08
どんちゃん騒ぎの次の日は、大抵どこの船でも「飲み過ぎた」「頭が痛い」と言いながら、甲板をうろついている船員が何人かはいるもので。
「それにしたって多すぎんぞ」
「今襲われたらどうするんだろう?」
まるでゾンビのように項垂れて歩き回る船員を見て、エースが呆れたように声を零した。私も皆におはようと声をかけて回ったけれど、おー‥と死にそうな声で返事が返ってくるか気弱な笑顔が返ってくるだけ。床に転がる船員を退かすように蹴飛ばしてこちらへやってきたアルビダは、もう慣れたと言う様に首元を擦りながら大きく欠伸を零した。
「加減を知らない男どもで困ったもんさ」
「ひひ、おはよう」
「ん?はは、おはようなんて挨拶久しぶりだね」
「ねえ、キッチン使ってもいいかな?」
「さあ、良いんじゃないのかい?」
「やった!じゃあお味噌汁作ってこよ!」
「いいな、手伝うぜ」
お許しが出たところで、床に転がる人たちをひょいひょいと飛び越えながらキッチンへと向かう。エースもわりいなと言いながら彼らを跨いでついてきてくれた。
「おー!キッチンも荒れ野原だねえ」
「‥こりゃコックが泣くぞ」
積みあがるお皿にジョッキと空樽の数々。大変なのは次に料理をするコックさんだ。けど、私はこういう時の必殺技を知っている。とりあえずお水だけ鍋に張ってしまえばこっちのもの。あとはその大きなお鍋に貝を沢山放り込んでお味噌を投入すれば、すぐに完成だ。匂いにつられて一人また一人とキッチンに寄ってくる。
「洗い物三つした人からお味噌汁配りますよー」
やる気がある人は即座に水道の所に列をなして、洗い物は面白いように減っていく。やる気のなかった人も、お味噌汁の香りと他の人の美味しそうな表情を見ればやらない訳もなく、転がった樽を片付けたり、掃除をしたり。みんなに行き届く頃には、厨房も甲板もピカピカになった。必殺・働かざるもの食うべからず、だ。
「たまには自分で片付けなきゃね。綺麗になったから、おにぎり作る準備しよう!」
「いい匂いに誘われておれ様が来たぜー」
「はい、バギーお米研ぐ係ね」
「味噌汁をもらいに来たんだが」
「皆お皿洗って片付けたからお味噌汁配ったんだよ。バギーもやって」
「あいあいさー」
多分、まだ寝ぼけていて頭が回ってないのだと思う。素直にお米を研いでくれたし、エースにも普通におはようと頭を下げているバギーが、なんだか可愛かった。
「はい、ありがとう」
「くうーっ、働いた後の味噌汁はまた格別にうめえなあ」
五臓六腑に染み渡るぜ、と天にも昇りそうな顔で味わったバギーは、他の人同様に何も言わずとも自分で使った食器を洗っていった。ちょうどご飯が炊けた頃、この船のコックさんが来てくれた。お味噌汁が出来て一番に渡しにいった時もお礼を言ってくれたのに、またここでもお礼を言ってくれる。エースは、私が彼の頭に手を伸ばせるように抱き上げてくれた。
「コックさんもたまには休まないとね」
「ありがとうな。火拳も、お嬢ちゃんも。」
「ひひ、コックさんもおにぎり作る?」
「ああ、手伝わせてくれ」
この船の日常話を聞きながら、エースもくじらちゃんの船での話をしながら、大きさも三種類の仲良しおにぎりが完成する。
「おにぎり食べる人ー!」
甲板に持っていけば、何故かみんな一列で並んでくれる。さっきのが効いたなとエースもコックさんも笑いながら、青空の下皆でおにぎりを食べた。