尾形くんには見せられない



 浴室からのシャワーの音に耳を傾けながら、ベッドに座った俺は紙箱を膝に置いた。今日の会社の飲み会で行われたビンゴの景品。くだらない余興の中でも三等が当たったと分かった時は、それなりのものだと期待して彼女と一緒に開けようと思った。こんなふざけた熨斗がついている箱じゃなければ。
 
《大人の特賞》
 
 何が当たったか察して虚無に立ち尽くす俺を、宇佐美は指をさして爆笑していた。それだけならまだ無視できたが、「でも良かったじゃん。今夜から彼女と使えそうなもので」と軽口を叩くから膝蹴りした。何で三等にネタ枠が来るんだよせめて六等ぐらいにしとけよ。笑う奴らも大していなくてネタ枠としても成り立ってなかっただろうがと、幹事の采配に心の中で悪態をつきながら熨斗を剥がして蓋を開ける。
 
 案の定、入っていたのはアダルトグッズの詰め合わせだった。その一つ、L字に曲がった奇妙な形の玩具を手に取って見回す。説明書によると、どうやら吸口とバイブで同時に刺激を与えるものらしい。試しに電源を入れようとした。だが、先刻の宇佐美の言葉を思い出してため息を落とす。
「使えるわけねえだろ」
 
 今風呂に入っている彼女は、俺がこんなものを使おうとしたら幻滅するのではないだろうか。初めてだと言って恥じらいながら俺を受け入れた恋人。その後すぐに彼女の住んでいるマンションの部屋が水漏れ被害で住めなくなり、遅かれ早かれと思っていた俺は、一人暮らしには些か広いこの部屋で一緒に住むことを申し出た。だが、彼女は付き合って二ヶ月での同棲に難色を示していて、彼女を抱いたことで手に入れた気になって浮かれていた自分がアホみたいで気落ちした。最終的には彼女がここへ引っ越すことを決めたが、俺を慮って断れなかったのではないかと今でも引っかかっている。
 
 そんな流れがあったから、二人での生活が始まったにも関わらず俺はなかなか彼女と戯れることができない。彼女を欲しいままに抱いてしまえば、結局それが目的だと思われそうだから。かなり頻度を抑えているつもりの俺は、同じベッドに眠る彼女の寝息が聞こえてから悶々とする夜を過ごしている。
 
 こういった類のものに興味はない。だが、波打った形のバイブ部分を眺めていると、これで彼女がどう乱れるかを見たい欲はふつふつと湧いてくる。頬を紅潮させて涙を滲ませながら、身体を震わせてシーツを掻く姿を想像する。か細く鳴きながら俺を呼ぶ声が、この前の情事の記憶から呼び起こされる。自身が熱を持って硬くなり始めた俺は頭が惚けていたのだろう。いつの間にか風呂から出た彼女の足音がこっちに近づいてきて、ようやく我に返った俺は慌てて手元のものを片付けた。
 
「尾形くん帰ってたの?」
「ああ、今」
 間一髪でベッドの下に箱を滑り込ませた。ドアへ向くと、バスタオルを身体に巻いた濡れた髪のままの彼女が立っていて、熱の燻った俺は目のやり場に困る。
「飲み会だったならご飯いらない? さっき肉じゃがとか色々作ったんだよ」
「……少し食べる」
「じゃあ温めるね! あと今日ね、」
「先に服着ろよ」
 こっちの気も知らない彼女のマイペースさに思わず笑いをこぼす。普段大して笑えないのに、こいつと付き合ってからはこういう瞬間が何度もある。
 帰ればこいつがいる。今はそれだけで充分だ。ベッド下に隠した箱をかかとで奥に押しやりながら、俺は今しがた膨らませた妄想を胸にしまった。

 *

 ベッドの下へとかがむと、埃一つないフローリングの上にそれは置いてあった。
 昨日、いつの間にか帰ってきていた尾形くんのもとへと寝室に行った私は、ベッドに座った尾形くんがその下に何かを放り込んだ瞬間を見てしまった。その時の尾形くんの話し方とか目線が私に何かを言えないことを隠しているみたいで、普段の尾形くんに何かを疑う隙なんてなかったから、今日もずっと心が波立っている。
 
