小鳥の囀りと、暖かな春の朝日で目が覚めた。めずらしく今日は晴れなようである。のそりとベッドから起き上がり、適当にブラッシングをする。2、3度髪をといたらタータンチェックの大判ストールをヒラリと羽織る。同居人からの贈り物である。春といえども、この国の気温はまだ肌寒い。
寝惚け眼のまま一階へと続く階段をゆっくり降りる。一歩一歩に体重をかけるため、ドスンドスンと音がする。以前同居人に「全身で眠い、を表したような歩き方だな?」とお小言をもらったので、この歩き方も直さなければいけない。そうは思うのだが、完全に覚醒していない朝特有のこの歩き方は、中々やめられない。半覚醒のままいつも通りに降りてでもみろ、私のことだ。転がり落ちて行くのが目に見える。
リビングへのドアはいつでも開けれている。そこから紅茶の香りが漂ってくる。いつもの朝。
「Good Morning,なまえ.」
「おはよー、アーサー。」
「アールグレイでいいか?ミルクは?」
「いるー」
窓を開け放している。風はなく、日差しがリビングを暖かく照らしている。この国は雨が多いけど、晴れた日はやっぱり良い。貴重な朝だと思う。
窓辺をぼんやり眺めていると、ふわりとアールグレイが香って、ティーカップが置かれる。私はアーサーの淹れる紅茶が好きだ。不思議なことに、自分で淹れるのとはまるで違うのだ。
「ありがとう。」
「スコーンもあるぞ、食うか?」
「うん。」
紅茶を飲みながら待っていると、アーサーがキッチンから戻ってきた。きっと私が起きたら直ぐに食べられるよう、用意してくれていたのだろう。
ちょっと焦げたスコーンとジャム、クロテッドクリームが用意される。ひとつ手に取りそれを横半分に割って、ジャムをひと匙ぶん付け、口へと運ぶ。向かいの席に座ったアーサーがじっと見つめるので、私はコクコクと頷きながら咀嚼を続ける。早く飲み込んで、感想を言いたいのだ。
「美味しい。」
「本当か!」
「毎日食べたいくらい。」
アーサーがキラキラと顔を輝かせる。余程嬉しいのだろう。アーサーの料理は壊滅的、破壊的に不味い。最初に食べたスコーンの感想は「死ぬのでは?」。見た目(もはや石炭)・臭い(えずくほど焦げ臭い)・味(飲み込もうとすれば勝手に涙が出る)だった。今後の生活にも影響すると考えた私はアーサーと一緒にスコーン作りをして、それとなーく普通の物になるよう誘導して行ったのだ。我ながら上手くいったと思う!こんなに美味しくなるなんて、感激だ!
「本田さんにあげたら喜ぶと思うよ。」
「じゃあ今度菊を家に呼んで、ティーパーティでもするか!」
「素敵、私もパイとか焼こうかなあ。」
スコーンふたつめを小皿にとる。
「本当に、美味しいよ。」
紅茶を飲みながらそう言えば、アーサーは照れたように目を細め微笑む。人種も、母国語の違えど、彼は……アーサーは私の、大切な家族。
今日は日曜日。素敵な1日になりそうだ。