場地姉は多分番外編でもポンコツであるC

【姉がなんやかんやで幼児化してしまった…!!】

「ドラケン助けてくれ!!!」

武蔵神社に何かを抱えて駆け込んできたのは場地弟だった。その場にいた隊長、副隊長はなんだなんだと弟に注目する。

「姉貴が…!!」


弟がライオンキングのようにかかげたのは何処かで見た事のある顔をした女の子だった。

「場地姉の子供か?いや、それにしてはデカいか…?」
「場地さんにソックリですね。いやどっちかというとねえさんにソックリ…?」
「親戚か?」
「違ぇーよ!これが姉貴!!」
「…は?」

全員何言ってんだコイツという顔である。
しかし場地弟、必死に今さっきあったことを説明する。何やかんやが何かしらあってこうなってしまったと。語彙力のない弟の説明はよく分からなかったがふてぶてしく抱えられたままの女の子があまりにも姉ソックリなため目の前の女の子は本当に姉なのではと思い始めた。

「なー、オマエ自分の名前言えるか?」

頼りになる長男三ツ谷が話しかけた。

「場地。」
「いや顔のソックリさから言って場地は場地だろーけど。」
「わたしの名前にもんくがあるの?おろせケースケ。」
「ウッス。」

弟は姉に従順だった。
そして姉、小さい頃は筋力がないため人の急所をつくのに躊躇がなかった。地面に下ろされ、細く短くなった足が振り上げられ三ツ谷の股間にクリーンヒットした。幼い姉は人の痛みをまだよく分かっていなかった。
蹲る三ツ谷、女の子が姉だと信じた全員。犠牲者に手を合わせる弟。

「うわコイツほんとに場地姉かよ…。」
「ずがたかいな…。」
「スンマセン。」

大きい男たちが姉の周りに跪いた。
天才だが幼かった姉はたまに難しい日本語を誤って使っていた。この場合背が高いなと言いたかったのである。

「なぁコレどうすりゃいい?」
「知らねーよこっちはもう犠牲者出てんだよ。自分で何とかしろ場地。」
「ムリだから連れてきたんだろーが。」
「えーねーちゃん可愛いじゃん。元に戻るまでお世話しよーぜ!」
「勘弁してくれ。オマエどっちかっつーとお世話される側じゃねーか。」


そこにバイク音が近づいてくる。

「ボスが幼児化したと聞いて!!」
「ボスどこだ!!」
「おいなんか来たぞ!!」

バイクで華麗に滑り込んできたのは灰谷兄弟だった。

「うっわボスそのまんま!かわいい!」
「ちっちゃーい!ふてぶてしい!」

次いでまたバイク音。

「ボス!!!!」
「また来たぞ何なんだよ!!!!」

モッチーだった。

「ちっちェエな!」

東卍はまだ来るかと身構えたが三度は無かった。カラアゲくんにボスレーダーは搭載されていなかった。

「連れて帰ろーぜ竜胆!」
「えー兄ちゃん面倒見きれんの?」
「屋上行くか?」
「おいモッチー子供が屋上って危ねーだろ頭使えよ。」
「うるさい。」

言い合いをしていた3人だったが、姉の一言により押し黙る。

「…首が痛い。」

モッチーの股間に小さくて可愛い拳がめり込んだ。倒れ込む巨体に顔を青くする灰谷兄弟。自分たちがその二の舞にならないように姉の前にそっと正座した。この2人、姉に対するいい子アピールが上手だった。
姉も姉で昔から動物がすきだったため兄弟がお利口なワンチャンに見えたので握りこんでいた拳を解いて2人の頭をヨシヨシした。ちなみにこの2人が忠犬なのは姉と王の前だけである。実際は都会を駆け回る稲刈り機のようなものである。弟が不良をなぎ倒し、兄が警棒で意識を刈りとる。まさに六本木の稲刈り兄弟。

「ねえボスオレたちと遊ぼうよ。」
「焼肉食い行く?」
「は?ねーちゃんはオレとたい焼き食べるんだけど。」
「姉貴さっきペヤング食ってたけど。」
「そこじゃねーよ場地。灰谷兄弟と一緒とかフツーに危ねぇだろ。」

東卍は跪いて、灰谷兄弟は正座で姉を挟んで言い合いをしていると姉が手を上げた。

「焼肉。」

その一言によりマイキーが拳を地面に叩きつけ、灰谷兄弟は揃って拳を突き上げた。
灰谷兄がふてぶてしい顔をしてふてぶてしく足を組んでいる姉を片腕に乗せ、灰谷弟は東卍を挑発しながら帰って行った。その場に残されたのは悔しがるマイキーと何とも言えない顔をした東卍幹部、そして股間がご臨終した塊2つであった。



ちなみに姉、寝て起きたらもとに戻った。





【もし血のハロウィンで姉が仕切ってたら】

東卍と芭琉覇羅が対峙しているなか、腕を組みながらその中央を突っ切っるのはフードを被って顔が見えないアンノウン総長。名前のない怪物と呼ばれている女、場地圭介の姉だった。姉の後ろには灰谷兄弟が控えていてwithB感が強い。

