どうしてこんな事になったのか。私は公演を見に来た一般人なのに。幸くんと三好さんに連れられて楽屋であろう部屋の前まで来た。
私達が来る前に、すでに廊下で一人の男の人が立って待っていた。無意識に幸くんと三好さんの後ろに隠れる。
こんな関係者しか立ち入れない所に来てしまった。いや、強制的に連れてこられたんだけども…
「おいお前ら遅いぞ!何してたんだ!」
「ごめんごめん!」
オレンジ髪の男の人が幸くんと三好さんに気付き、怒ってらっしゃる様子で。三好さんが軽いノリで謝っている。この男の人…どこかで見た事あるような…
「ゆっきーってば待ってても来ないんだもん!」
「いや、だったらLIMEしろよ…」
「ゆっきーから既読つかなくてさあ〜でもテンテンオレらの事待っててくれたカンジ?」
「ま、まあ…リーダーだからな」
「あれ?すみーとむっくんは?」
「ああ、二人は先に楽屋に入ってる」
やっぱりこの男の人も夏組の役者さんなんだ。どこかで見た事あるオレンジ髪の人が気になって、隠れつつもチラチラと見る。すると目が合ってしまった。
「ん?その人は…」
「え?あー、名前ちゃん!」
「いや、名前を言われてもな…一般の人を連れてきたらダメだろ。関係者以外の立ち入りは…」
「関係者だけど」
呆れた様子のオレンジ髪の人に、着いてから口を開かなかった幸くんがすかさず言葉を被せる。いや、私ほんとただの一般人なんだけどな…
「関係者って…どういう事だ、幸」
「これから衣装兼小物小道具係としてオレの手伝いをしてもらう予定」
「いやいや予定って!監督は知ってるのかよ!?」
「今から言う」
「そんなのいきなり言われても困るだろ!」
ちょ、ちょっと待って。なんか勝手に話が進んでるんですけど…話の中に入っていいのか分からず居心地が悪い。なんか自分が責められてる気がして。
と言ってもオレンジ髪の人は怒ってるっていうより、幸くんに対してツッコんでるって感じ。ツッコミ担当なのかな。
二人が言い合いで夢中になってる中、こっそり「三好さん、やっぱり私帰った方が…」と、三好さんに話しかけたら「オレのことは名前で呼んで!一成でもカズでも、呼びやすい方でよろろ〜ん」と、言われた。…頭が痛い。
二人の言い合いが終わらないのに、三好さん…いや、一成くんがストップをかける。
「まあまあ、ゆっきーも何か考えがあるみたいだし!テンテンも今のうちに自己紹介しちゃお!」
「今のうちって何だよ!」
「ほらほら〜」
「あー…、皇天馬だ」
「は、初めまして、名字名前です」
ん、皇天馬…?
「え…もしかして、あの俳優の皇天馬、さん…?」
「ああ、そうだ」
えええぇー!?芸能人!?
通りで見た事あるわけだ…こんな間近で芸能人を拝めるとは。しかも会話までしてるなんて!
こ、これは夢なのか…クラッと目眩がして、足元がフラつく。
「おっと、大丈夫か!?」
倒れそうだったのを、目の前にいた皇さんが咄嗟に肩を支えてくれた。その瞬間、ハッと我に返り現在進行形で距離が近い事に顔が赤くなる。
「すすすいません!ありがとうございます…」
「ちょっとポンコツ役者、いつまで名前に触ってんの?」
「いや、これは咄嗟の行動でだな…てか、ポンコツじゃねぇ!誤解される様な言い方はやめろ!」
「テンテンうらやま〜!オレも名前ちゃんとハグしたい!」
「ハア!?ちょっと一成!コミュ力高いのは口だけにしろ!」
幸くんと一成くんと皇さんの三人が廊下で、なかなかの声量で言い合いしてる。傍から見ているとほんと賑やかな人達だなあ。さっきまで動揺してたからその光景を見て少し冷静になる。
三人が騒がしいせいか、後ろの方でドアの開く音がした。もちろん三人は夢中になってるので気付いていない。
恐る恐る振り返ると、すごく綺麗な女の人がドアからひょこっと顔を出していた。