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センゴクからの用件は二つ。一つはシャンがニューゲートへの接触を図っていると言うこと。地図をみたけどシャンとニューゲートの距離はそう近いわけでもない。近いうちに一度様子を見に行くねとだけ答えた。もう一つはステューシーちゃんと同じ、お偉いさんからの呼び出しだ。最終的には同じお偉いさんの元に行く話なのに、何で別々に同じ話をしなくちゃいけないのか、政府の人たちは面倒なことが大好きらしい。重要案件に変わりはないけど、緊急ならば彼女が一緒に来いと言っていたはずだ。それに、近いうちという言葉が許されるわけもない。面倒なことから目を逸らす代わりに、目を閉じる。呼び出されるようなことは何もしてないはずなんだけどなあ‥暗闇でも感じる太陽の日差しに包まれ、緩やかに落ちていく意識。バギーにも会ったからか、シャンにも会いたい。友達みんなに会いたいな。もうあと数ミリのところで突然太陽の光が消え、瞳の中だけでは無く辺り一帯を暗闇が一人占めした。

「待ってました!」

積帝雲の真下であることを示すその暗闇が先ほどまでの重たい気持ちを一瞬で吸い込んでくれたみたいに、踊り出したくなるほど心が軽くなる。バギーの船を急いで離れたのも、センゴクや政府の用件を後にしたのも、これがあったからだ。頭の中の地図にルフィの気配が不自然な動きをして空に向かって行くのが見えた時、積帝雲がそこにあるのだと分かって急いで向かってきたのだ。

「パスミー、久しぶりの空だよ!」

この空に浮かぶ島に来るには自分の航海している位置が何より重要だった。今回はあの巨大な影を見たわけでもなく、バギーがルフィの気配を探すよう声をかけてくれたから出会えた奇跡だ。雲の海にいる気配は地図には出ないし、丁度ルフィが海流に乗って上に登っているその瞬間だけがそこに空があるとわかる機会だった。滅多に訪れないこのチャンスを逃すわけにはいかない。ちょっと待っててね。船縁を軽く撫でて、大きく息を吐く。

―ちゃぷん

少し時間を要したけれど、その場で生まれた突き上げる海流は、自然的に発生するものとは違い一分も持たないけれど、パスミーならば十分辿り着ける。その化け物海流に乗って、あっという間に上空一万メートルに辿り着く。あまりに久しぶりなことで、勢い余って白白海まで突き抜けたのをラッキーと取るべきか、力の調整が不十分と取るべきか。いずれにせよ少し近づいた目的地までの旅を楽しむのが今の私のやるべきことだ。

「この舵輪が飾りじゃないところを見せてあげなくちゃ!」

こちらの真っ白な海は、下の海とは勝手が違ってどうもパスミーの進路が取りづらい。まずはパスミーを安全な場所に置きに行かないと。ツヤツヤの舵輪を握りしめ、いつもよりもゆっくりと白い海に飛沫を立てる。雲みたいなのに水があるって、本当に不思議。

「取舵いっぱーい!」

向かっているのは、随分開放的な神様のお家。神様がいくら強くて辺鄙な所に住んでいるとはいえ、正直安全な場所と言うには余りに不用心なお家だ。ふわふわした敷居は簡単に跨げるし、ほとんどの時間お家を留守にしているし。人里離れた場所だからこそ安全と言われれば、まあそれはそうなのだけれど。

「邪魔するぜ!」

いつも通り誰もいない家に勢いよく入って行けば、菜園でカボチャの水やりをしている家主が如雨露を傾けたまま固まっている。それどころか来客までいるじゃないか。そのお茶のみ友達にぺこりと頭を下げると、「ヘソ」というあの謎の挨拶が返ってきた。