05
「レストランを始めてすぐの頃に一度な。クソジジイが初めて気に入ったガキだと言っていたからよく覚えてる」
サンジくんも会ったことがあるなんて、その素振りも見せていないし全然気が付かなかった。どうやら、彼をチビナスくんと呼んでいたから名前を聞いてもピンとこなかったらしい。あのレストランは確か八、九年前に創業したはずだ。ロビン同様、何一つ変わらないその姿に驚いたという。変わらねえなとオーナーさんが挨拶していたのは聞いたことがあったみたいだけど、まさかこういうことだとは思っていなかったとコーヒーを口に運ぶサンジくんが言った。
「ビビの父ちゃんとも友達だって言ってたよな」
「クロコダイルとも面識がある様子だったわ。どんな関係かまではわからないけれど」
「アイツの友達事情どうなってんだ」
「おれのじいちゃんとも友達だぞ」
「お前のじいちゃんと友達かは、今は置いとけルフィ」
「なんだ、友達発表じゃねえのか」
ルフィの天然ボケとそれに返すウソップは放っておくとして。友達という括りかはわからないけれど、白ひげも大きく分ければその一人だ。聞けば聞くほど凄い顔ぶれに、最早その人達が凄いのかも分からなくなりそう。まだまだ広がりそうな交友関係に上がる名は、私達よりもずっと年上だということが共通項となって浮かび上がる。一体何歳なんだろうか。それを知っているとすればルフィだけだけれど、当の本人は年は知らないと言う。
「生まれた年は聞いた気がするけど、忘れたな!」
ははは、と場の空気に反して緩く笑うルフィ。今それが大事なの分かるでしょと首根っこを掴むと、揺らされながらルフィは当然のようにこう言った。
「友達だ、歳は関係ねえよ。」
その真っ直ぐな言葉に、掴む手も必然的にゆるりと力が抜けた。ごめんと謝る私に気にすんなと笑いながら、ルフィから謎の糸口が少しずつ話されていく。もうみんな気付いていることだけど、やはりナマエはもう何年もずっとあの姿だという。一度だけ話してくれたのは、何とかという人と同じ年に生まれたということだ。
「ナマエはそいつのことがすげえ好きでよ、同じ年に生まれてよかったって笑ってた」
その言葉を聞いて、何とかという人が誰かすぐに分かった。あの子がそんなに嬉しそうに話すなんて、その人しかいないじゃない。
「ニューゲートだわ!」
思わず机を叩いて立ち上がった私を、皆が見上げる。一つ咳払いをして椅子に座り直すと、私も自分の知ってることを話すことにした。ルフィに言ったってことは、私が知ってることを仲間に共有することを許してくれているということよね。
「一緒に居た短い時間であの子の笑顔ばかり見てたけど、白ひげ‥ニューゲートのことを話す時が一番嬉しそうだったわ。」
「ルフィの兄貴も、アイツのことを白ひげの宝だって言ってたな」
ゾロが拾った情報に、おれは知らねえぞそんなこと!と牙をむくルフィとサンジ。悪かったなと挑発するゾロ。また始まってしまうと思った私は、彼らの声を掻き消すくらい大きく次の言葉を続けた。
「一緒にお風呂に入った時、ナマエは海に愛されているんだって白ひげが言ったと話してくれたの。」
「それはおれも聞いたことあるぞ」
「おれもだ」
今度は二人がゾロに対して挑発的になる。ウソップがお前らその辺でやめろと止めたのも無視して言い争いを始めるから、一発ずつ殴って話を戻した。ナマエがお風呂で見せてくれた波の事を話すと、チョッパーは目を輝かせておれも見たかったと言う。サンジくんもそれを見たことがあるらしく、その時はオーナーさんが、同じように海に愛されているんだと言ったそうだ。
「ナマエはそれを自分の能力だって言ってたわ。こんなに可愛い能力もあるのね」
「だけど、可愛いだけなら懸賞金はかからないんじゃなくて?航海士さん。」
確かにロビンの言う通りだ。けれど、彼女が机に置いた手配書はナマエの写真の下から破れていて金額は分からない。たっぷり焦らされた後、その破れた紙の下の一部を破れた跡に沿ってロビンが重ね合わせる。嘘でしょ、まさかね。そんな言葉が空気中にはじけ飛んだのを拾うように、ぴったりと一致したその紙きれは紛れもなくナマエのものであると言っていた。
「四‥?」
「おい‥これ、本当にあいつのか?」
「四がどうしたんだ?」
たった二字。ベリーマークと四が示す値をすぐに理解した人とそうで無い人、綺麗に反応が分かれた。何だよ教えろよと声を上げるルフィとチョッパーとウソップ。私はとてもじゃ無いけど声を出せなかった。
「一千万ベリー以上無いと、金額の最初の数字がこの位置に来ることは無いわ。」
ロビンの言う通りだ。私も海賊専門の泥棒をしていた時、ベリーマークが左端まで届く奴は要注意だと肝に銘じていた。つまり、少なくとも四千万ベリー以上の賞金首だということだ。
「恐らく、四億以上はあるはずよ。」
どれも確実な話ではないけれど、と言う彼女の微笑に止めていた息を大きく吐く。サンジくんがふらりと立ち上がり、何も言わずにコップに水を用意してくれたのを一気に飲み干して、全員同時にコップを置いた。