04
「それじゃ!」
「じゃあな!」
行くところがあるからとメリーを降りたナマエは、私たちとは違う進路に船を進めていった。海を渡る姿は無邪気な子供そのままで、ルフィも姿が見えなくなるその最後の最後まで大きく大きく手を振っていた。ビビとの別れがあって、ロビンが船に乗って、今度はナマエとの別れ。なんだか今日は色んな事が盛り沢山だ。
「いやあ、行っちまったなー」
「なあルフィ、ナマエはずっと友達なんだろ?」
「ああ、おれが六歳の時からな。」
皆がその言葉に少なからず反応を見せる。私たちが口にしようか悩んでいたことを、チョッパーがさらりと聞いてくれたのだ。聞き耳を立てるのではなく直接話を聞く機会はこれを逃せば終わってしまう。
「ねえ、皆でお茶にしない?さっきナマエがケーキ食べてるの見てたら私もお腹すいちゃった。」
食べ物とあらばルフィが食いつくのは分かっていた。慌ててその話を聞く場を作った私に、皆が乗るようにラウンジへと足を向ける。
「ありがとね、チョッパー」
「よくやった」
次々に小さく降り注ぐその賞賛に、何もわかっていないチョッパーは首をかしげていた。
「ルフィはナマエを仲間にしたくなかったのか?」
「おれが誘ったんだ、本気で勝負したに決まってんだろ」
「でも、じゃあなんで‥」
ケーキを頬張りながら、チョッパーが再びこの話題を出すことをどこかで全員が心待ちにしていた。やはりルフィが手を抜いたわけではなかった。あの不思議な能力の謎が解けると思ったからだ。一瞬にして視線が集まるのを感じ取ったルフィは、私たち一人一人の顔をまじまじと見たあと、何か閃いたようにポンと手を打つ。
「シシシ、アイツの言う通りだ」
「何だ?ナマエが何か言ったのか?」
早速目を輝かせているチョッパーは、彼女の言葉に興味津々だ。やっぱりナマエはすげえなあと笑っているルフィが続けて答えた言葉に、私は少し恥ずかしくなった。本人は知らないふりをしてこの船に手を振ってくれたけど、本当は全部わかっていたんだ。自分に聞く事は無いとわかっていたから、私達がルフィに聞いてきたら教えてあげてねと言い残していったんだ。友達だと言っていたルフィを信頼しているから。
「でも、お前ら知ってるんじゃねえのか?」
ルフィによれば、ナマエは仲間の何人かは自分のことを少しずつ知っていると言っていたらしい。何人か、と言うことは私以外にも彼女の何かを知っている者が最低でも一人はいるということだ。
「私が知っている確かな情報は、これだけよ」
どう切りだそうか悩んでいる私の隣で、一枚の紙をひらりと机に置いたロビンが口火を切る。WANTEDと書かれたその紙を、私たちが知らないはずもない。うちの船長と同じように、手配書には不釣り合いの晴れやかな笑顔で映る写真を見て、船長だけが一人お気楽そうに笑っていた。相手が誰であろうと関係ない人だということは重々承知しているけれど、付き合いの長いルフィが知らなくて他に知ってる人なんているはずもない。海賊狩りをしていたというゾロも初めて見たという。それには、ルフィがナマエは海賊じゃないからなと当然のことのように少しずれた答えをくれた。
「ロビンはこれをどこで手に入れたの?」
「私が海に出て間もなくの事よ。」
「間もなくってお前、だって‥お前が海に出たのは八歳の時なんだろ?」
「ええ。二十年程前になるわ。」
「ほら見ろ、ははは‥なあ?」
自分がおかしなことを言っているのではないと、助けを求めるようにウソップがこちらに視線を送ってくる。そうよ、普通はあり得ないのよ。でも、船長はゴム人間、くじらの中に住める空間も見たし百四十歳近い元気なおばあちゃんをドラムで見てる。ちょっとくらい可笑しなことが起きたって驚かないわ。
「私もある島で偶然見つけたの。その時既に今とさほど変わらない、風化した状態だったから‥発行されたのはもっと前だと思うわ」
「ええと‥‥つまり、ロビンはナマエが少なくとも二十年は生きているって言いたいってこと?」
「そうね。まさかこの姿のままの本人を目にするとは思っていなかったけど」
ルフィも、初めて会った時から今日まで、確かに容姿は変わらないと言っていた。逆に驚いたのは、サンジくんも面識があったとことだった。