尾形さんと出張先のホテルで一夜を共にする



※♡喘ぎアホエロ注意



「お客様、本日はダブルの一部屋で承っているようですが、」
 北国の容赦ない吹雪の中を歩いてきた私は、フロントマンの言葉で更に凍りつくしかなかった。
 そんなわけがない。この出張が決まってからすぐに私は、シングルの二部屋を予約しているはずだ。悴んだ手で慌ててスマホを取り出して予約メールを遡る。ほら、ちゃんと二部屋一泊で取っていますと、フロントマンに提示した。制服がその若さにあまり馴染んでいない彼は、ホテル側の手違いを指摘されたことでおもむろに狼狽えてしまう。

 後ろで待つ上司の尾形さんにようやく私は振り向いた。ともに吹雪の中を歩いてきた尾形さんは苛立っているのだろう。表情は変わらないが、私とフロントマンのやりとりに口を挟もうともしない。とりあえずホテルの予約さえ満足に取れない無能な部下という評価は免れたけど、それで現状が変わるわけではなかった。

「取れていなかったのならもう一部屋お願いします」
「申し訳ございません。本日は既にどの部屋も埋まっておりまして」
「そんな、困るんですけど」
 熱の戻ってきた身体から再び血の気が引いていく。土曜日の札幌駅前のビジネスホテル。しかも外は吹雪。空いている方が奇跡なのだろう。フロントマンの青年が困りかねて、他の客を対応している上司に助けを乞おうとしている。こういったミスは起こり得るものだと、普段は寛容でいるつもりだ。でも、ここは私が折れるわけにはいかない。

「一部屋は取れてるんだろ」
 私の焦りに反して落ち着いた声が後ろから投げられて振り向いた。吹雪で乱れた前髪をかきあげる尾形さんは、要求を通すことよりも面倒くささが勝っているようだった。
「俺が椅子で寝るからお前がベッド使え」
「いや、そういうわけには。だったら私が違うホテルの空室を探して、」
「どこも同じだろ。空いてたとしてこの吹雪の中移動するのか?タクシーも捕まらねえのに」
 感覚のなくなりつつ足先がぎゅっと丸まる。
「嫌だろうが一晩我慢しろ」

 合理的な彼にそう諭されてしまったら受け入れるしかない。平謝りするフロントマンから受け取った宿帳にペンを走らせてカードキーを受け取る。恋人でもない上司と一晩同じ部屋。状況が状況とはいえ、すんなり受け入れられる方がおかしいでしょ。でも、私が尾形さんと同じ部屋に泊まることへの抵抗は、ちょっと意味合いが違かった。
 二人ともとても疲れている。まだ日の明けない東京から札幌に降り立ち勉強会に参加し、吹雪がひどくなるまで札幌支社の社員たちとの飲み会に参加していた。尾形さんに下心なんてなく、ただ早く休みたいだけなのだろう。私が募らせている想いも、きっと気付いていない、と思う。

 それなりに長い付き合いの中で気にならなくなっていた沈黙が、エレベーターと中で一気に重くなる。五階で降りた後廊下を一番端まで歩くと、私たちが泊まる部屋番号が見えた。カードキーをかざしてドアを開ける。以前出張で泊まったホテルの部屋のカビ臭さとは違う、清掃の行き届いた消毒の匂いが鼻を掠めて、少しほっとした。左側にユニットバス、右側にクローゼットが備え付けられている入口を抜けると、最低限の設備だけの手狭な部屋が広がっている。
 シーツの整えられた、枕の二つ並ぶダブルベッドの存在感を強調するように。

「先、お風呂どうぞ」
 なるべく平静を装って窓際のテーブルに荷物を下ろす。少し深めな一人がけのソファ椅子がある。私がここで寝よう。ろくに寝れないだろうし首を痛くするだろうけど、上司を椅子で寝かせるわけにはいかない。
「お前が先でいい」
 尾形さんがベッドの端に腰を降ろした。ここで遠慮するのもかえって面倒だと思い、「じゃあ、すみませんが」と荷物を取り出す。

「下のコンビニに行ってくる。ゆっくり入っていい」
 ドアを閉める前に尾形さんが言った。見た目が怖いし言い方も上手な人ではないから誤解されやすいけど、本当は感情の機微に聡くて優しさを持った人だと、私は知っている。