 腕を伸ばしてベッドの外へと箱を取り出す。シューズボックスほどの大きさのギフト箱はしっかりと重みがある。私に見せたくないものって、職場の女の子に何かもらったとかかな。後ろめたさと不安で早まる鼓動を落ち着かせるように、一呼吸おいた。そして蓋をそっと開けて、……想像していなかった中身に甲高い声を漏らしてしまった。
 
 えっちな漫画や動画でしか見たことない大人の玩具の数々。その目を引く色や特徴的なデザインに、箱を開ける前とは違う動揺で心臓がバクバク音を立てている。一緒にしまわれていた 紙を開くと、「大人の特賞」という表書きの熨斗だった。飲み会でもらったとかだよね。じゃあ尾形くんが用意したわけじゃないのかと察して、衝撃に入り混じっていた期待がひいていく。
 
 尾形くんがベッドの中で私に遠慮していることは何となく分かっている。そんな必要ないのに。同棲の話を持ちかけられた時にすぐ返事ができなかったのは、自分に自信がないから。まだまだ相手を知る余地を残した私たちが一緒に住むことで、尾形くんが私の嫌なところを見つけてしまうのではと思うと怖かった。同棲に踏み切ってから一ヶ月経つ今だって、尾形くんに好まれる女の子でいることを意識している。ベッドでのこともそう。本当の私はすごくえっちなことに興味があるし、もっと尾形くんに誘われたい。でも、今まで経験がないと伝えた時に喜んでくれた尾形くんは、自分から求めるような淫らな私にはひいてしまう気がして本性を隠している。
 
 やっぱり尾形くんは、ここにあるものを私に使うつもりないのかな。えっちな動画で見たことのある、女の人が脚を開いたそこに男の人が玩具を押し当てる姿を思い出した。同じ玩具が目の前にある。あの男女を尾形くんと私に重ねて想像すると、身体が切なく疼いて刺激が欲しくなってしまった。
 
 尾形くんと一緒に使える日まで待たなきゃダメと、私の理性が引き止めようとする。分かってる。少しだけ、実際にどんなものかほんの少し試すだけ。そしたら元通りにして見なかったことにするから。そう自分に言い訳ながら、こけしの形をした電マを取り出す。そしてベッドに寄りかかって足を広げると、その先端を下着の上から押し当てた。未知の体験への緊張で手が震えていたし、ここまできても後ろめたさが抗っている。玩具の先端を押し当てた先が布越しにじわりと濡れる。じれったさでスイッチを入れてしまった私はすぐに太ももに力が入った。
 
「あっ♡」
 鈍い振動が与えてくる甘い電流みたいな快感。一人で指を使ってするのとは比べものにならないくらい気持ちいい。機械の唸る音の中に、耐えきれない私の声が混ざる。角度を変えてより感じるところに当てると、膝がガクガクいって背中が仰け反る。こんなの、ダメなのに……♡いつも尾形くんが丁寧にほぐしてくれるところ。その時の私を見上げる視線や私を煽る言葉を思い出す。尾形くんごめんなさい。一人でこんなもの押し付けて、あんあん言ってる……♡尾形くん以外にイカされちゃう……♡♡
 
「あ♡、ん♡♡あっ、あ、あ、んんんっ♡♡、あっ、ダメ、ダメ、あっ、あっ♡♡♡」
 上り詰めていく感覚の中で、玩具の先端を陰核へとずらす。大きすぎた刺激で全身を震わせた私は、天井を向いてあっけなく達してしまった。手放した玩具が床に転がる。頭がぼーっとして、息を乱しながらそこにへたりこんでいた。浮遊感が薄らいでから、今何時だろうと、尾形くんの帰りを待つ日常に引き戻される。片付けないと。使ったものを綺麗にして元通り箱をベッドの下へと押し込む。よろける足でリビングへ戻り、余韻を振り払うように夕食の用意をしていると玄関のドアが開く音がした。
 
