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「はいはい!ウッキーはもっと食べて!」
「待ってなまえちゃん、おなかすいてたけどさすがにこの量は…」
「はい!わらび餅も買ってきたよ!」
なまえは両手に持った出店のフードを真に差し出す。真はそれを受け取りつつ困ったような笑みを浮かべた。「俺も食べる!」とスバルはなまえが持っていたたこ焼きを受け取って口に頬張った。未だ冷め切っていないそれにはふはふと熱さをやわらげようとするスバルに、「落ち着いて食えよ」と眉を下げて笑う真緒。それを見守るあんず。しばらく見ていなかった光景だった。
Knightsの瀬名泉に監禁されていたこともあり、食事を拒否していた真はライブを終えると舞台裏に座り込んでしまった。積る話もあったがとりあえずはエネルギー補給をしようと一般客も多い出店のエリアにやってきたのだ。
対Knights戦は、真緒が戻ってきたとはいえ苦戦を強いられていた。のらりくらりとKnightsの猛攻を避けながら、真緒は不慣れなあんずを庇って戦っていた。なかなか厳しい局面が続いていたが、夢ノ咲の端のステージにあんずや花代が集めた客が集まっていたこともあり何とか持ちこたえていた。そこにスバルが真を連れて戻ってきたのだ。三人になったこともあり、一気に攻勢に出れるかと思われたが、Knightsも泉が戻ったことで勢いを増しつつあった。そこで真が泉に監禁されていたと聞いた真緒は観客を味方につけるためにその事実をステージの上で公表。辛くも勝利を収めたのだった。そのあとはなぜかほかのユニットと当たっても特に危ない場面もなく、順調に勝ち進むことができた。
「流星隊とか、いろんなユニットが緒戦からfineに挑んでるみたい」
真がアメリカンドッグを片手に自前のパソコンで自分たちが戦っている間のほかの様子を調べる。なまえも持っていたフードをテーブルに広げ終えるとポケットからスマホを取り出して見知ったユニットの勝敗を調べる。
紅郎の所属している紅月はDDDに出場していない。自分たちを助けてくれた千秋や、鉄虎がいる流星隊、軽音部の2winkは緒戦で負けている。零や晃牙の所属しているUNDEADは順調に勝ち進んでいて、次が準決勝のようだった。なまえはその結果を見て安心したのか息をついた。なぜ安心しているのか自分でもわからなかったが、少し不満げな表情をした2winkが来たことで意識が逸れた。
「流星隊が指針を決めた感じがします。
とにかく俺たちはfineの戦力を削いで消耗させることに腐心したんです」
「あなたたちへの援護、でもあるんですよ」
零からの指示でもあったけれど、一瞬でも学院に希望をもたらしたTrickstarに期待しているのだ。そう言うゆうたの言葉にひなたは深く何度も頷く。千秋たち流星隊も、彼ら2winkも、ほかのユニットも決勝でTrickstarがfineと当たって、勝てるように。少しでも勝利の確率を上げるためにみな生徒会長のユニットにぶつかって、散っていった。
「そっか」
千秋たちの行動の意味を知ったスバルは膝の上で握っていた拳を、そっと撫でて表情をやわらげた。噛みしめるように、皆の顔を一人ずつみて最後にあんずに笑いかけた。その表情はステージの上で見せるようなはじけたような笑みではなかった。少し眉を下げて困ったように、胸にあふれた思いをそっと包み込むようにやさしく笑った。
「ちゃんと届いてたんだ、みんなの心に」
いつもよりも柔らかい笑みを見せたスバルに真緒は彼の背をたたいて「負けられない理由が増えちまったな」と言って笑った。真もその言葉に頷いて返した。絶対に負けられない。革命は終わっていないのだ。なまえもあんずと目を合わせて頷いた。かけたピースはあるけれど、それでも前に進む彼らを支えなければ。最初からやることは変わらないのだ。なまえは強く頬を叩いて気合を入れる。最後に、やり残したことを果たさなければ。