 入社二年目の時。顧客への伝達ミスで怒り心頭のクレームをもらってしまった私と、一緒に謝りに行ってくれた上司が尾形さんだった。
「解決したんだからもう泣くな」
 自分のミスを尻拭いさせた挙句、泣いて気を遣わせるなんて最低だと分かっていながらも、情けなくて、尾形さんに申し訳なくて涙が止まらなかった。尾形さんは呆れたようにため息をついた。普段は言葉のきつい彼だが、さすがに扱いに困ったのだろう。公園のベンチに私を座らせると、近くの自動販売機で買った缶コーヒーを私に差し出した。
「俺に悪いと思うなら仕事で返せ。それでいつか後輩がアホなミスした時に、お前がフォローしてやれ」
 腫れ物に触れるような慰めよりも、ずっと救われる言葉だった。

 あの日からずっと、私は尾形さんに恥ずかしくない部下になれるように仕事に打ち込んできた。彼の一番近くにいれる部下になれたのは、ひとえに上司への尊敬を超えた感情ゆえだ。

 備え付けのパジャマを着て蒸れたユニットバスを出ると、暖房で温まった部屋は少し熱いくらいだった。浴槽で身体を洗うユニットバスは何度ビジネスホテルに泊まっても慣れない。尾形さんはもう戻ってきていた。尾形さんがお風呂へ入った後、髪を乾かしてもテレビをつける気にはならず、もう一度予約メールを開く。シングル二部屋、料金も二部屋分が請求されたメールは、尾形さんに転送もしている。しかしメールに添付されたURLを開くと、サイトの予約履歴にはダブルの一部屋で登録されていた。
 こんなことが有り得るのだろうかと首を傾げる。窓がカタカタと小さく震えた。部屋の中はじゅうぶん温かいのに、やっぱり窓の近くに行くと冷気が寄ってくる。テレビの前で寝ようと思って椅子を引くと、尾形さんがユニットバスから出てきた。肩にタオルをかけた尾形さんの濡れた髪に、胸が跳ねて、思わず目を逸らす。

「何やってる」
「ちょっと寒いなと思って」
 再び座ってスマホをいじり始めた私に、尾形さんは何も言わず髪を乾かし始めた。このままベッドに行ってほしい。しかし私より短い時間でドライヤーを止めた彼は、私のところまで来ると手首を掴んで立ち上がらせようとした。
「お前がベッドで寝ろ」
「大丈夫ですから」
「肩こりが酷いとか言ってたくせに何強がってんだよ」
「一日くらい何とかなります」
「二人で寝るか?」

 尾形さんがワントーン抑えた声で言った。冗談を言う時の笑いを浮かべない、私の反応を見逃さない真っ直ぐな目。一部屋に二人で泊まる時点で有り得た尾形さんからの提案に、触れられた手首から熱が上っていく。
「でも、その」
 私の心臓がもたないから、それはそれで寝れないんです。
「嫌なら俺がここで寝る。お前が椅子で寝る選択肢はない」
 動揺で上手く言葉を発せない私はベッドを見る。二人で寝るにも十分な広さとは言えないけど、端で寝れば尾形さんの邪魔にはならないかなと思ってぎこちなく頷いた。

 互いに寝る支度をしてベッドに向かう。先に尾形さんに入ってもらうと、どくり、どくりと、身体の奥の鼓動が聞こえてきた。尾形さんに襲われることを危惧しているわけじゃない。でもこの状況で一晩何もなかったら、女として見られていないとはっきり認めなきゃいけないことが怖い。そんなの普段の態度から分かってることなのに。
 そっと布団をめくり、ベッドの端に膝を乗せた。のりの利いた真っ白なシーツに恐る恐る身体を沈める。すると、後ろから喉で笑う声が聞こえてきた。

「んなへりにいたら落ちるぞ。もっと中入れ」
 たしかにこれでは寝返りすらうてないだろう。
「何もしねえからそんな警戒するなよ」
「別に心配してません」
 少しだけ奥に詰めた。背中からほんのりと温もりが伝ってきて、布団のやわらかさを無視するように身体が硬くこわばっていく。

