児じゃないです。高校一年生です。たいがの双子の妹です!
緑間くんには昔助けてもらったときにおしるこをもらいました!」

どこかむっすりとして名前は俺の背中から自己紹介する。
多分幼児と言われるが嫌なんだろう。

「…は、俺と同い年だとっ!?」
「マジかよ。あ、俺高尾和成って言うんだ。同じく高一!よろしくな、名前ちゃん!」
「…よろしくお願いします」

緑間は目を大きく見開いて驚いているが、高尾の方も驚いたが切り替えが早いのか
すぐにニカっと笑って自己紹介をして名前に手を差し出した。
名前はフレンドリーな高尾の態度にぱああ!とキラキラした目で見て、その手を取る。

基本的に人懐っこい人柄の奴には人見知りしないんだよな。

「手小さい!」
「高尾くん大きいね」
「名前ちゃんもバスケやんの?」
「ううん、運動は基本やらないの。向いてないから」

名前はへらりと笑った。
高尾はその顔に何か感じたみたいだった気もするが、そっかと笑っただけだった。

「おい、火神」
「なんだ」
「双子の割にはあんまり似ていないな」
「俺とひなは二卵性だからな」

俺と名前二卵性だから似ていない

今までもこれからも俺と名前は人にそう言うんだろうなぁ、とぼんやり思った。
100%俺と名前を見た人間は兄妹と信じても、双子とは中々信じない。

「ねえたいがお昼は?」
「あ。忘れてた。何食べたい?」
「カレー!福神漬買ってきた?」
「買ってきた。じゃあ作るか。あ、ルーでもいいか?」
「…ルー以外で作れる兄を持つ妹は複雑だよ」
「なんでだよ」
「女子として負けた気がするから」

名前は幼い見た目とは似合わない表情をする。
言葉にすると、「どうせ!私の負けだよ!」って感じだ。

「あ、お前ら食ってくか?」
「え、いいの!やった!」

高尾はくしゃっと笑って両手を上げる。

「…まさか、火神お前が作るのか?それとも、こんな小さい幼児に作らせる気か?」
「幼児じゃないし!名前だし!料理出来るし!たいがは私より上手いし!」

むむむ!
そんな効果音が似合うぐらい名前はムッとした顔をしている。
俺よりでかい緑間を見上げる名前。

「火神が料理上手はは予想外だな。…同い年にさすがに幼児は悪かったのだよ。…火神妹」

緑間は気まずそうにメガネを人差し指で上げる。

「真ちゃんあんま変わってないから!」

ハハハ!と緑間の背中をバシバシと高尾は笑って叩く。
緑間は痛いのだよ!高尾!と怒る。



「じゃあ名前はビーラーで人参ジャガイモの皮向いとけ。高尾は玉ねぎな」
「うむ」
「おう」

俺の指示に二人は頷いてそれぞれの作業を始める。
俺はその様子を見つつも、牛肉を切ることに集中する。
その間緑間はカウンターの前に立ってじっと見つめて来た。

「名前ちゃん手慣れてるね」
「たいがの手伝いするから。いつもご飯作るのはたいがなの」
「へぇ…火神が。あれ?家の人は?」
「親父たちはアメリカで仕事してんだ」
「え、そうなの?」
「こっち来るときに、またお父さんアメリカで仕事しなくちゃいけなくなったの」

高尾は手際よく玉ねぎの皮をむき終わっていた。
何気に名前の手元を注意深く見ている限り名前がビーラーで手を切らないか心配なんだろう。

名前はそんなことも気にせず、むき終わった人参を水で洗おうとしていた。

「緑間は料理したりしねぇのか?」

ずっと黙っている緑間に問いかけると緑間は眉を顰める。

「…普段は母親がするから俺がする必要ないからな。まず機会がないのだよ」
「でも学校で調理実習あるよね?」
「うーん秀徳ではまだねぇけど。俺中学ん時あったよ」

名前が人参を洗っている間に高尾はじゃがいもをビーラーでむき始める。
それに気付いた名前は慌てるが、高尾はいいってと笑う。

「名前」
「うん」

もう一つまな板を出せば、まな板を水で洗って人参を乗せる。
包丁を取ろうとする名前に牛肉を切り終えたので、包丁を丹念に洗ってから渡す。
包丁を受け取ると名前は人参を切りだした。

