05

一直線に向かってきた先は、思ったよりもキラキラしてはいなかった。息を整えてから、細く長い息を一つ吐く。それから、辺りの酸素を目一杯吸い込んだ。

「頼もーう」

神と書かれた大きな扉に声をかけると、下っ端みたいな人が出迎え中に案内してくれた。手土産も持ってきていない私のことをこんなにすんなり通してくれるなんて、案外話せばいい神様なのかもしれない。

「ゴッド、お連れしました」

ソファに横たわっている若い男。これが、エネル。後ろの太鼓って叩いてもいいのかな?棒無いか、棒。つい癖で手を振ると、案内人のおじさんがゴッドに向かって失礼だぞ、とその低い声を私に向けた。

「こんにちは、ゴッド」
「子供、か。何者だ?」
「ナマエだよ。ただの青海人。神様が替わったって聞いたから会ってみたいなと思って。」

私の言葉に少しだけ反応を見せる。興味を示したのか、寝そべる身体を起こして胡座をかいた彼が不敵な笑みを零した。

「新たな神を見て、何を思う?」
「んー、前の人みたいにおじいちゃんかと思ってたから、若くてびっくり」
「‥何が言いたい」
「素直な感想だよ。心の中だっておんなじことを言ってると思うけど」

余裕を含んだ笑みは徐々に消え、刺激を帯びた小さな青白い光が目の前の大気に流れる。一触即発。私が一歩でも動けば、攻撃するぞと言わんばかりの稲光。

「何も知らぬというのは、幸せだな」
「ん、私もそう思う。」

聞き覚えのある台詞を、まさかこっちの海でも聞くことになろうとは。声高に笑った彼に合わせるように、一閃の雷が私の真横に落ちる。私を狙う大人の顔とも少し違う。支配欲にまみれた瞳。嫌いじゃないけどね、そう言う目。久しく見ていないその視線と落とされた雷に触発されたように、口の端がくい、と上がる。それをしっかりと確認したゴッドが、人差し指を天に向ける。

「我は、神なり」

その言葉と同時に、劈くような音と一緒に大きな雷が落とされた。それから、何秒か空けてもう一度。私に落ちた雷は、彼の意に反して辺りにいた彼の部下へと枝分かれするように流れていった。

「ひひ、その顔が見たかった」
「貴様、何者だ」

余裕に満ちたその顔がこわばっていく姿を真正面から見上げて存分に拝んでやる。いたずら好きな男が、いたずらをし返された事は無かったのだろうか。小手先で倒せると思っていただろうに、可哀想だけどこっちは大成功だ。まさに光の如く目の前に移動してきたゴッドに肩を掴まれたけれど、攻撃されることはもうなかった。

「ただの子供だよ、今はね」

言葉と一緒に手を放す。そして、ひょいとソファへ戻りすとんと腰を下ろした彼は、一際長く笑い声を響かせた。

「ヤハハハハハ、実に面白い!気に入った!子供、ナマエと言ったか?」
「そうだよ。ゴッドはエネルって言うんでしょ?名前で呼んだら怒る?」
「‥初めてされる質問だな。好きに呼べ」

割とユーモアのある人で良かった。私の能力についても少し聞かれたけれど、それについてははぐらかした。向こうもはぐらかした事には気付いていたけれど、すぐに答えが分かっても面白くないとさほど気にもしていないようで次の話へと移っていく。

「時に、遊びに参加する気は無いか?」
「遊び?」

明日、この島全域でルール無用のサバイバルをすると彼は言う。想像よりもずっと大きな遊びに、私は首を横に振った。

「怖いのか?」
「ううん、一人勝ちになっちゃうから」

笑顔と一緒にそう伝えれば。飽きない奴だと笑いながら、しかし参加しないわけにはいかないだろうと意味あり気な言葉を口にする。

「どうして?」

希望通りに言葉を返せば、手に持った金の棒を床にトンと突いて、それでいいと一度頷いた。

「勘違いするなよ、ナマエ。明日は我々二人の遊びではない。神官と神兵、青海人とシャンディアも動く。この島に決着をつけるための遊びだ」

私の笑顔が少し引いたのを、それはそれは嬉しそうな顔で見つめている。

「皆の大事なものを、奪う?」
「怖いならヘソと一緒にしまっておくことだな」
「ふうん、エネルも面白いこと言うね」
「ヤハハ、では決まりだな」
「ルール無用、忘れないでね」

怪しく笑うエネルに手を振って、私は神の社を後にする。
‥あれは、ちょっとまずい。多分、ワイパーだけでは‥何とか、何とかしないと。駆け足になる心臓につられるように、村に戻る足取りが早くなった。