「電気、消していいですか?」
「ああ」
 枕元のスイッチを落とすと、鏡面台と入口の灯りが消えて暗闇が広がった。外の吹雪の音がより近くに聞こえてくる。
 この関係が変わることはない。思いを告げる度胸が私にないから。私が優秀な部下でい続ける限りは、尾形さんの近くに入れる。女性との噂が絶えない尾形さんの、数いる女の一人にはなりたくない。と自分に言い聞かせているのは強がりなのだろう。

「明日行きたいって言ってたのはどこだ?」
「六花亭の本店です」
「六花亭なら空港にあるだろ」
「全然品揃えが違うんですよ。そうだ、お昼行くスープカレーのお店なんですけど」
 今日はスケジュールが詰まっていたけど、明日は少しだけなら札幌の街を楽しめる。尾形さんと二人で。胸を躍らせながら予定を決めていると、ベッドサイドがけたたましく振動音を鳴らした。

 どちらのスマートフォンが鳴っているのか分からず慌てて上体を起こした私は、表示されている名にショックを受けた。取引先の担当社員だ。定期的に打ち合わせで顔を合わせている、若い女性。私には一ミクロンも関心を示さず尾形さんに猛攻をかける姿は、いっそ清々しささえあった。
 興味ない素振りしてたのに、連絡先交換してたんだ。しかも夜中に電話がかかってくるって、もうそういう仲なんでしょ。

 充電コードから尾形さんのスマートフォンを引き抜いて彼に手渡す。尾形さんは受け取るなり私へと視線を上げたけど、今の顔を見られたくなくてすぐに後ろへと向いた。私には口を出す権利はない。どれだけ近くにいようと所詮ただの部下だ。勘違いしそうになっていたけど、鳴り止まない振動音で目が覚めていく。

「おい、どこ行く」
 布団の中で温まっていた足をベッドから降ろすと、スプリングを軋ませて尾形さんが起き上がった。
「出て大丈夫ですよ。ちょっと下でコーヒー飲んできます」
「出ねえよ」
 嫉妬している自分がみっともなくて、気丈に振舞って部屋を出ようとした。部屋へ戻ってもベッドには入らないつもりで。でも肩を掴む手が思いのほか強くて、引き止めてくれたことが嬉しくて結局その場から動けなかった。これじゃ構ってちゃんじゃん。この人といると嫌な自分ばかり出てきてしまう。

 着信はほどなくして鳴り止んだ。「戻してくれ」と渡されたスマートフォンは、コードを繋いでも画面が点灯しなかった。逃げないよう見張られている視線で背中が痛くて、もう一度布団をめくってベッドに横たわる。尾形さんがあの人と寝てても構わない。……本当は構わなくないけど。構わないことにしてるんだから、今日くらい水を差さないでほしかった。

 さっきよりも強くなった吹雪の音を聞きながら、真っ暗な部屋の天井を見つめる。もう明日のことは話さなかった。お互いこのまま眠りに落ちて、何事もなくホテルを出てスープカレーを食べに行くんだろう。自分に言い訳しながらも、どうせ私では女としては選んでもらえないから逃げているだけということも、自分でよく分かっている。

「あの女とは何もない」
 惨めさに瞼が熱くなっていくのを感じていると、尾形さんが沈黙の中にぽつりと言葉を投げた。
「いいじゃないですか。尾形さんが仕事に私情を持ち込む人じゃないことくらい分かってますから。部長にも言いませんよ」
 拗ねた言い方になってしまったかもしれない。この期に及んで尾形さんの女性関係に無関心を装う私は、何を守りたいのか分からなくなっていく。
「そうじゃねえよ」

 尾形さんの呆れたような語気で彼へと向いた。暗闇の中で尾形さんと目が合う。互いの顔が思ったより近い。少しだけにじり下がったら、尾形さんの腕が背中に回ってきた。
「ちょっと、尾形さん?」
「お前にだから誤解されたくない」
「え、」
 思考がフリーズしながらも、もどかしそうな尾形さんの言葉が胸の中に甘く広がっていく。
「お前じゃなかったら、同じ部屋には泊まらない」

