空が晴れる
私は原作の流れを変えたくない。変えてはいけない、と思う。彼等に拒絶されたから、余計に。
本当はこの世界の人間じゃない私がこの世界の流れを変えてしまったらどうなるのだろう。怖いんだ。
彼等には、私の知っている彼等でいてほしい。だから、例えこのままいけば幸村くんが倒れてしまうということを知っていても、私は何もできない。
それを叶える代償に桑原くんは私に一切関わらないようになり、代わりに桑原くんの隣には丸井くんがいた。そして、私は一人になった。
二年生になって、テニス部のマネージャーも辞めたことだし、何か他の部活でも入ろうかと最近、考え始めた。今の時期に入っても他の人には追いつけないだろうけど、何もしないで毎日を暇で持て余すよりはずっといい。気晴らしにはなるはず。
まあ、そんな私が何部に入るの? って散々悩んだ挙句、美術部に入ることにした。同学年の美術部の人達は良い顔をしなかったけど、構わなかった。
活動は、いつでも、好きな時に美術室に行って、絵を描けば良い。同じ部活の人とだって、そこまで関わらなくてすむ。
それに、私は一人暮らしで、家に帰ったら帰ったで家のことをやらなきゃいけないし、激しい運動部に入ることは躊躇われた。こう考えるとよく私はテニス部のマネージャーなんてやってたよなあ、なんて思う。まあ、あの頃は毎日が楽しかったから、そんなことは気にならなかったのだ。
絵が得意なわけではなかったけど、絵を描いている間は、嫌なことは何も考えないですむ。真っ白なキャンパスに、色を足していく。感情を、のせる。
今まで絵が特別好きなわけではなかった。けど、すぐに夢中になった。
同時に、今までのことがバカらしく思えてくる。
此処がテニスの王子様の世界? だから、何。
キャラクター達に、クラスの人達に嫌われた? だから、なんだって言うのだ。
この世界に来る前、何度か考えたことがあったじゃないか。あの頃に戻れれば。もっと勉強したのに。もっときちんとしていたのに。もっと、もっと。
二度目の中学校生活なんだ。普通ならこんなこと、あり得ない。でも、私はもう一度中学校生活を送れる。だったら、楽しまなきゃ損じゃないか。
テニスの王子様だとか、そんなモノはもう関係ない。ここは、私の世界だ。友達がいないから。家族がいないから。頼れる人がいないから。そんなことを考えてくよくよするよりも、以前できなかったことにもう一度挑戦してみたって、いいんじゃないだろうか。もっと、もっと、前へ。
やってみなければ、わからないのだから。
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