「よぉし、じゃあ代表前に出ろ〜。」
「ウチのボスが仕切りするんだ。みっともない喧嘩すんなよ〜。」

姉の左右の肩を肘置きにして軽く体重をかけながら、カッコイイモードの姉の代わりに進行する灰谷兄弟を周りの不良は信じられないものを見る目で見ている。

「乱戦かタイマンか決めろよ。」

withBの弟が言うと、勝った時の条件で代表が揉めだした。姉はさっさと決めんかいと思いながら1歩前に出て止めようとしたが、言い合いで熱くなった芭琉覇羅の代表者が仕切りであるはずの姉に拳を振るってきた。
それはwithB兄に止められ未遂に終わる…が、ボスに手を出されて大人しくしている彼らではない。

「オマエ、今ボスに手ぇだそうとしたか?」
「テメェらの抗争のためにわざわざ仕切り引き受けたボスになにしてんだ?」

兄は警棒を取り出し、弟は眼鏡を外して今にも暴れだしそうだったが姉が右手を軽く上げた。それを見たwithBは戦闘態勢を解いて姉の斜め後ろ、彼らの定位置に戻っていく。
その様子を見た東卍の代表者だったドラケンは生唾を飲み込んだ。ヤベー奴を従えるもっとヤベー奴だと今の一連の流れで理解したからである。

「…この抗争、私が仕切りであるということを忘れるな。好きに喧嘩しろ。だが、くだらない喧嘩なら直ぐに止める。反抗するなら私がそのチームを潰す。両者異存はないな?」

姉はそれぞれの代表者を見るが、フードで顔が見えなかったので頷いたか頷いてないかわからず勝手に始めることにした。姉はたまに唯我独尊だった。






激化する抗争を廃車の上でふんぞり返って眺める姉とその後ろにやる気なさげに座っているwithB。さらにその後ろに座っているガリ男はマッ〇を食べていて全員が全員タダの野次馬のようである。

抗争は激化し、東卍総長が鉄パイプで殴られ始めた。姉的には鉄パイプは姉の頭と同レベルの耐久力と思っているのでセーフ判定だった。姉は石頭なのだ。
しかし、フードにより視界が悪い姉のかわりにwithBがナイフをもつ芭琉覇羅の1人を見つけたことによりセーフ判定は簡単に覆ることになる。刃物は姉でも死んでしまうため完全アウト、それを持ち込んだ時点で芭琉覇羅は姉を完全に敵に回したのだ。


「この抗争、終わらせるぞ。」

姉は立ち上がり、フードを取ってかっこよく髪を靡かせた。
不敵に笑いながらそれに続くwithBと、未だマッ〇を食べ続けるデブ。

姉はナイフを持った男までの最短ルート、つまり抗争中の男たちを足場に軽々と走り抜けていく。そしてそのナイフが人を貫こうとした瞬間、姉の膝蹴りによりナイフを持っていた男が吹っ飛んだ。

「かっ!??一虎ァあああ!!?」

叫んだのは刺されそうになっていた男、彼女の弟である場地圭介だった。
よく分からないまま一瞬でノされた一虎をみた弟は考えるより先に姉の胸ぐらを掴みあげるが、その顔が目に入った瞬間死を覚悟してそっと目を閉じた。姉の「誰の胸ぐら掴んでるんだキック」をモロにくらって弟は朗らかな表情で眠りについた。これに関しては姉の存在に気付かなかった弟の責任である。
姉はチームのことはよく分からなかったが黒い特服を着ているはずの弟が白い服を着ていたので抗争中に蹴ってもセーフ判定だった。ちなみに黒い特服を着ていたら蹴りを食らうのは抗争後なだけである。


「あれ、場地くん…?」

弟の腰に引っ付いて若干蹴りの巻き添えを食らっていた金髪くんが姉の顔を見て呟いた。

「場地圭介の姉だよ。」
「お、お姉さん…?」

困惑顔の金髪くんから目を逸らし、その辺にころがっていたひしゃげた鉄パイプを拾い上げそれを廃車に向かって思い切り叩きつけた。
ゴシャッという鈍い音が響き、廃車の近くにいた男たちが動きをとめ始める。そこから伝染する静けさによって、騒がしかった廃車場は足踏みした音さえ響く緊張が張り詰めた空間へと変貌した。

積み上がった廃車の中腹から下にいる不良たちを鋭い目付きで見下ろす姉は、雰囲気を出すため手に持っていた鉄パイプを下にいる男たちに突きつけた。
withBは芭琉覇羅、東卍関係なく薙ぎ倒しながら着いてきていて姉の立つ廃車の少し下にかっこよく立っていた。雰囲気が出ていて姉はとても満足だった。