 ぐっと尾形さんへと引き寄せられる。茹だるように熱い頬は真っ赤になっているはずだ。尾形さんが私を女として見ている。抑えきれない悦びが痺れとなって全身を駆け巡った。鼻と鼻が触れ合う距離まで顔が近づくと、今まで意地を張っていた時間は何だったのだというくらいあっという間に唇が重なった。何度か触れ合うだけのキスを繰り返す。尾形さんの唇ってこんなに柔らかかったんだ。啄むように下唇を食まれると、下腹部が熱を帯びていくのがわかった。いつも見ているだけだった骨ばった手が、するすると私の頬を撫でて耳に届く。それがくすぐったくて小さく声を漏らしたら、尾形さんが急に唇を離した。

「悪い、我慢できそうにない」
 苦しげな息を吐き出した尾形さんが愛おしかった。私とのキスに興奮してくれている。でも、私の頭を撫でた尾形さんはベッドから起き上がってしまう。
「やっぱり俺は椅子で寝る」
 身体の中で満ち潮がさっと引いていった。彼なりに部下の私を大事に思ってくれてるゆえの制御なのだろう。でもこんなところでやめられる方が残酷だった。

 この人の中で、私が数いる女の一人になってしまったとしても。今夜だけでいいから、女として抱かれたい。
 気がついたら、ベッドから降りようとする尾形さんの背中に抱きついていた。

「やめないで」
 初めて、尾形さんに敬語を使わなかった。尾形さんが私へと振り向く。その瞬間笑ったような気がしたけど、すぐに私の肩を勢いよく押し倒して覆い被さった。


「んうっ♡、ふ……」
 さっきのキスとはまるで違う、噛み付くようなキスが降りてきた。舌が割り入ってきたかと思えば口内を弄られて、脳が溶けるような快感に支配される。舌が絡んで吸い付かれると、混ざり合っていくお互いの粘液。私の手首をシーツに縫い止める手は、やめようとしていたとは思えないくらい余裕なく力強かった。
 だらしない顔になっているのだろう私を見下ろす尾形さんが首筋に顔を埋めた。舌が這う感触がくすぐったくて膝と膝を擦り合わせてしまう。鎖骨の形を確かめるようになぞられる。身を捩る私を逃してはくれず、むしろ性感帯を見つけたとばかりに攻め立ててくる。

「あっ、それぇ♡やだあ……♡♡吸わないれぇ♡♡跡ついちゃうう♡♡」
 喉をそらして喘ぐ私に構うことなく、愛撫はそのままにパジャマのボタンが外されていった。臍からくびれまで撫で上げる手がブラジャーに触れる。はじめはその上から感触を確かめるように揉まれたけど、すぐに背中に手が回ってホックを外された。晒された胸をじっと見つめて、手の中で形が変わるのを愉しむ尾形さん。その視線や荒い息に昂りが伝わってくる。この人も女の胸で興奮する普通の男なんだって、今更なことを考えてしまった。指で飾りを弾かれて甘い声を漏らしてしまったから、また執拗に攻められてしまう。

「っ、だめぇ♡摘んじゃ……♡♡ん、あっ♡♡」
「硬くしておいて何言ってんだよ」
 勃ち上がった先端を捏ねながら尾形さんが意地悪く笑う。踵でシーツを蹴って気持ちよさから逃げようとした。でも今度は口に含まれて、今までとは比べものにならない快感が大きな波になって押し寄せる。
「んああっ♡♡、ひい♡♡、あんっ♡♡、あっ、あっあっ♡♡♡」

 飴玉を転がすように舌で掬われると頭が真っ白になっていく。情けない声をあげながら尾形さんの髪を掻き乱すことしかできない。時折見上げてくる、見たことのない劣情を灯した瞳。目が合うたび、下腹部がぐっと重くなる。この人に自分の身体を愛でられていることに、羞恥と悦びがないまぜになってしまう。
 胸を揉んでいた手が下へと伸びていく。緊張で強ばった太腿の間へと侵入してその内側を撫でた。すっかりと熟れた割れ目。下着の上から触れれただけでつぷっと水音を立てた。

