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ワイパーを青海人に預けて間もなく、アイサが走ってやってきた。ワイパーに何かあったのかとその肩を掴んで尋ねれば、ワイパーではなくナマエだと言った。ワイパーと共にいると思っていたのにその姿は無くて、あの軽さで森に飛ばされたのか探索をしていたが一向に見つからなかった。
「ナマエが見つかったのか!」
「うん、青海の奴らが見つけてくれて‥!」
治療を受けワイパーの隣に寝せてもらっているらしいと聞き、おれ達は皆その言葉に胸を撫で下ろした。アイサが親しくなった青海人は、大事な友を二人も救ってくれていた。ただ、気になることは一つ。
「アイサ、ナマエは怪我してるのか」
「え‥、うん‥チョッパーは自分で付けた傷だって言ってたけど‥どうして?」
あいつが怪我をするところなんか、ほとんど見たことがない。エネルに会いに行った時も、サバイバルでおれの元に辿り着いたときだって、彼女の身体はラキよりも汚れていなかった。以前空に来た時に体温が上がったことがあったけれど、その時でさえ掌の傷はあれど血まみれになる事は無かったし、すぐにかさぶたになっていたように思う。今回は相当の痛手を負っているようだ。
「結局、アイツはいつもおれ達の大事なもんを丸ごと守ってくれるんだ」
「その全部を、あの小さな体に取り込んでな」
「これでもあいつは無茶してねえって笑うんだろうな」
「ああ、懲りずにワイパーに叱られるぞ」
けれど、そのことで暗くなることはあいつ自身が許しちゃくれない。はは、と笑いを空に飛ばせば、一人、また一人とつられて笑い声が辺りにこだまする。
「アイサはまた青海人の元へ戻るんでしょ?」
状況が呑み込めていないアイサにナマエのことも見てやってくれなと頼むと、大きく頷きまた遺跡へと戻っていた。
「‥きっと、全部取り除くには青海に戻らなきゃ難しいだろうな」
「今は、おれ達に出来ることをしよう」
「そうだね」
「早く目を覚ませよ、ナマエ」
おれ達は再び、島の後始末へと向かった。
===場所は移り、都市にて。
森で食糧庫を見つけて大量に食料を持ち出したおれたちは、コニスとも合流して遺跡へと急いで向かった。到着すると皆腰を下ろして、チョッパーが処置を終えていた。コニスの父ちゃんがいなくなったと沈んでいたが、当の本人はひょっこりその場に混じっていて、笑いながらの再会だ。
「ルフィ、ちょっと来い」
ゾロに呼ばれ、チョッパーとロビンと一緒にバズーカの奴のところへ向かう。
「ナマエ‥!!」
バズーカの奴の隣で、両掌と腕に包帯を巻いたナマエがすやすやと眠っていた。ナマエの包帯姿なんて見たことがなくて、近づきたくてもある程度の所まで行くと力が抜けていく。手が届く距離で見るだけが、こんなにももどかしい事なんだと言うことも初めて知った。
「体温、高いのか?」
「熱があるわけじゃないよ。ただ、サンジが体温を下げてやれって‥」
「そうか‥」
「お前、体温が上昇するとどうなるのか知ってんのか」
「コックさんも詳しいことは知らないと」
「‥聞いたことしかねえけど‥なんでだ?」
「お前らとはぐれて少しして、ナマエと森で会った。」
その時ナマエは、ゲリラの奴が倒れているのを見て様子が一変したそうだ。おれとメリーの上で勝負をした時とは桁違いの強さに、ゾロは歯が立たなかったと言った。
「私も不思議に思ってることがあるわ。」
ロビンは、エネルの前に倒れた時に自分たちをナマエが助けてくれたと教えてくれた。その後、ハナハナの実の能力でゾロたちを豆蔓に上らせたときにあいつを見たと言う。
「苦しそうな表情だったのに、私と目が合った途端に笑みを零してわざとこの遺跡へ自分の身を落としたように見えたわ。それに、この遺跡も。いくら大地と言ってもあれだけ大きな雷が落ちたのよ。全壊したっておかしくないのに、あの大きな神殿だけは傷一つない。何かあったとしか思えないわ」
「隠れて探ることじゃねえ。アイツの目が覚めたら、おれは聞くぞ」
「宴の時に話すって言ってたし、良いんじゃねえか?」
元々そのつもりだっただろうことを言えばそれぞれ納得し、ナマエが起きて体調が戻ったらその時に話を聞こうということになった。