07
さて、と。
「聞いてんのか、ナマエ!!!」
目的の離島について間もなく、劈くような怒鳴り声がそれこそ雷のように脳天に堕ちた。
ワイパーとラキの言い争い、カマキリの仲裁を遠くの方から他の人に紛れて見守っていると、当然すぐに見つかった。近くに座っていたシャンディアの一人が頭を抱え、こりゃやったなともう一人が力なく私の背中を叩く。生贄のようにワイパーの前に差し出された私は、大人しく正座をして四方から飛んでくる説教の嵐を受けることになったのだ。いかに身勝手で、向こう見ずで、周りに心配をかけたかということを、ブラハムやゲンボウ、カマキリにまでお説教を食らう羽目になってしまった。いつまで続くのだろうと痺れる足に気を取られたところに、いつにも増して気が立っているワイパーの怒号がこの地に落ちた、と言うわけだ。
「遊びじゃねえんだ」
続けて怒声を落とすワイパー。流石にと制止をかけるカマキリが、包帯を巻く腕をワイパーの前にすっと伸ばした。
「これ以上疲労を残すな、ワイパー」
エネルを倒せば、そんなバッグ一杯の"ヴァース"に憧れる事などなくなる
帰るんだ、シャンディアの‥四百年前の故郷に
その腕が、そこにいる皆にその声を思い出させているようだった。そして、ワイパーもまたそれ以上言葉を紡ぐ事は無く、大きな歩幅でその場を去る。背中を追いかけたいのに、肝心な時に私の足め。痺れてもたつく私を見て、カマキリがふっと笑った。
「緊張感が台無しだ」
「これは、ちょっとしたフテギワで」
そのままで聞けよ、と言われ伸ばした足をマッサージしながらカマキリの顔を覗く。ゲンボウも付き添うようにカマキリの元にやってきて腰を下ろした。
「カマキリ、その腕誰にやられたの?」
「聞けって」
聞けと言われたのに先に口を開いてゲンボウに突っ込まれる。だけど、怪我が心配だ。
「痛いの痛いの飛んでいけー」
この間ウソップに教わった呪文を唱えると、皆もぽかんとそれを見ていた。ウソップが言うには、遠くに痛みを受け止めてくれる岩があって、そこまで飛んでいくらしい。そしてその岩は、痛みが飛んでくる度に硬くなっていくんだそうだ。そう説明すれば、私の力が痛みを和らげるのはそういう仕組みだったのかと何やら妙に納得された。
「なあナマエ、ガンフォールが大事なのも分かるけどよ」
「皆が止めてくれたのに、聞かなくてごめんね。」
「お前が一人で島に入ったこと、あいつが一番心配していた」
一呼吸置いたところで、先ほど中断された話が始まった。ワイパーは仲間を失うことを誰よりも現実的にているからこそ、その犠牲者を減らそうとしている。強い言葉も、ラキへのさっきの態度もそうだ。きっと誰よりも仲間を失いたくないと願っている。本人にも言ったけれど、本当に変わらない。武器を持てども体の模様が増えようとも守れるものが増えようとも、その信念は真っ直ぐなままだ。
「結局、あの頃のまま対等に接してくるのがお前なんだよ。ナマエ」
ブラハムはそう言った。他のみんなも同意だという様にそれぞれ首を縦に振る。
「ちゃんと追いかけないと、アイツはすぐ見えなくなっちまうぞ」
カマキリの言葉は、色んな意味を含んでいそうだ。皆はその姿を見失ったことがあるの?彼は先に走り出してしまったの?心の中で問いかけてみたけれど、私にはそんなことないとしか出てこない。ちゃんと隣にいたはずだ。ワイパーはみんなのことを信頼しているし、遠慮なく言える関係はそう出来るものじゃないのだから。
「ワイパーは、いつも隣を歩いてくれるよ。手を繋いでも振り解いたりしないよ」
今はただ目の前の意味だけを汲み取って、そう返す。
「んじゃ、ワイパーんとこ行ってくるね」
お尻についた砂を払って、ワイパーが歩いて行った方に足を向けた。