 ズボンと一緒に下着を抜き取った尾形さんは、上のパジャマも抜き取ると何も纏わなくなった私の裸を上から見つめた。膝を開いて腰を屈めた尾形さんの吐息がかかって、敏感になったそこがひくつく。それがおかしかったのか尾形さんが低く笑った後、濡れたそこに触れてぬめりを弄り始めた。
「ああっ♡♡、あっ♡♡まって♡♡んっ、そんな♡♡ささすさすしちゃ、♡♡んやぁ♡♡♡」
「次から次と垂れてくるぞ。」
「だってえ♡♡♡あっ…しかたな♡♡えっちな、さわりかたすぅから♡♡♡、あ゛♡♡、クリ♡♡クリはダメえ♡♡♡」

 花芯を摘まれるとびりびりと痺れが走って全身が震えた。尾形さんが動きを止める。軽くイッちゃったかもしれない。でもまたすぐに、ヒダの間に挟まった指を蜜口に侵入させていった。奥へ届いた指が膣壁をトントンと叩く。快感に正直にぎゅっと締め付けるそこに気を良くしたのか、爪の形まで覚えている愛しい指が中で暴れ回た。

「んん゛っ♡♡おがたさ♡♡♡だめっ♡♡♡きもちっ♡♡♡」
「ずっとこうされたかったんだろ?」
「ふ、♡♡、そんな……んっ、そんなこと♡♡、っひ♡♡かんがえて、にゃっ……あああ゛!!♡♡♡♡♡」
「嘘はいけねえなぁ。」
 指が一番奥、子宮口の突起をぐりぐりと押すから腰がガクンと動いた。膣壁が悦んでぎゅうと尾形さんを締めつけちゃうのに、もう一本指が入ってきて自分勝手に中を掻き回す。

「そりぇ♡♡♡……おかしくなる、おかしくなっちゃ♡♡あグッ、なかっ♡♡♡ふぁ、あっ、ぁ、ん、ぐちゃぐちゃしちゃだめッ♡♡やっ、♡♡」
 逃げようと捩る身体はもう片方の手で簡単に抑え込まれてしまう。快楽に屈服した私を、愉悦に口元を歪めて見下ろす尾形さん。こんなの、本当はダメなのに。出張先のホテルで♡♡上司の下でひんひん喘ぐ♡♡♡メス犬になってる♡♡♡♡

「もうイッちゃう゛♡♡♡……あっ、ぁ、」
「俺にこうされたかったって、正直に言えたらイかせてやる。」
「……ひ、ひ、はぃっ♡♡、あ、あ゛♡♡♡かんがえてまひた♡♡♡♡お゙っ、おがたさんにっ♡♡♡♡あっ、こうやって♡♡♡ぃ、やらしいこと、ぁ、されたいって♡♡♡♡、ふ♡おもってましてゃ♡♡♡♡……あ゛!!あ、ぁ♡♡♡イグ♡♡♡♡♡イッちゃう♡♡♡♡んっ、おがたしゃんの、えっちなゆびで♡♡♡♡」

 腰を浮かせたまま枕を握って迫りくる絶頂に耐える私に、尾形さんは追い打ちをかける。中の一番気持ちいいところを二本の指先に攻め立てられながら花芯に吸いつかれると、目の前にバチバチと白い閃光が飛んだ。
「ぃゔ♡♡♡♡いぐッ♡♡♡♡んひっ♡♡♡♡イ゙っぢゃううゔ♡♡♡♡♡♡あ゙っ♡♡♡♡あ、ああ♡♡♡♡♡」
 全身を痙攣させたあと、一気に力が抜けて腰をシーツに沈めた。部屋が熱い。吹雪の音なんて聞こえてなかった。息を整えながらも、ぐったりとした倦怠感が押し寄せて意識が遠のいていく。

 もう戻れないところまできてしまった。今でも自分に起きていることが信じられない。前戯でこんなに気持ちよくなったことないから、やっぱり尾形さんって上手いんだ。今から私どうなっちゃうんだろう。東京に帰ってから、私たちはどうなるんだろう。いろんな不安や恐怖はあったけど、後悔はなかった。尾形さんに言ったとおり、彼とこうなれることを私は心の奥でずっと求めていたから。そして今から、尾形さんに穿たれることをあさましく期待している。
 服を脱いだ尾形さんがベッドサイドに手を伸ばして引き出しを開けた。そこから出てきたものに、私は瞠目する。