「おかえり」
「ん」
 大丈夫。普通にしていれば気づかれることはないと、いつも通りを意識して駆け寄って出迎える。尾形くんの手が私へと伸びる。たまに疲れたと言ってここで甘える尾形くんに擦り寄ろうとした。でも、その手がぴたりと額に触れる。
「熱あるのか?」
「え? ない、ないよ! なんで?」
「顔が赤い」
 他意なんてない尾形くんの視線に心臓が縮こまった。たしかに、まだ身体には上りきった熱が残っている。さっき絶頂したばかりの自分は、そんなに分かりやすいの? 尾形くんの前で上手く取り繕えないでいると、額の大きな手は頭をぽんと撫でた。
「具合悪いなら寝てていい。いつも悪いな」
 そう言って尾形くんが私の横を通り過ぎても、難を逃れた安堵はない。一人でえっちなことをしてただけなのに。恥ずかしさと心苦しさで、その日は尾形くんの目をほとんど見れなかった。
 

 ベッド下の箱はその後、尾形くんの衣類がしまわれているクローゼットの棚に移動されたのを洗濯物を戻す時に見つけた。さすがにここに置かれたら勝手に開けられない。あの経験を一度きりで終わらせる決意を固くさせたその夜、一週間ぶりに尾形くんに抱かれた。一人で快感に耽るのとは全然違う、大好きな人から求められる悦びと甘やかな支配を身体で覚えて、抱きしめられながら眠りにつく。足りないものなんてなかった。これだけ幸せな営みがある私に、一人遊びの道具なんて不要なはずなのに……。

「あっ♡♡、ああん♡♡」
 五日後には、乳首を摘んだクリップが繋がれたローターと、下着をずらして直接押し当てた電マで絶頂する私がいた。その後も尾形くんが遅くなる日は、あの箱を開いて秘密の時間を愉しんでいる。私一人しかいない部屋で何度も達した後、お風呂に入って、家事をして、事後の倦怠感が抜けた頃に帰ってきた尾形くんを笑顔で迎える。隠し事なんて一つもないような日常を過ごして、ようやく尾形くんが私の肌に触れてきた日にめいいっぱい愛し合う。そうして満たされた夜を過ごしても、数日すると薬が切れたようにあの天に昇る瞬間が恋しくなって、また箱に手を伸ばす。終わって戻す時はいつも、もうこれで最後にしようと心に決めるのに。こんな自慰にやみつきになっている私を尾形くんに知られたら。その恐ろしさはいつも隣り合わせにあるはずなのに、「尾形くんに見せられない私」という背徳感はかえって燃料になって、秘め事をより一層快楽へ導くものにしていく。

 けだるさに覆われながらも力が入らない足で立ち上がる。もう、一度だけの絶頂では物足りない私は、もっと気持ちよくなるためには見境がなくなっていた。本当ならこのままベッドに飛び込んでしまいたいくらい疲れている。でも、ぐっしょりと濡れた蜜口は早くシャワーで流したかった。最中に片足にかけていた下着を手に持って脱衣所へ向かってしまったのは、まさか玄関のドアの鍵が開くと思わなかったから。
「……おかえり! 早かったね」
「風呂入るのか?」
「うん、急いで入っちゃうから待ってて」
 後ろ手に隠した下着を見られるわけにはいかない私は、靴を脱ぐ尾形くんに駆け寄ることができず脱衣所に飛び込んだ。瞬時に下着を洗濯機に投げ入れ胸を撫で下ろす。鏡を見ると、快感に蕩けた目をしたのぼせた顔の女がいる。また尾形くんに気づかれちゃう。早く浴室に入らなきゃと服を脱ごうとしたのに、私のあとをついてきた尾形くんが鏡に映る。
 
「やっぱ先に入る?」
「疲れた」
 鞄を足元に置いた尾形くんが脱力しながら私を抱きしめる。お酒が入っているからか、久しぶりに帰ってすぐ甘えてきてくれたことが嬉しくて腕を回す。少しだけ頬が赤い尾形くんに見つめられてハラハラしたけれど何も言われず唇が重なった。触れるだけのキスは、離れてすぐに今度は深い口付けへと変わる。不意打ちの甘い時間。胸を高鳴らせていられたのはわずかだった。尾形くんの手が服の中へと入ってきた私は、しとどに濡れたままの蜜口に触れられるわけにいかないから。このまま私を抱こうとしている尾形くんに腕を伸ばして制止する。
 
