09

早起きだなあ。みんなの姿が見えてきて手を振ると、私がここにいることを昨日チョッパーから聞いたのか、皆明るく出迎えてくれた。

「ところでよ‥」
「ふふ、本当に船医さんの言う通りだったわね」
「能力者じゃなかったのか‥?」
「きっとあれよ、海に愛されてるっていうあれの中の一つ」
「なんだナミ、あんまり驚いてねえのか」
「驚かねえ方がおかしいだろ」
「うっさいわね!ナマエに驚く姿見せたくなかったのよ、悪い?!」

チョッパーの居た祭壇までの道のりを雲の川を泳いで行った私が水辺から上がった途端、ひつじちゃんの上に居たルフィの仲間たちは次々と心のままに言葉にしている。皆、少しは知ってくれているからか、それぞれ反応が違っていて面白い。ナミに気にしないでと声をかければ、横からルフィが手を伸ばしてきて、ビヨンと彼の元に辿り着いた。

「ナマエが泳げること、言うの忘れてた」
「ひひ、昨日チョッパー驚かせちゃったよ」

隣に座るルフィは私を見つめ、皆には全部話したわけじゃねえからなと笑った。きっと彼なりの配慮だろう。そう言うルフィも知らないことがあったそうで、ロビンからボロボロの手配書を借りてきて私に見せてくれた。

「凄い古いの持ってるんだね。私の初めての手配書だ」

容姿は一緒だし、中身もそんなに変わっているとは思えないけれど、やっぱり私もあの頃が一番自由にしていたように思う。そんなこともあったねえと自然と零れた言葉に、ルフィはばあさんみたいだなと笑った。代わりに私もこの間貰ったルフィの手配書を本人に見せると、何で持ってんだとその写真と同じようにとびきりの笑顔でこたえてくれる。

「ルフィも一億の男だね」
「シシシ、すげえだろ」
「うん、すごい!」

笑った拍子に体制が崩れて、柵の上から下の甲板へと体が落ちていく。甲板に激突する前に伸びる腕でキャッチしてくれ、最初のようにビヨンと元の位置へ連れ戻してくれた。

「ふう、ビックリした」

柵の上、ルフィの隣に座らせてくれて、昨日は前夜祭をしたんだとその様子を楽しそうに話してくれた。キャンプファイヤーまでやるんだから、相当盛り上がったんだろう。私も参加したかったなと言えば、黄金が手に入ったらその時一緒にしようと言ってくれる。その、黄金と言う言葉を聞いて、此処に来た理由をハッと思い出した。

「今日は黄金を探しに行くの?」
「一緒に行くか?」

首を横に振る私に、そっかと歯を見せて笑うルフィ。今日は一人で動かないでほしいことを伝えれば、疑いもなく私の言葉に頷いて、船全体にその声を響かせる。

「皆今日ははぐれるなよー!特にゾロ!」
「何でだよ!」
「ゾロは当然よ。でも、心配なのはあんたも同じでしょ、ルフィ」

声を返したナミ。たしかになとルフィの顔を見れば、本人はあっはっはと笑っている。

「じゃあ、ナマエも一緒に行くの?」
「ううん、私は行くところがあるから」

ナミの言葉に首を振って答えれば、あんたは一人で行くんじゃないとご尤もな言葉を返された。強いから、と笑えば皆納得した様子で出航準備に戻っていく。

「皆に話してくれて、ありがと」
「まだ皆聞きたいことありそうだった。宴の時にでも、ちゃんと自分で話せよ」
「うん、そうする。」
「おれの仲間だ。心配いらねえよ」

シシシと笑うルフィのその言葉は、私の背中をそっと押してくれる。優しく手を添えてくれる。エネルの言う通りなら、多かれ少なかれ能力を使わなくちゃならない場面が出てくるはずだ。チョッパーにも昨日、また話すと約束した。私はルフィの言葉に素直に頷いて、重ねるように約束をした。

「ナマエ、空の騎士が呼んでるよ」

チョッパーが下から声をかけてくれ、ルフィにも背中を押されてひょいと柵を降りる。ゆっくりと体を起こしたガンフォールにおはようと近づくと、隣にいたチョッパーが容体を教えてくれた。あらかた説明が終わると、出航準備を手伝うからと二人にしてくれた。

「怪我はもう大丈夫?」
「ああ、治療してもらったおかげでな」
「そっか、よかった」

流石チョッパーだ。ガンフォールの怪我を包帯に沿うように撫でると、代わりにと言わんばかりに私の頭を撫でながら、心配事が一つあると小さな声で言った。それは、シャンディアの事。神官が一人減って、確実に戦いになると踏んでいる。ルフィたちも二手に分かれて行動するようだからここに滞在しないのは良いことだけれど、戦いに巻き込まれることは避けられなさそうだ。

「ワイパー達のことまで‥ありがとう」
「彼らもまた、空に生きる者だ」

神様だった頃のガンフォールは、共生を図るためシャンディアの村へ訪れていた。その時もワイパーは蹴散らしたんだと思うけれど、それでもシャンディアの事を気にかけている。

「私もやれることをするよ。だから、あんまり心配しないで」

私が今日の戦いに入ることに驚いたと言葉を漏らしたけれど、事情を説明すると今度は言葉もなく驚いている。

「あの後相手の陣地へ飛び込んでいたとは‥勇敢、とは言い難いぞ」

今にもお説教が始まりそうな物言いに、もう昨日さんざん怒られたと言えばそうだろうなと早速お小言が始まった。これはまた昨日の二の舞になりそうだ。ヒートアップして止まらなくなる前に、もう元気だね心配ないねと逃げるようにその場を後にした。

「それじゃあルフィ、お宝探し頑張ってね」
「ナマエも気を付けて行けよ」

船を祭壇から降ろす準備ができたという彼らの邪魔をしないようその場を離れることにした。その前に、サンジが持って行けと小さなお弁当をくれる。

「いいの?」
「ああ、お前の好物ばかり入れといた。うめえぞ」

自信満々の顔で渡してくれたそのお弁当が絶対に美味しいことは間違いない。お腹も素直に音を出すから、サンジも笑みを零して好きな時に食えばいいさと言った。それからチョッパーは、傷に効く塗り薬を全身に塗っても余るくらい持たせてくれた。大事にカバンにしまって、彼らにもう一度手を振った。さあ、ここからはしっかり集中しないと。次第に距離を縮めていく声の群れに、ぽつりぽつりと点在するいくつかの声。そろそろ始まるな。あまり気乗りしないけれど、そうも言っていられない。それぞれの戦いが、快晴の空の元に始まった。