「あの、それ」
「さっき下のコンビニで買った」
 長方形のパッケージには、その薄さを誇る数字が大きく表示されている。してやったり顔でビニールを剥く尾形さんに私は唖然とするしかなかった。
「最初からそのつもりだったんですか?」
 私は彼の術中にはめられたらしい。「何もしない」なんて鼻から嘘で、一旦やめようとしたのも、私から抱いてほしいと意思表示させるためだったんだ。

「お前がいつまでも素直にならねえからだ」
 隠せているつもりだったのに。一線引いてる体で強がっている言動を、全部尾形さんには気付かれていた。それが裸を見られていることよりもよほど恥ずかしくて、枕に顔を埋めると尾形さんがのしかかってきた。

「もう逃がさねえぞ」
「やめてください」
 お尻に硬い熱が当たってビクリとした。ぐりぐりと押し付けてきてるのは絶対わざとだ。
「ねえのにすると思ってたのか」
「尾形さんなら、普段から持ち歩いてるんだろうなって思ってました」
「……俺を何だと思ってるんだよ」

 不服げに言い捨てた尾形さんは私をぎゅっと抱きしめて肩に顔を埋めた。重なった肌の温度が私の心を溶かしていく。いつもはかっこいい尾形さんが、こんなふうに私の前で拗ねるのは初めてだ。

「他の奴らから何を聞いてるんだか知らんが、俺は、その……、お前しか見てない」
 ああ、この人もこの人で、頑なな私に自分からは素直になれなかったんだ。ずっと近くにいたのに、こんな回りくどい方法を取らないと、私に想いを伝えることができなかった。自分にそっくりな不器用さが愛おしくて、尾形さんに向き直った私は彼に口付けた。両思いだったと分かっただけで、さっきまでのキスよりもずっと深くで尾形さんを感じる。私の舌に吸い付く尾形さんは限界だったのか、性急に避妊具をつけて私の両腿を掴んだ。

 宛てがわれた蜜口がその硬さと熱に悦んでひくつく。ゆっくりと奥へ入り込んでくる尾形さんの自身。
「ん、んん♡♡は、あっ♡」
 中がうねって尾形さんを締め付ける。苦しげに眉を寄せて息を吐き出す尾形さん。全て埋め込んだ後、少しの間動かないで私の頬や濡れた唇を撫でた。こんなふうに触れられる日が来ると思っていなかった私は、涙を滲ませてしまった。

「痛いのか?」
「いえ。すごく、嬉しくて」
 尾形さんがふっと柔らかく微笑む。親指で涙を拭ってくれたあとゆっくりと腰を引いて、また奥へ埋め込んだ。指よりもずっと大きな質量が壁を刺激する。それを何度か繰り返していくうちに、律動が大きく早くなっていく。

「あっ♡♡ぁ、あ、いぃ♡♡♡きもちぃ……、おく、あんまだめ、ん♡♡♡や、あ゙ッ!♡♡すぐっ、すぐイッちゃ、♡♡あ゙、あっ、まって♡♡♡」
「はっ、クソ……、あんまり締めんな。」
「むりっ♡♡♡らって、おく、ゴツゴツすぅから♡♡♡も、ぁあ゙、んっ♡♡♡♡」
 肌を打つ音と、いやらしい水音が響いている。尾形さんの手をぎゅっと握って快感に耐えるしかなかった。お腹側を擦られるとひときわ気持ちよくて、尾形さんがブレーキをかけるように一度動きを止めた。屈んで私の耳に唇を寄せると、その中をぴちゃぴちゃと舐め始める。

「らめ、らめぇっ♡♡♡、ひ、ひもちぃから、それっ♡♡♡、やめて、ぁ、ふ、ふっ♡♡♡、なかっ、べろいれちゃ、ダメ♡♡♡」
 わざとらしく音を立てて舌を抽挿されて、どれだけ首を逸らして逃げようとしても追いかけてきた舌に蹂躙されて、頭がぼやけていく。腰をくねらせたら、入ったままの尾形さんの自身がまた大きくなったのが分かった。私の手首を掴んでいた尾形さんの手が胸を揉み始める。絞るかのような力強さで揉みしだいた後、先端を尖らせるように弄られた。ビクビクと反応してしまう私に容赦なく耳の抽挿は続いている。