「ごめん。今日ちょっと……忙しかったから疲れてて」
「……そうか」
 私に初めて断られた尾形くんは、私から離れると落胆した空気を纏ってその場から立ち去ってしまった。尾形くんを傷つけてしまった自分が許せなくて叫びたい。だって、さっきみたいな流れでするなんて思わなかったから! あれだけ愉しんだ一人遊びを後悔しながら、お風呂をすぐに済ませて寝室へ行く。スーツの上着を脱いだ尾形くんがベッドの上に屈んでスマホを触っていた。
 
「もう出たのか?」
「尾形くん……さっきごめんね」
「気にしてない。そういう時もあるだろ」
 尾形くんは目線を上げない。そっと隣に座ってスマホの画面を見ると、お掃除ロボットに接続したアプリを操作している。一週間前に家に届いた最新製のそれは、この寝室の部屋の隅に基地が設置されていて、私たちが仕事へ行っている間に家中を走り綺麗にしてくれているらしい。既に使いこなしている尾形くんに感心しながら機嫌を伺ってしまう。
「何度も言ってるが、家のことは俺が適当にやるから何もしなくていい」
「家事は全然大変じゃないよ。お掃除も尾形くんがそれ買ってくれたし」
「いいって言ってもお前がいつも掃除機かけるからな」
 胸がちくりと痛む。それは鋭い尾形くんに痕跡を残していないかの不安と、秘密へのやましさでやっていたことだから。私が楽できるようにとこんな高いものを買ってくれた尾形くんを、やっぱり私は裏切っていることになるのかな。尾形くんが頭を撫でてベッドを立つ。まだ落ち込んでる? このまま誘われなくなってしまったら怖い私は、部屋を出ていく尾形くんを慌てて呼び止めた。
 
「明日なら、したいな」
 初めて自分から誘った恥ずかしさで頬が熱くなる。尾形くんは数秒黙って固まっていたけれど、「明日は早く帰る」と言い切って部屋を出て行った。ひとまず、今日のやり直しを約束できたことにほっとする。でも、こうやってタイミングを逃してしまうのならあの遊びは今日をもってやめなきゃと、何度目か分からない決心をして眠りについた。



 足早にマンションに帰ると、玄関の鍵は既に開いていた。尾形くんが私より先に帰れることは珍しくて、それだけでこれからの長い夜に胸を弾ませる。できるなら昨日みたいに玄関や脱衣所でしてみたい。でも、しんとした廊下に尾形くんが出てくる様子はない。リビングも脱衣所も電気は消えている。またお掃除ロボットの管理をしているのかと思って寝室へ向かった。
 
『あ♡♡、ああん♡♡、んんん♡♡、』
 ドアノブに手をかけた私はぴしりと動きが止まる。扉のむこうからこもって聞こえてくるのは、女の喘ぎ声だった。尾形くんとの日常の中で、そういうものを観ている様子を一片も感じなかったのに。男の子ならみんな観るのは理解している。でも、このタイミングで観るなんて私じゃ興奮するのに不足ってこと? 尾形くんに対して初めてかっと熱いものが噴き上がった私は思い切り扉を開けた。
 
「何やってるの!?」
『あんっ♡♡、あっ、あ、だめっ♡♡♡、そこ♡♡、イク♡♡、イっちゃう♡♡♡、あんっ♡♡♡』
 ベッドに腰掛けた尾形くんは、案の定スマホを横にして画面越しの女の痴態に見入っていた。でも、私の怒りは急速に冷えていく。全身の血の気がさっと落ちて足元の感覚がなくなっていくのは、聞こえてくるそれが明らかに私の喘ぎ声だから。私へ振り向こうとしない尾形くんの隣にはあの箱が置かれていて、おそるおそるスマホを肩越しにのぞきこむと、脚を広げた女がその中にある青い玩具を挿れて乱れている。
「何やってるかって? お前が昨日何してたか見てる」
「何で……何でこれ」
『あ゙っ♡♡♡、ひっ♡♡、あ゙っ、あ、イク♡♡、ああ♡♡♡、ああああっん♡♡♡♡、』
「確かに忙しかったろうなぁ、俺が帰るまでにこんな長い時間やることがあったなら」
 嫌味っぽく私を責める尾形くんは、清純な女の皮を被った淫乱女を軽蔑しているのだろう。盗撮されてたということは、昨日より前からバレてたってこと? 床から見上げるようなアングルで撮られている、何も気づかずにはしたなく喘ぐ私。はっと息を呑んで部屋の隅を見る。円盤の形をした最新式お掃除ロボットの、側面につけられたカメラレンズ。障害物を避けるための機能だと尾形くんは言っていたけれど、これで私をアプリから見ていたなんて……。
 
