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サンジにもらったお弁当は、蓋を開けただけでもう楽しい。おにぎりがいくつも入っていて、おかずも色とりどり。

「いただきます」

齧る前からもう美味しいおにぎりを味わいながら、早速始まっているらしい今回のエネルのゲームについて少し考えることにした。今回は、いつもと違って少しルールが難しい。色んな所で約束をしてきた手前、それを全て守らなくてはいけない。ゲームが終わるまでにエネルの元に辿り着くこと。ワイパーたちがエネルを倒す邪魔をしない事。友達やその仲間の声を消さない事。一対一の方がよほど解り易いなと、砂を蹴る。何のつもりか、私の元へ一直線に進路を進める団体がいるようだ。お弁当の続きは後の方が良いみたい。蓋をしてカバンにしまい、その軍勢を待つことにした。

「お前がナマエだな、青海人」

ざっと五十人はいるだろうか。エネルから送られたらしい彼らは、どうやら私だけのために送ってくれた特別編成部隊らしい。エネルも楽しみがなくてはつまらないということなんだろうか。問答無用に一斉攻撃をしてくる彼らに、話は通じない。ただ倒せと言われただけなのだとしたら、彼らはその意図をわかっていないのだ。それにしてもこんなに送り込んでくるなんて聞いてない。

「四方攻めにしてくれる!!」

取り囲うように方々から飛びかかる神兵の下を潜り抜け、雲の川近くまで距離をとる。

「背水の陣だな」
「どういう意味?」
「己で体感するのが、一番の勉強法だ。」

小馬鹿にしたように口角を上げて、一斉に地面を蹴ってこちらへ飛び掛る彼らの真上にひょいと飛び上がり、そのまま拳を握りしめた。

「じゃあ教えてよ。ミヲモッテ、さ」

川をめがけて両拳を振り下ろすと、轟音と共に巨大な龍のように立ち上った水が彼らを襲い掛かる。途切れた川が飲み込んだ彼らをその地に叩きつけながら、元の形へと戻っていく。まるで何事もなかったかのように、またいつもと同じように柔らかく優しい水流を作り出している。

「ナマエか?」

名前を呼ばれ、恐る恐る後ろを振り返る。後ろの正面だあれ、だ。そこに居たのはブラハムで、ホッと心を撫で下ろす。無傷の私と、私を囲うように地面に寝転がる沢山の神兵。この状況をなんと言い訳しようか。先ほど振り上げた拳をピースサインに変えるのが私の精一杯。じゃんけんだったら、きっと負けている。そしてタイミングが悪いことに何人かの神兵が身体を起こしていて、シャンディアの彼ではなく私を仕留めようとイノシシのように突進してきた。

「ナマエ!」

私を庇う様に目の前に立ちはだかったその大きな大きな背中をひょいと飛び越え、彼ら同士で向き合ってダイヤルを撃ち合えるように位置取りをし、向かい来る彼らのお腹には拳を埋めて行く。あとの二人はブラハムがその閃光銃で仕留めてくれた。たった六人、どうってことはない。

「準備運動になったかな」
「お前なあ‥」

ブラハムは黙って一歩、また一歩と私に近づいてくる。これは昨日のお説教の続きかと、肩を竦めてそれに備えると、頭に彼の右拳がコツンと当たった。実際は、もう少し痛い。

「心配させるのが上手いな、本当に。」
「ひひ、ごめん」
「下の海とは違うんだ、無茶するなよ」

すごいと歓喜するでも怖いと退くでもなく、こんな風に安堵の表情を見せてくれる空の人はやっぱり優しい。

「無茶するなと言っておいて何だが、お前に早速知らせが一つある」
「ん、何?」
「ワイパーの奴が、排撃を使った」

その言葉に、呼吸を忘れ心臓が大きく飛び跳ねた。