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小野寺沙梨side

 最近、鳳くんが浮かない顔をしている。何かに、思い悩んでいるようだった。
 どうしたの、と聞けば鳳くんは「えっと、」と言い淀んだ。

「確か小野寺って、宮崎さんと仲が良いんだっけ」

 鳳くんの口から出た思いもよらなかった名前に、私は驚いた。うん、と頷く。
 宮崎舞。私の、大切な、大切な友達。

 私はこんな人気のあるテニス部のマネージャーなんてやっているから、基本的に女の子にあまり好かれていない。けど、舞ちゃんはこんな私をそんな目で見ない、数少ない一人。それでいて、大人っぽくて、頭が良くて、でも少し不思議な女の子。

「俺、宮崎さんに嫌われてるみたいなんだよね」

 困ったように言う鳳くんに、私はハッと息を飲んだ。
 そう、舞ちゃんは鳳くんのことを避けている。鳳くんだけじゃない。跡部先輩のことも、忍足先輩も、日吉くんも、あと、明確にはわかんないけど、何人か。テニス部の人達のことを、避けている。
 避けている、という表現は正しくないかもしれない。避けていて、かつ怯えていて、怖がっている。
 元々テニス部と舞ちゃんが接触することなんてあんまりない。だから、理由もわからない。

「理由がわからないから、もやもやしてる」

 俺、なんかしたかなぁ、と悲しそうに溜息をつきながら言う鳳くんに、胸が痛んだ。

 初めて会った時から舞ちゃんは何かに怯えていて、それがテニス部の人達の一部だと気づいた時は、愕然とした。
 テニス部の人達はみんなみんな、いい人ばかりだ。なのに、どうしてあそこまで拒絶するの?
 そう思ったけど、舞ちゃんのあそこまで怯える姿に、何も言うことはできなかった。

「舞ちゃんは、良い人だよ」

 鳳くんが、舞ちゃんを嫌いになって欲しくなくて、そう言った。鳳くんは、うん、と頷く。

「鳳くんも、良い人。だから、決して舞ちゃんは、鳳くん達のことが嫌いなわけじゃないと思う」

 だから、鳳くん、舞ちゃんのことを嫌いにならないで。
 断言できた。
 舞ちゃんは、何かに苦しんでいる。鳳くん達を拒絶する度、その苦しみは大きくなっていく。そんな舞ちゃんを、私はもう見ていられない。
 あんなに苦しんでいる舞ちゃんを助けたい。どうしてあそこまでみんなを拒絶しているのか聞きたい。でも、その壁を乗り越えてしまったら、舞ちゃんとはもう元の関係には戻れないような気がして、怖い。

 でも私は、そして多分優奈も、舞ちゃんに笑顔でいてほしい。だから、私達は。

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