『あんっ♡♡、ダメダメ♡♡、あっ♡♡♡、ああああっ♡♡♡♡、んん♡♡、ん゙〜〜〜〜♡♡♡♡』
「そんなによかったか、俺とするより」
「違う! そういうことじゃなくて」
「そう思ってなけりゃここまでハマらねえだろ」
「ほんとに違うの……したい時、尾形くんに言いづらくて……尾形くんとできないかわりに使ってただけ」
「じゃあ今ここでやってみせろよ」
 いつになく不機嫌な尾形くんの命令に愕然とした。尾形くんと二人で使いたいと思っていたけれど、こんなシチュエーションを想像していたわけじゃないのに。
「俺とするより気持ちよくはないんだろ?」
 尾形くんは、私がこんな女だって分かって幻滅しているんじゃないの? 改めて同じ姿を見たい尾形くんの心境が分からず、でも尾形くんの怒りを鎮めるために私にできることは、今までの再演。もう醜態を見られたのだから目の前でしようと変わらない。そう自分に言い聞かせた私は、仕方なくベッドに乗って箱を開けた。その中から乳首用ローターを手に取ると、向かい合わせに座る尾形くんの威圧するような視線が痛い。
 
「いつもそれ最初に使ってるだろ」
「うん」
「これだけでイッたことは?」
「……ないです」
 何これ、事情聴取? いちいち言葉にされることで余計羞恥が煽られてしまう。
「上全部脱いでやれよ」
「何で? いつも着たまましてるけど」
「ちゃんと挟んでるか見えなかったら意味ねえだろ」
 感じないようにズルすると思ってるのかな。本当ならそうしたい。それで尾形くんが、私にとって玩具が自分のかわりだったと納得してくれるなら。服を脱ぐ時ですら一瞬も目を離さない尾形くんの前で、胸を曝け出す。そうしてクリップで両方の乳首を挟むと、改めて恥ずかしい姿だと思った。尾形くんに促されるまま、コードの先のローターの一番弱い振動を起動させる。
 
「あ♡……あっ♡、ん♡、」
「やっぱ感じてんじゃねえかよ」
「感じてない♡、感じてないの♡、あ♡、んっ♡、あ♡、」
「じゃあこれは?」
 認めない私にニヤつきながら、尾形くんが一段階刺激を強いものにした。
「ひぃん♡、や♡、あっ♡、ああん♡、んん♡♡、あ♡、んあっ♡」
 声を押し殺そうとしても痺れるような快感で漏らしてしまう。これを最初に使った時は挟むのが痛かったのに、今はそれすら気持ちよくなってる……♡このままずっと続けてたら本当に乳首イキしちゃいそう♡早く終わりにしたくて、震える乳首をガン見している尾形くん無理やり感じてないふりをする。
 
「ほら♡、あっ♡、イけないでしょ♡、ねえ♡♡、んっ♡、もう、あっ♡♡、終わりでいい?、んっ♡♡、」
 尾形くんが片方だけのクリップを外す。刺激から解放されて一瞬だけ安心した。でも、すかさず尾形くんがそこに唇を寄せて吸い始める。
「え♡、何やって♡♡、あんっ♡♡、やだっ♡♡、あっ♡♡、それダメ♡♡、おがたくん♡、あっ♡♡、だめ♡、だめ♡♡」
 
おっぱいを下から包み込んだ尾形くんが、敏感になっている乳首を舌先でつついて弄ぶ。そして飴玉みたいに転がす感覚に身を捩ると、もう片方のクリップも外され尾形くんの指で円を書くように捏ねられた。ぴん、ぴんって優しく弾かれておっぱいが揺れている反対で、まるでおっぱいを飲んでるみたいに音を立てて吸われる。両方に甘い快感をよこす執拗さで、尾形くんな自分が乳首イキさせるつもりなんだと気づいた時には限界が近かった。