「中学の時…何回か挑戦しようとしたが、やる度に女子が危ないからやらなくていいと止めたのだよ。
元々指を傷つける可能性のあることはやりたくないし、俺もそういうことに関しては器用じゃないからな」
「緑間くん料理苦手なんだね」
「へぇ、緑間料理下手ってことか」

俺は牛肉を炒めながら言うと緑間が怒った。横で高尾が「ちょ、火神ストレート!」と笑いだした。
ビーラー持ちながらだと危ないぞ。

「へ、下手ではない。苦手なだけだ!そもそも料理は女がやるものだろう。
俺が出来なくても困ることはないのだよ」
「でも一人暮らししたときに困っちゃうよ。外食や出来あいばっかじゃ身体に悪いし」
「そうだぜ。真ちゃん。今の時代料理が出来る男の方がモテるんだぜ?」
「別にモテる必要なんてどこにもない」

ふん、と緑間が鼻を鳴らす。

「なぁ火神。包丁もう一つあるー?」
「下に仕舞ってあるから勝手に使え」
「了解ー」

高尾が屈んでキッチン下の収納から包丁を取り出して洗って玉ねぎを切りだした。

「高尾くん…」
「うん?」
「高尾くんモテるでしょ」
「え、なんで?」

名前の言葉に高尾がちょっと笑って首を傾げる。

「気がきくし、社交性あるから」

名前は羨ましいなぁと呟いた。

「そう言うわれるとは嬉しいねー。ありがと、名前ちゃん」

軽く言ったように聞こえたが、嬉しそうに笑って名前を見下ろす高尾は優しい顔をしていた。
名前も照れくさそうに笑って高尾を見上げた。



「じゃあ、いただきまーす」
「いただきます」

高尾に習って名前も手を合わせる。

「相変わらずの量だな、火神」
「どういう意味だよ。つーかお前そんだけで足りるのか?」
「普通はこのくらいで丁度いいのだよ」

緑間はよく眉を顰める。
カレーを食べると、予想通りに上手く出来ていた。

「名前ちゃんはチーズ乗せるんだよね」
「高尾くんも乗せる?」
「うーん、でももう崩しちゃったしなぁー」
「おかわりした時とかは?」
「お、それいいね。てかおかわりしちゃっていいの?」
「たいがバカみたいに食べるから大丈夫だよ」
「誰がバカみたいに食うだ、こら」

すっかり打ち解けた高尾と名前は仲良さげに会話をしていた。

「名前ちゃんは火神と違ってあんま食べない感じ?」
「うん」
「名前は平気で三日ぐらい飯抜く時あるからな」
「え、それ危なくない?」
「俺が合宿のとき、冷蔵庫の中何もないからって抜いてた」
「…火神妹はズボラなんだな」

緑間の言葉に名前はまたムッとした顔をする。
その顔に緑間はな、何なのだよと少しタジタジした様子でカレー食べる手を止めた。

「私たいがの妹だけど。ちゃんと名前って名前あるのに…のに…」

じと…した目線に緑間は名前の言いたいことが分かったのかハッとする。

「名前…と呼べば文句はないのだな」
「ないのだよー!」
「なのだよー!」

どこぞのCMグーリンダヨ!風に名前が機嫌よく笑って言うと、高尾をマネして緑間に向かって言う。

「お前たちマネをするな!」
「きゃー真ちゃんが怒ったー!」
「きゃー!」

「おい、あんま暴れんな。カレー零れるぞ」

にぎやかな昼食だなぁ、と思いつつがカ名前レーとお茶をこぼさないようにテーブルの中央に寄せて置く。



「ごちそうさまでしたー!」
「ごちそうさまー」
「あ、雨止んでる」
「高尾、帰るぞ」
「その前に片づけだよ、真ちゃん!」
「いいよいいよ、私がやるから」
「お前らは一応客人なんだから、やんなくていいって」
「火神って意外に気がきくよなー」
「なんだよ、意外って…あ、そいやケーキあるけど食う?」
「食う!」
「名前に聞いてねぇ」
「小豆のケーキとか結構珍しいのがあ」
「仕方ない。食べてやろう」
「真ちゃん切り替えはやっ!」

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