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跡部景吾side

 それは、鳳の教室へ、部活の関係の連絡をする為行った時のことだった。
 鳳の教室に入れば女子の囁きでより一層騒がしくなる。そんな女子たちの声は気にしていたらキリがない。いつも通り気にせず俺は鳳に用件だけを簡潔に告げて、その場を去ろうとした。

 だけれども、ふと振り返るとドアの側にいるどこかで見覚えのある一人の女子と目が合った。
 恐らく、確信はないが準レギュラーの宮崎の妹、宮崎舞。宮崎から写真を見させられたことがあるし、たまに校内で見かけることもある。

 そういえば、と俺は記憶を探る。
 この前、宮崎に誘われて宮崎の家に行った時、宮崎の妹はずっと俺達に姿は見せず、自室にこもっていた。
 俺様達は顔は整っているほうだと自負しているし、強豪である男子テニス部の部長、さらには生徒会長までやっている。そんな俺様に挨拶さえもしない女に、前々から少し興味はあった。
 パッと見、普通の女。そこら辺で騒いでる奴等と変わりはない。けど、校内で見かける時も、俺達を見ていたことはない。いつも、俯いている。俯いて、足早に去って行く。
 会話など(特に宮崎の)にはよく出てきていたが、こうやって対面するのは初めてだった。
 俺様は、口許を上げる。

「宮崎の、妹か」

 俺がそう確認すれば、宮崎の妹は怯えたように体を震わした。どうしてか怯えたように瞳が揺れている。そんな宮崎の妹の様子に、俺は思わず顔をしかめた。
 何故、怯えている?

 確かなる拒絶。
 今まで興味を全く示されないということは、少ないが、幾度かあった。だが、何一つとして宮崎の妹には何もしていないのに、ここまではっきりとした拒絶をされるのは初めてだった。だから、戸惑う。
 「なんでお前はそんなに怯えてるんだ」そう目の前で震えるこいつに問おうとした。その時。

「跡部様、ご用件がお済みでしたらお引き取り願いませんでしょうか?」

 凛としたよく透き通る声。聞き覚えがある。見覚えもある。大塚優奈。ファンクラブの、会長。
 大塚を見ると宮崎の妹は幾分か表情を和らげた。その様子から2人が親しい関係にあることがうかがえる。そして大家は俺に、「今すぐ帰れ」と目で強く訴えていた。
 少し苛つく。なぜ俺様がこいつの言いなりにならなきゃいけないんだ、どうして何もしていないのにこんなに怖がられなくちゃいけないんだ、と。だが「跡部様」と俺様を強く促す大塚の声に何も言えず、渋々とその場を去ることにした。
 廊下を歩きながら、考える。

 何故だ。何故、あそこまで拒絶されなくちゃならない。俺様が、何をした。
 もやもやとした感情が胸を渦巻く。
 大塚は多分、あいつの何かを知っている。それでいて、俺と宮崎の妹を離させようと俺様をあの場から追い出したんだ。

「くそっ」

 すっきりしない感情に悪態をつく。
 誰かに拒絶されることなんて、初めてだった。

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