「あん♡♡、ひぅ♡♡、んんっ♡♡、あっ、おがたくっ♡♡♡、だめっ♡♡、ちくび♡♡♡、いっちゃうぅ♡♡♡、あっ♡♡♡、あ゙っん♡♡♡」
 尾形くんがきゅっと摘んだ瞬間、背中を仰け反らせた私はギリギリで堪えていたものが決壊して達した。身体から力が抜けた私を、尾形くんがそのまま仰向けにする。
 
「どっちが気持ちよかった」
「尾形くん」
 尾形くんは玩具より、自分の方が私を悦ばせることができると私に示したいようだった。あんな動画を観てしまったから玩具に嫉妬しているのかな。クールな尾形くんのこういう意固地なところも愛おしいと思ってしまうのは、惚れた弱みかもしれない。
 
「全部尾形くんとの方が気持ちかったよ 」
「これもか?」
  尾形くんが箱から青い吸引バイブを取り出す。昨日、私が初めて使った玩具。ネットの口コミで「イクときの深さが違う」「これがないともう無理」と言われているこの玩具を使ってしまったら、本当に戻れない気がして手に取らなかったけれど、ついに我慢できずに使ってしまい、段違いの快感に夢中になってしまった。
「昨日これで何回イッた?」
「……二回くらい」
「嘘つくな。五回イッてるよな?」
「うぅ……でも、尾形くんとする時の方が気持ちいから……」
「じゃあ早く昨日みたいにそれぶち込めよ」
 
 結局、自分で確認しないと気がすまない尾形くんにその玩具を手渡される。ずしりとした質量。スカートも下着も尾形くんに命令されて脱いだ私は、こんなに太いものが中で暴れる感触を思い出してしまう。嫌だけど、尾形くんがやれって言うから……♡ 尾形くんにイカされて頭がのぼせている私は、仰向けのまま、既に愛液で濡れているそこにそれを宛てがった。
「あっ……♡」
 尾形くんの視線が鋭くなる。こんなすぐ感じてちゃダメなのに、先っぽを呑み込んだそこは早く早くとひくついている。ゆっくりと奥に埋めていくと、太いバイブに中が押し広げられていく。尾形くん以外のものが入っている罪深さ。波打った形の凸がぽこんって中で引っかかるたびに、気持ちよくてしっかり締め付けちゃう……♡玩具を全部入れて息を乱す私を、尾形くんも興奮に抗えない表情で見下ろしている。イッても怒らないでくれるかな。これから襲い来る快楽に恐怖しながらも、三つあるうちのスイッチの一つを入れた。

「あっ♡♡、ああっ♡♡、ん♡、ああん♡♡、はぁ♡♡、ひぃ♡♡♡」
 やっぱすごい……♡電マとは違う、振動が中に直接触れる刺激ですぐイッちゃいそう……♡ いっぱい締め付けちゃってるのわかる♡こんなの続けたら、中がこの形になっちゃう……♡
「お前は何咥えてもこうやって悦ぶのか」
「あ♡、ちがうから♡、あっ♡、べつにっ♡、いっ♡、べつに悦んでなぃもん♡」
 強がりながらもヘコヘコと腰を浮かせてしまう。ぎらついた目をした尾形くんがそこに手を伸ばして、二つめのスイッチをオンにする。
「じゃあこれも平気だよな」
「あ゙っ♡♡、まって♡♡、だめ♡、あっ♡♡、うごいちゃだめっ♡♡」
「中どうなってる?」
「あ♡、やっ♡、あん♡、あっ、ああん♡♡」
「言えないほど感じてるのか?」
「そぉじゃなっ♡はぁ♡♡、あ♡♡、さきっぽと♡♡、あ、お腹がわのとこっ♡、が、こつこつして♡♡、ん♡、んんん♡♡」
「いつも奥突かれてすぐ中イキするもんな」
「でもこれっ♡あっ♡。とどかないの……、いつも、おがたくんが♡、とんとんって、してくれるとこ……♡」
 へぇ、と満更でもなさそうに尾形くんが口元を緩める。目の前にいるのに尾形くんが恋しくて、私は鳴きながら尾形くんを呼んでしまう。
「おがたくん♡、あっ、あ、おがたく♡♡、あ゙っ♡♡、強くしちゃっだめ♡♡、あ♡、やだ♡♡、あんっ♡♡♡」
「イイとこも突けねえ短小なんだから強くしないとイケねえだろ」
 イくのが不満だったくせに、尾形くんはこのシチュエーションを愉しんでいた。中に電気が走ってるみたいな刺激を、尾形くんに抱かれている時のことを思い出しながら受け止める。結局いつも一人でしても、こうして尾形くんを求めていた。イケそうでイケない。早く挿れてほしい……♡♡もどかしくて譫言のように尾形くんを呼んでいたら、尾形くんが最後のスイッチを押してしまった。

