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「パスミーも一緒に連れてきてくれたの?」
「はい、勝手に繋いで来てしまってごめんなさい」
「ううん、早く会いたかったから良かった。ありがと」
目が覚めた翌日、ナミたちと一緒に船が置いてある島の端に案内してもらうことになった私は、ワイパーに抱き上げられていた。元気になったというのに、シャンディアの子たちが私に気を遣ってくれたのだ。ゾロも荷物持ちとしてついていくそうで、コニスと五人で停泊場所へと向かった。島の端に泊まるひつじちゃんの後ろに、変な形の船と並んでパスミーがゆらゆらと揺れている。
「パスミーだ!」
「あ、おい‥!」
ワイパーの腕からするりと抜けて、一目散にパスミーの首に抱き着いた。無事でよかった、無事でよかった。パスミーもひつじちゃんも、この初めて見る変な鳥も!
「またちょっと暴走しちゃったよ。ビックリさせちゃって、ごめんね」
船縁をトタタと渡り、海へと身を落とす。変わらずパスミーの傷がないことを確認してその船底にギュッとしがみつき、ひんやりとしたパスミーに身を寄せた。ずっと一緒に航海をしているからか、パスミーは海の匂いがする。この不思議な肌触りの海雲にもお礼を言って陸へ上がろうとすると、何故かゾロまで海の中に居て、何かを探しているようだった。後ろからトントンと肩を叩けば、私を見るなり口を大きく開けて息を逃がしてしまったゾロ。
「ゾロが空気全部吐いちゃった!」
慌てて陸へと上げると、コニスとナミがぽかんと口を開けている。
「ナマエの事、助けに行ったのよ」
「‥どうして?」
「アンタが泳げること、忘れてたんじゃない?」
ゾロは普段からルフィやチョッパーが溺れた時に助けに行く事が多いから、反射的に飛び込んだんじゃないかとナミが言う。じゃあ、ゾロは私が能力者の金槌だと思って探してくれていたんだ。私に驚いて空気吐いちゃったんだ。
「下手っぴって言ってごめん」
「まだ言ってなかったわよ」
「今聞きました」
咽返って体を起こしたゾロにも早速ふざけんなと叱られ、ワイパーにも走るなと叱られ、双方にごめんごめんと謝ると、ワイパーはもう戻るぞと再度私を抱えあげた。大人しくされるがままにしていると、後ろにいたゾロが彼の背中に声を投げる。
「お前らはそいつの能力のこと知ってんのか」
少し喧嘩腰で声をかけるゾロ。それに対してワイパーは答える義理はないと突き放すように言葉を返した。仲裁に入ってくれるナミにも飛び火して、最終的にその銃口は私に一斉に向けられる。ルフィも自分で話せよと言ってくれたから話すつもりではいたけれど。
「ガンフォールと酋長も呼んでくる!」
「「お前が話せ」」
「みんなが困るから呼んでくる!」
対立していたとは思えないくらい息ぴったりの彼ら。後で合流しようと慌ててワイパーの腕をすり抜け、おじいちゃん部隊を招集しに行った。ガンフォールと酋長を呼びに走っている所をカマキリに捕まり、事情をざっくり説明するとカマキリも一緒に来てくれると私を抱き上げる。三人と一緒に合流場所まで行くと、苛立ちの募るワイパーと目が合った。見兼ねたカマキリが私をワイパーに渡して、見守ってやろうと声をかけた。ゾロたちはルフィたちを連れてきたようで、ルフィたち七人と、ワイパー、カマキリ、酋長とガンフォール。全部で十一人。なんだか不思議な空気が流れている。コニスは船の様子を見ていてくれるとあの場所に残ったと言っていた。
「ゾロに連れてこられたけどよ、ナマエの話って何だよ」
「能力者のお前が、どうして泳げる」
「ナマエがアラバスタで教えてくれた海に愛されているっていう言葉を信じてる。ただ、理由が気になるゾロの気持ちもよく分かるのよ。」
自身も能力者であるチョッパーも、理由を教えてくれよと身体を前のめりに突き出した。興味が沸くのは当然で、そうさせているのも私自身だと自覚している。
「それを知ってどうする」
「何だと?」
「ワイパー、平気だよ。ルフィは知ってるし、皆にも話さなくちゃと思ってたから。ありがと」
そして、ワイパーが私を想ってくれていることも分かっている。下の海での出来事を子どもの頃から御伽話代わりに聞いてくれ、時が経つにつれて能力との付き合いの難しさも一緒に感じてくれてきたのだから。座って、と手を引いて強引に地面にお尻をつけてその膝の上に座れば、みんなもつられるようにその場に腰を下ろしてこちらに視線を集めていった。
「皆がどこまで聞いてるか分からないけど、私は身体の中に海のエネルギーを持ってるんだ」
「「それは聞いてねえ」」
ルフィの仲間は声を揃え動きを揃えて首を振る。その様子が面白くて笑っている私に、カマキリは少し呆れたように息を吐いた。
「それも知らず、青海人は何を知ってるんだ」
「そう言うな。下の海では制限が多いと言う、詳しいことも話せないのだろう」
「ああ、セイフとカイグンか」
「ひひ、それそれ」
酋長が見兼ねて言葉を足してくれ、私はその言葉に頷くだけで済んでしまう。ありがとうと酋長に声をかけて、私は再度言葉を続けることにした。長くなるから覚悟してねと一旦前置きを置いてから、空の空気を身体いっぱいに吸い込んで。