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「本当に来てくれたんだな」

夜久と偶然会ったあの日、黒尾からの連絡に対して散々考えた結果送ったのは、"行く"という素っ気ないたった二文字の返事。最近連絡もまともに出来てなかったけれど、この一通をきっかけに、少しずつ二人の間に流れるギクシャクとした空気(というか私が勝手にギクシャクさせてるだけなんだけど)が溶かされていった気がする。完全に今まで通りにはまだ戻っていないけど、携帯でのやり取りも、実際の会話も、少しずつ出来る様になっていた。

そしていよいよやってきた練習試合当日。私が体育館に向かおうとしていると、ユニフォームを着た黒尾と体育館入り口付近の廊下でばったり鉢合わせた。少し驚いたような、でも安心したような顔で私に笑いかける黒尾。

『観に来て欲しいって言われたから』
「・・・おう」
『夜久に』
「夜久かよ」

俺が一番に誘ったのに・・・と唇を尖らせて拗ねた様子の黒尾に、ふふっと小さく笑いが込み上げる。こんなやり取りももう三年目のはずなのに、懐かしさを感じてしまう。今まで通り話せていることに、嬉しさを感じる私。

『嘘だよ。いや、半分はほんとだけど』
「なんだそれ」
『ちゃんと、自分が来たいと思って来たよ。みんなが・・・黒尾がバレーしてるとこ、観たいと思って来た』

もちろん、来て欲しいと言われたのもある。黒尾にも、夜久にも。でも、それだけじゃない。私自身の意思で、私がバレーを、黒尾のバレーを観に行きたいと思ったから、今日、今、ここにいる。

『頑張ってね』
「・・・おう。絶対苗字が惚れちゃうようなかっこいいところ見せるから、俺だけ見てろよ」
『はいはい』

あぁ、いつもの黒尾だ。一年の時に初めて言われた時から、何適当なこと言ってんだか・・・なんて呆れたりもしてたっけな。今でも彼のそういうお調子者な所に呆れもするけど、もう私は彼のそういうところも素直に受け止めることにした。実際、彼には惚れているわけだし。

「あと、今日、一緒に帰りたい。ちょっと待たせるかもしんないけど、いいか?」
『・・・うん。私も誘おうと思ってた』

この1週間、色々考えた。私自身の気持ち。黒尾のこと。三年目の付き合いにして、つい最近芽生えた恋心。今更って思われるかもしれない。でも、私は私の気持ちに正直になりたい。中途半端なまま黒尾の隣にいたくない。今日、それを伝えるために、覚悟を決めてきた。
黒尾が好き。私が知ってる黒尾が、他のみんなの知ってる黒尾と違っても、私が見てきた黒尾が私の一番知ってる黒尾だから。知らない事は、これから一つずつ知っていけばいい。多分、黒尾なら、そう言って笑ってくれる。それが私の好きになった黒尾だから。