「ぃ、いっしょ、ダメ♡♡♡っ、ン、どっちもやらなぃでぇ♡♡♡♡あン、あっ、ぁ♡イグ、イッちゃう、いっぢゃうからぁ♡♡♡♡、ひぃ、ひ、んぁああ゙あ゙♡♡♡♡♡」
 背中を弓なりに逸らして呆気なく達してしまった。今までで一番尾形さんを締め付けて、射精を促す収縮に耐えた尾形さんがすぐに律動を再開する。肌を密着させたままバチンバチンと打ち付ける荒々しいセックスが、私の喘ぎ声を汚くしていく。

「んお゙♡♡♡♡あ゙っ、♡♡♡ま、まっで♡♡♡♡そ、そんなッ♡♡ひっ、ひぃ、は、はげし♡♡♡♡ぃ、イっでる、ぅ、イッてるのに、ゃ、ゃ、やめてッ、♡♡♡おねがっ、あ゙っ、あ、ン♡♡♡♡」
 今までの全てが前戯だったかのような貪る律動に、頭がおかしくなりそうなほどの快楽に押し上げられて、必死で尾形さんの腰に足を回してしがみつく。尾形さんの唸るような低い声。獣の交尾のようなセックスの中でも、尾形さんがひたすらに愛おしい。

「好き、おがたさっ、しゅき♡♡♡」
「っ、お前なぁ…!!!」
「あ、ぁ、あ、あ♡♡♡ダメダメ♡♡♡♡またイくっ、イクっ♡♡♡♡ひゃ、ゃ、あ゙ああっ♡♡♡♡、ああああ♡♡♡♡♡♡あ゙ーー、あ、ぁ……」
 数回、最奥を打ち付けられて全身を痙攣させた。尾形さんが欲を吐き出す感触を中で感じながら、天に昇ったようなふわふとした心地に包まれる。全て出し切った尾形さんが私の上で脱力する。その重みに幸せを感じながら尾形さんの髪を撫でていたのに、いつの間にか眠りに誘われてしまった。

***

 カーテンの隙間から刺す白い光で自然と目が覚めた。背中から甘い温もりが伝わってくる。裸で眠りについてしまったはずの私はいつの間にかパジャマに着替えさせられていた。

 喉が痛い。腰が鉛のように重い。でも、まるで自分が一夜にして生まれ変わったような晴れやかな気持ちに包まれて、朝日に照らされる白銀の街を見たくなった私は身体を起こしあげようとした。
 腰に巻きついてきた腕に、阻まれてしまったけど。

「どこ行く」
「起きてたんですね」
 逃げるわけでもないのにベッドから離そうとしない力強さが可笑しくて、尾形さんへと寝返った。やっぱり前髪をおろした彼はいつもより幼く見える。昨夜知ったかわいい彼と相まって、上司相手になんだか母性のような感情が擽られた。

「おはようございます」
 優しい口付けが返ってきた。昨夜の余韻を取り戻すには十分で、キスを繰り返していたら戯れにもつれ込んだ。恋が報われた朝がこんなに眩しいことを、私は知らなかった。足を絡ませたら尾形さんはその気になってしまったのか、パジャマの中に手を滑り込ませて胸を揉み出す。

「ひとつ、聞いておきたいことがあるんですけど」
「あ?」
「ホテルが一部屋になってたのも、……ん、尾形さんの、仕業なんですか?」
「どうだかな」
 パジャマを捲りあげた尾形さんが谷間に顔を埋める。クロだ。やっぱりこの人、最初から仕組んでたんだ。

「ご、誤魔化さないで下さい!あの時ほんとどうしようって焦ったんですから」
「結果オーライだろ」
「それは尾形さん次第です」
「素直じゃねえやつ」
「尾形さんに言われたくありません」
「ははっ、言うじゃねえか」

 お互い意地っ張りなせいで遠回りしてしまった。でも尾形さんと過ごしてきた時間を思い返して、そこにはいつも私への情があったんだと分かったら、どうしようもなく幸せな年月に思えた。そしてこれからも。

「もう起きますよ。九時にホテル出るんですから」
「やっとこうなったんだ。もう少しいいだろ」
 尾形さんは観光よりも今この時間の方が大事みたい。まあ、私もそうだなと、彼の額に口付けを落とした。




冷たいラブロマンスを抱いて眠る