過去と今

…ぽつぽつ


「…おや、雨ですね」


そういえば、こんな雨の日だった。


あの日も。























パチパチ…


ピーポーピーポーピーポー…


ぽつぽつと雨の降るなか、マンションでパチパチと炎が火花を散らし、パトカーや救急車が慌ただしく到着していた。


警官の仲間と中に入ろうとしている女性を止めると、女性が叫ぶ


「下がって!!」


「私の娘が!!まだ私の娘が中に居るんです!!助けにいかないと…!!」


そんなこと聞いたら、黙って居られるものも居られない


「なんだって…!?」


「ちっ…!」


「ちょっ!!入間さん!?無茶だ!!こんな火の中助けに入るなんて…!」


仲間が引き留める声も無視して、炎煙が包むマンションの中に飛び込んだ










『ごほっ、ごほっ…出口…どこぉ…』


案外娘らしき女の子はすぐに見つかった


…いた。


「警察です!早くこちらへ!」


「お巡りさん!?助けに来てくれたの…!?ごほっ…ごほっ…」


煙を吸ったのか、咳き込む彼女を抱き寄せ、彼女の口にハンカチを当て、抱き上げた


「…良いですか、今からこの炎の中を突き抜けます。熱いかもしれませんが、我慢なさい」


『ごほっ…はい…』


彼女の返事を聞くと、階段へ向かい駆け出した









「…あれから、何年が過ぎましたかねぇ…」 


『あれ、銃兎さん?』


「おや、みのりさん。大学は終わりましたか」


『はい!お待たせしました!』


あの日助けた彼女は、今では元気に俺の彼女をしている


なんでも、炎の中にも関わらず危険も省みず助けに入った所に惚れられたらしい


『…あ、雨が降ってきたんですね』


「ええ」


『困ったなぁ…傘持ってきてないのに…』


「…」


隣で困り顔をしている彼女を見て、どうしようもなくいとおしくなる


あのとき、俺が助けに入っていなければ、彼女は、ここにはいないのだから


『…?銃兎さん?』


「…いいえ。傘なら私が持っていますよ」


『本当ですか!?』


「ええ。…さぁ、帰りましょう」


『はい!』




この道を歩くことが、二人で未来へ歩くことのような気がして、いとおしくてしょうがなかった



過去と今

(これから俺たちは、長い未来を歩いていくのだから)