09

朝のゾンビ徘徊を見兼ねて、その日はエースが用心棒をしてくれると提案すると、今日なら海軍が来ても怖くないだとかどうせならどこかの賞金首を狙おうだとか、バギーの船の上はまた大盛り上がりだった。

「お前ら元気だなー。これなら襲われても平気か」
「いや!おれたちまだ全然‥」
「動けねえからよ‥」
「てめえらシャキッとしろ!そりゃいてくれりゃあ心強いが‥いや待て、そもそも乗せてやってんだ。そのくらい当然か?」
「昨日の飯の恩もある。今日だけだし気にすんな」

エースがいるなら私もと何か起きないか楽しみにしていたけれど、あまりに穏やかな時間に瞬きが一気に増えた。どういうわけか、こういう日に限って驚くほど何もないものだ。釣りをしたり武器を作ったり技の練習をしたり、甲板に寝転がっていたり、皆思い思いに時間を過ごしていた。私はと言えば、エースと一緒にピエロみたいな船首の上でお昼寝もしつつ、ぼーっと夕日が沈む空を眺めている。

「ちょっとくらい敵が来てほしかったね」
「たまにはこんな日もいいさ」
「エースが戦うとこ見たかったよ」
「おれはお前が戦うところを見たかったけどな」

結局敵が来ない事にはどうしようもないなと、水平線の向こうに届くくらい力いっぱい敵来ーい!と叫んでみる。エースが私より少し大きい声で同じように叫んで、私がまたそれより少し大きい声で叫ぼうと大きく息を吸うと、後ろから飛んできたバギーに平穏な夕暮れをぶち壊すなと怒られた。

「ナマエ、いつまでここにいるつもりだ?」
「ん?そういえば招集の連絡がきたような」
「早く行けよ!ここに役人が来たりしねえだろうな?!」
「来るなら昨日のうちに来てるはずだから大丈夫だよ。それに今日はエースと寝るんだもん」

くじらちゃんの船ではいつもニューゲートと寝ているから、彼の息子の誰とも一緒に寝た事は無い。エースが初めてだ。エースもそりゃいいやと私の言葉に賛同してくれ、誰かと寝るのは久しぶりだと楽しみにしてくれている。

「人の話を聞きやがれハデ馬鹿野郎。おれは麦わらを探しに行かなきゃいけねえんだよ」
「何だ、ルフィを探してんのか。アラバスタで会ったぞ」

な、と私の顔を覗きこんだエース。もう出港したよと伝えれば、何だ早かったなと笑っている。青い髪の子を送り届けてワニ坊と喧嘩しただけだからと手配書を見せれば、額の上がった手配書にエースも自分の事のように喜んでいた。代わりに青ざめているのはバギーだけど、決して額に臆しているわけではない。

「お前まさか‥」
「ひひ、友達」
「それじゃあアイツも大物になってっちまうじゃねえか!!」
「そんなことないよ、バギーだって友達だもん」
「あ、それもそうだな‥ってそりゃどういう意味だ?」

私の友達を多く知ってる彼にとっては、ルフィが私の友達というカテゴリにいることが気にくわないらしい。皆頑張り屋さんで優しいからなんだけどな。それに、言ったとおりバギーだって友達だ。

「まあまあ。ルフィの居場所は明日の朝教えてあげるからさ。もう一日だけ、ご厄介になります」
「本当そう言うとこだぞ!そういうとこだからな!!あと飯だから早く降りて来いよ」

ちょっと怒りながら降りていく背中は、甲板に降りたらまたこちらを振り返る。そして早くこいよとまた声を飛ばすのだ。優しいしアニキ肌だし、バギーだってきっといつか大物になるに決まってる。

「ありゃ相当お前のこと気に入ってんな」
「ひひ、昔から優しいんだ」
「ああ、なんとなくわかる気がする」

エースの言葉に嬉しくなって、その日の夜ご飯はエースと二人でバギーの両隣に座った。