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ウソップの話を聞いた時、やっぱり一緒に来てとニューゲートに我儘を言えばよかったと思った。他の事なら少しは我慢できる。だけど船の話は、すごく苦手だ。今ここで叫びたくなるくらい、我慢した。我慢したけど、どうやっても出てきた。下敷きにしたフランキーが、これからもっと辛い話になるかもしれないと教えてくれたから、わっしょいわっしょいの後、海列車の話を合図に私は水中へと潜った。水の中なら泣いても分からない。周りに声も聞こえない。何よりここは街中に海がいてくれる。此処なら、我慢しなくても良い。
そう思っていた時、勢いよく水中に入ってきたウソップが、船底を見て涙を流した。

グラララ、お前の涙はおれのもんだ
気安く他の奴にくれてやる気はねえ
代わりに、誰かが泣いてる時は
お前が笑ってやればいい

ニューゲートのくれた言葉が水中に浸透し、反響する。
‥そうだ、今までもそうしてきた。ニューゲートがしてくれるみたいに、私も笑ってあげるんだ。思い切り泣けるように。
そうして、海水と涙と諸々を引き連れてウソップの足元に近寄った。涙は止まらなかったけど、精いっぱい笑った。ウソップも、いっぱい泣いていた。二人分の涙と引っ張ってきた海水とで大きな水溜りが出来ていて、濡れない場所に行こうと手を引いてみたけれど、ウソップはその場所を動かなかった。

「おめえも知ってたんだろ、泣き虫」

まず私が移動しろと、フランキーに抱え上げられ水溜りの外からフランキーの膝の上に座らされる。フランキーの言った通り、私が移動すればウソップも場所を移動して床に腰を下ろした。

「泣いてない」
「はいはい、泣いてねえ泣いてねえ」
「泣いてない」
「分かったよ」
「泣いてない」
「分かったって言ってんだろ!!」
「‥ナマエ、お前、知ってたのか?」

投げられた言葉に、クラバウターマンの話は初めて聞いたと首を横に振る。フランキーは、この船が走れないことを知っていただろうと、はっきりと言葉にして聞いてきた。

「‥前の島で、パスミーの傷を探した時に」

トムさんが教えてくれたから、その破損箇所が大事な部分だと言うことは知っていた。だからアイスバーグのところに来た時点で、お別れになってしまうんだろうと言うことも、分かっていた。

「ウソップが大事にしてたこと、知ってるよ。さっきも、前の島でも、ひつじちゃんを直す時にいつも声かけてあげてた」

それに、ウソップは言ってくれた。私がひつじちゃんの傷増えてないか見てあげてと頼んだ時、優しい気持ちはちゃんとメリーに届いているよと。だから、ウソップの気持ちだって絶対に届いてたよ。

「ずっと一緒に旅して、怪我するたびに大丈夫だよ直してあげるよって言われて、嬉しくないはずないもん。そんな優しい仲間のこと、ひつじちゃんが見捨てるわけないもん。」

出会って間もない船だ。私が知っていることなど、小指の先くらいしかないと思う。それでも知っていることはある。ロビンのように的確な言葉を使って説明は出来ないけど、拙い言葉でしか伝えられないけど、届けばいいなと思う。

「ここまで運んでくれた、大事な船だよね」

引き千切られた船の継ぎ目に手を伸ばして、効果があるのかないのか、とにかく痛みが消えたら良いなと船を撫でる。そんな私の手を掴んだのはウソップで、涙を堪えながら棘が刺さるぞと、一つずつ刺さった棘をとってくれた。

「言わんこっちゃねえよばかやろう、‥っとに、ばかやろう‥‥!」

さっきまで泣いてた奴が、と声を漏らしたフランキーも、少し穏やかな表情でウソップへ視線を向ける。

「アニキ、誰か来たみたいだわいな」

そこへ、呼び鈴の可愛らしい音が鳴った。ルフィを呼び寄せていたんだったと思い出したように立ち上がったフランキーは、もう忘れかけの怒りを燃やそうと声を大きく張り上げた。

「ルフィじゃないよ。ルフィの能力なら分かるもん」
「なんだあ?麦わらはつれてねえのか」
「来ねえよ、あいつらはもう」
「ねえ、フランキーの部下って能力者も」
「ナマエ、おれの言葉を遮ったぞ。ちょっと待て」
「ねえ、能力者いるの?!」
「いや聞けよ!」

部下たちも入ってくれば良いのに、チリンチリンと何度もなる呼び鈴に痺れを切らしたモズたちが見に行く間、この船の行く末についてだからそうじゃねえじゃあお前はどうなんだとまた押し問答が始まっていく。

あれ、この悪魔の実の気配‥それに、この揺れ方。

「待って、開けちゃ‥!!」

叫んだ時には遅かった。言い切る前にモズが飛んできて、キウイも首元に蹴りを一発決められその場に倒れ込む。

「キウイ!!」
「取り込み中失礼」

二人を簡単に去なし入ってきたのは、黒い衣装に身を包んだ、知った顔の四人。

「ガキは邪魔だ、あっちで大人しくしてな」

フランキーに放り投げられてひつじちゃんの上に着地した私に、彼らの視線が移された。