「抗争前に忠告はしていたはずだ。…多くは言わない、芭琉覇羅は私が潰す。」



そこからは抗争でも喧嘩でもなくただの蹂躙だった。
廃車場にある2つの入口をデブとwithBが抜かりなく塞ぎ、恐怖で逃げ惑う芭琉覇羅メンバーの意識を1発で狩りとって行く。10分もかからなかったその蹂躙は最後に副総長である半間修二にアイアンクローをかまして終わりを告げた。

「今回の抗争、東卍の勝ちだ。負けたチームのことは好きにしていい。弟の事も好きにしろ。」
「ねーちゃん!」

マイキーが姉を呼び止めるがちらりと一瞥するだけでその声には答えない。

「バカな弟をよろしく頼む。…帰るぞお前たち。」

姉は髪を翻しながら外野の不良たちを連れてかっこよく帰って行った。
録画し忘れた番組がもうすぐ始まるため早く帰りたかっただけなのだが、多くを語らない姉は中学生男子たちの少年心を擽った。姉の徹底した雰囲気作りのために、中と外がほぼ詐欺レベルであることを彼らは一生知ることは無かった。








【過去のアンノウンの話】

夜の帳が落ちてきた頃、姉は廃ビルの屋上のヘリに腰掛け片膝を立て片脚を投げ出し座っていた。
冷たくなってきた風が長い髪を攫い、姉の憂いを帯びる表情を隠す。


「ボス、揃ったぜ。」
「…そうか。」

1人の男に声をかけられ手に持っていたコーヒー缶をそばにおいてゆるりと立ち上がり、髪を靡かせながら振り向いた。
そこにはwithBやデブ、中華ゴリラなど不良界では名の知れた男たちが礼儀良く整列している。

「これより、アンノウンの集会を始める!」

姉の代わりに進行しているのは斜め前に立って後ろ手を組んで胸を張っている中華ゴリラである。いつも進行役は姉の右腕になりたい男たちの多種多様な勝負により決まるので固定の進行役はいない。ちなみに今回の勝負はババ抜きだった。一見勝ちそうなwithBは2人で組んでイカサマしたので強制失格になりカラアゲくんに八つ当たりしたため本日、カラアゲくんは集会を休んでいる。

姉はそもそも何で集会をしてるんだという気持ちと、集会の度に好意で貰う飲めないコーヒーを何でみんなコーヒー買ってくるんだろうという気持ちで憂いていた。
よく分からず開催される集会は毎回テンションが落ち込んで全部進行役に任せて基本的になにも聞いてない上、酷い日には一度に2文字しか話さないこともあった。
周りの不良から見れば今日も憂い顔で何か考えてんなと思われているが、その憂い顔はただコーヒーが苦いのが原因である。

勝手に進行する集会で、姉はコーヒー対策として持ってきていた棒付きのアメを舐めながら、足元に置いてある中身の入ったコーヒー缶が気になっていた。
ちなみにアメが棒付きな理由はなんかそれらしいからである。

「そーいやデブのとこ何か新しいチーム出来てなかったっけ?アビスとかいう。」
「アーゴリラんとこもインフェルノとかいうチームも出来てたよな。ダセー特服の。」
「そういう六本木も新しいチーム出来てただろ。」
「…どうするボス。全部潰しに行くか?」

飴を舐めながら意を決した姉がコーヒーを持ち上げてチビチビ飲んでいると、中華ゴリラが振り向きざまに話しかけた。もちろんこのとき、彼女は話を何一つ聞いていなかったが天才なので潰すという言葉でチームを潰すかどうかの話ということは理解出来た。しかし姉は今コーヒーと格闘しているので何処かのチームの事に興味がなかった。

「……そいつらは、私が行かなきゃ行けないほど強いのか?」

意訳としては、弱いやつをボコボコにしてもチーム作れないから行かない。コーヒー苦い。…である。

「ハハッ!んなわけねーじゃん!」
「六本木のはオレらでやるわ。」
「それぞれの仕切ってるとこのチームシメればよくね。」

しかし目の前の不良たちはその言葉を自分たちに良いように受け取った。ゆるゆるとした雰囲気だった男たちの顔が抗争をしているときのような好戦的なものに変化する。

「じゃーそれぞれのシマの面倒はそれぞれで見るっつーことで。」
「…ボス、他に何かあるか。」

聞かれた姉は少し思案してすっかり軽くなったコーヒー缶を掲げてプルプルと少し振ってみせた。

「次はココアが飲みたい。」

全員一瞬呆気に取られた。

「話は終わりだ、全員解散しろ。」

口を開けたまま姉を凝視する進行役の変わりに解散を告げて立っていた縁から降りて不良たちの間をモデルのようなウォーキングでかっこよく抜けていく。その時上着と髪をバサッとするのは忘れない。
withBは誰よりも早く我にかえり雛鳥のように姉について行った。残された男たちは口が半開きになったままお互い顔を見合せた。



後日、また勝手に開催された集会で全員がココアを買ってきたため屋上にはココアタワーが建設されることになった。
しかしあの日集会を休んでいたカラアゲくんは何も知らずにコーヒーを買ってきて袋叩きにされた。
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