04
‥いよ、ナマエ!
こいつがさっき話したおれの友達だ
お前さん、一人で海を渡るのか?
そうだって言ったら、船を作ってくれない?
たっ‥はっはっ‥!!!一人乗り用の大きさなら、あいつに作る船と同じ樹を使える。ドンと任せとけ
私の頭をばすんばすんと二回叩いて、それから私の目線に合わすようにしゃがんでくれた。勿論しゃがんでくれるだけでは到底私の目線にはならないのだけれど、それでもしゃがんでくれたことが嬉しかった。張りのあるお腹をポンポンと触る私を、豪快な笑い声で受け入れてくれて。お前さんを気に入った、とまた頭をばすんばすんと二回撫でてくれた。
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波の揺れがない睡眠は、あまり落ち着かない。けれどここは、街のあちこちから潮の香りがして好きだ。座り心地の良い椅子に、懐かしい匂い。目を覚ますと、アイスバーグが外を見つめていた。
「ンマー、起きたか」
「はっ、寝てたね!」
‥そっか、夢か。
「良い夢でも見てたのか?寝ながら笑ってたぞ」
「ひひ、トムさんにね。会ってきた」
「ほう、そりゃあ良い夢だったな」
そうでしょ、となんとも言えないあの笑い方を真似しようとしたけれど、途中でむせ込んだ私に、まあ飲めよと、自分のカップに紅茶を注ぎ足し渡してくれる。
「アイスバーグは、トムさんに会いたくなったりしないの?」
「ンマー、おれはトムさんの遺してくれた街の誇りを、毎日目にしてるからな」
本当なら、ここに来る度に笑って聴けているはずだった、大好きなトムさんが作ったあの列車の音が。トムさんを連れて行った、あの列車の音が。
「‥私はあの汽笛の音、一人じゃ聴けないや」
「おい、しんみりするのはよしてくれ」
ぽすんぽすんと、二回頭を撫でてくれるのは、トムさんのそれと似ている。
「トムさんはお前の笑顔が好きだった。そうだろ?」
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どこかの国の言葉で、笑顔という意味があるそうだ。お前さんの笑顔がこの先の航海でもずっと続くように、その名を付けた。お前がどれだけ長く生きようと、これからはこのパスミーシュカがお前さんの旅に連れ立ってくれる。調子が悪くなったらいつでも直してやるからな。ドンと、約束だ。
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パスミーを海に投げ入れ、水飛沫が煌めく中、トムさんは声高らかに私の名を呼んでくれた。夢で見たより鮮明に覚えているあの光景も、もう何十年も前のこと。
「船を直す間は、ここに居れば良い。」
「うん!」
すぐにまた笑顔で旅に出られるようにしてやると、アイスバーグも真っ白な歯を見せて笑う。私もつられてひひひと笑って、座り心地の良い椅子の肘掛けをするするするりと撫でた。
「あ、おれはお前と一緒には寝ないぞ」
「わ、癪!」