また一歩、近づく

「…ほう、勘解由小路無花果から電話があった、と…」


『はい…』


「うーん…」


三人は私を囲んで話を聞くと、唸って考え込んでしまった


「まさか姉ちゃんの携帯番号を調べられてるとはな…」


『私のスマホはこっちの世界のじゃないのにね…』


「だな。こっちの世界に来たときに、こっちの世界に組み込まれたのか…?」


うんうんと考え込んでいる一郎くん


「…ね、ねぇ、兄ちゃん、これからどうするの…?」


「みのり姉、勘解由小路無花果と飴村乱数…それだけじゃない、他の人にも…」


「そうだなぁ…」


『…?』


何故か三人でぶつぶつと話し合いをしている


『どうしたの…?』


思わず話しかけると、三人は三人は神妙な面持ちで私を見る


「…姉ちゃん、自分がみんなに好かれてるって自覚は?」


『え?私?まっさかぁ』


「「「………はぁ」」」



〜三兄弟のひそひそ話〜


「…でも一兄、ほんとにどうするんです?みのり姉がこんな調子じゃ、自衛は壊滅的です、僕たちが守るしか…」


「んなのとーぜんだろ、俺ら以外に誰が姉ちゃん守るんだよ!」


「はは、確かにそれは二郎に一理あるな。…でも、姉ちゃんも一人になりたいときくらいあるだろうし、二郎と三郎は学校もあるし、俺は仕事だ。そんなときに姉ちゃんをどうするか、だな…」


「「「…うーん…」」」






三人がひそひそ話をしている間、私は居心地の悪さを感じていた


…なんだか、わたしが困らせているような気がしたから


『…』


「…あれ、姉ちゃん?」


『っ!な、なに?二郎くん』


いきなり二郎くんに声をかけられはね上がる


「…なぁ、姉ちゃん、どうしたの?」


『え…?』


「…なんか、悲しそうな顔してるからさ…」


『え、悲しそうな顔…?』


思わずほほに手を当てる


そんな自覚なかった…


『そんな顔してた…?』


「うん」


「僕もそう思います」


「俺もそうだな」


いつの間にか話終えた一郎くんと三郎くんも話に加わってくる


『あ、あはは…』


思わず苦笑する


「いったい何を考えてたの?いったい何が姉ちゃんを悲しませてたの?」


『二郎くん…』


「教えてよ」


二郎くんが真面目な顔をして訴えかけてくる


『それ、は…三人を、私が困らせてる気がして、居心地の悪さを感じたから…』


正直に答えると、三人は鳩が豆鉄砲食らったような顔をする


「…そっか、勘違いさせてたんだな」


一郎くんが眉をハの字にして笑って私の頭をくしゃくしゃと撫でる


「ごめんな。別に困ってる訳じゃねぇ。困ってたとしてもそれは好きで困ってんだ。お前は気にすんな。な?」


一郎くんが私の顔を覗きこむ


『…うん、ありがとう』


笑った




また一歩、近づく

(呼び方だけじゃなく、山田家の一員になれるといいな)