熱が下がり、体調が良くなってきたと感じるようになった。
万葉は薬の調合を手伝うようになっていた。
あまりに動こうとする万葉に折れたコハルが簡単な作業を頼んだという話ではあるが。
調合と言っても既に用意された材料を乳鉢の中でひたすらゴリゴリとすり潰す、なかなかに根気のいる作業である。
 単純な作業ではあるが、見た目や匂い、乳棒越しに手に伝わる触感がどんどん変化していくのがちょっと面白い。
ついでとばかりにコハルが簡単な傷薬の材料の組み合わせを教えてくれた。
この先旅をする上で、自分で作れるなら役立つだろう。

 万葉は手先が器用で要領も良く、病人に薬作りを手伝わせているという点を除けばコハルとしてもとても助かる。
すぐにコツを掴み、材料を潰しすぎない、見本とちょうどいい塩梅で止めてくれる。
 もはや薬店に永久就職してほしい。冗談だけど。

「時にコハル殿」
「はい、なんでしょう?」
「そちらの刀はコハル殿のものでござるか?」
 万葉が興味を示したのは、コハルの部屋の刀掛けにある一振りの刀だった。
「はい、お師匠から、この薬店を受け継ぐ時に貰った刀です」
見ますか?と刀を手に取り万葉の手に鞘ごと握らせる。
「良いのでござるか?」
「構いませんよ。別にその刀で斬りかかったりしないでしょう?」
(……随分と信用されてるようだ……)
すらり、と鞘から刀を引き抜く。
白梅の花を模った飾りが美しい、だが鋭い刀だった。
「……よく手入れをしているのでござるな」
刀身をじっと見つめて、静かに鞘に戻す。
「大切な刀ですから」
礼を言って刀をコハルに返す。
 万葉も家を出る時から一振りの刀を肌見離さず持っている。故郷と繋がるものは、もうそれしかない。
「拙者の刀は……無理をさせた……手入れをせねばならぬな……」
「そうですね……あとで道具を持ってきますね」
「何から何まで……」
「万葉さんが元気になれるなら、これくらいお安いご用ですよ」




*20231215