一時の休息

『…ぐす』


「…落ち着きましたか?」


しばらく泣いた私を、独歩は抱き締めて居てくれていた。


なんて優しい人なんだろう…


やっぱり独歩は、もっと世界に受け入れられるべきだと思う。


そんなことを思っていた。


『…ありがとうございます、落ち着きました』


「それはよかったです」


独歩が薄く微笑む


「とりあえず、そこのベンチに座りましょう」


そういって、独歩は近くにあったベンチを指差したので、私はそれに従った。


「ちょっと待っててくださいね」


私が涙を拭っていると、隣でガコンと音がなる


「…はい、どうぞ」


『…え…?』


「…えっと、カフェオレ、苦手でしたか…?」


独歩が差し出して来たのは、暖かいカフェオレだった。


『え、そんな、申し訳ないです』


「…あの、俺に奢られるのが嫌とかじゃなければ、貰って頂けると嬉しいです…でもそうだよな、三十路のおっさんにカフェオレもらうとかなにがはい『も、もらいますから!』…は、はい」


急にネガティブモードにはいりだした独歩を制しつつ、カフェオレを受けとる


「…どうぞ、飲んでください」


『は、はい…』


独歩に促されて飲む。

その時飲んだカフェオレは、とても暖かくて、優しい味がした。


また涙が滲む私に、独歩はなにも言わずにそばに居てくれる。


『…何があったか、詳しく聞いて来ないんですね』


気分を切り替えてそう問いかけると


「…誰だって、聞かれたくないことの一つや二つあるじゃないですか。…俺だってある。…だから、聞かない」


『…そっか』


独歩はそう諭してくれた。

段々落ち着くのがわかった。


『…ありがとうございます、観音坂さんは優しいてすね』


「そんなことないですよ。…もう少し、ここにいますか?」


『え、いいんですか?』


独歩用事は…?という問いかけは、独歩の優しい微笑みに飲まれて消えた。


「いいんですよ、まだ時間ありますから」 


私は視線を独歩から膝の上に移し、頷く


『…じゃあ、お願いします』


「はい」


しばらくの間、夕暮れの穏やかな風に吹かれて、独歩と佇んだ。







一時の休息

(このあとどうなるんだろう…)