「あ゙っ♡♡♡、ひぃ〜〜〜♡♡、あ゙っ♡♡、やら゙あ♡♡、イグ♡♡、ああ〜♡♡♡、ああああっん♡♡♡♡、」
 やっぱこれだめっ♡、吸い口が、すごい速さでクリトリスをすぽすぽ吸ってりゅ♡背中を仰け反らせてイッても、すぐ二度目の波が来ちゃう♡
「あんっ♡♡、だめだめ♡♡、またっ♡♡、あっ♡♡♡、ああああっ♡♡♡♡、んん♡♡、あ゙〜〜〜〜♡♡♡♡」
 気持ちよすぎて止めたいのに、玩具を尾形くんに押さえつけられてる。ベッドの上で跳ねる身体を、容赦なく三つの動きが攻めてくる。「イキが深い」がこういうことだと思い知らされてる。
「クリ吸われた途端イキ過ぎだろ」
「だって♡♡、あ゙♡♡、あひっ♡♡、だめ、とめてっ ♡♡、またイッちゃっゔ♡♡♡、ん♡♡、」
「俺に口でされるのとどっちがいい?」
「ん゙♡♡、お♡、おがたくっ♡♡♡、あっ♡♡、あ゙ぁぁあ♡♡♡、ん゙んん♡♡、おがたくん♡♡、んっ♡♡、あぁん〜〜♡♡♡」
「イキながら言われても説得力ねえよ」
 抗えない……♡、これ続けてたらこのまたま気絶しちゃうかも。まだ尾形くんのおちんちん入ってないのに♡♡
 
「あ゙〜♡♡♡、おがたくんっ♡♡、あっ♡♡、ううんっ♡♡、もう、おがたくんのっ♡♡♡、ほしいぃ♡♡♡、いれて♡♡♡、ん゙んん♡♡♡」
「イッてんだからまだ続けろよ」
「やっ♡♡、やだぁ♡♡、ぁあ♡♡、おがたくんの♡♡♡、おっ♡♡、おちんちんがっ♡♡♡、いいっ♡♡♡、」
 尾形くんのそこは、私の胸を凝視していた時からずっとズボンの中で大きく膨らんでいた。早くそれで思い切り突き上げてほしい。
「しょうがねえなぁ」
 口ぶりとは裏腹に、尾形くんの表情はもう限界のようだった。立ち上がってスラックスを下ろして下着を脱ぐと、立派に反り勃った男の人の象徴が出てきて見惚れてしまう。今からこのおちんちんで……♡ゴムをつけた尾形くんが吸引バイブを私の中から抜いた。つぷぷって卑猥な音を立ててバイブが抜かれたそこは寂しさにひくついて尾形くんを待ちわびる。
 
 すぐ挿れるかと思ったのに、私に覆いかぶさった尾形くんが唇を重ねた。耳の縁に触れられながら、いつもより熱い尾形くんの舌と絡みあう。最初から深いキスをしてくる尾形くんに余裕はなくて、でもこうして今日まだしていなかったキスをしてくれることが嬉しい。流れてくる唾液を飲み込むとまるで媚薬みたいに頭がくらくらしてくる。私が初めての時に尾形くんに安心して身体を明け渡せたのは、尾形くんのキスが丁寧でうっとりするものだったからだと思う。
 
 そして腰を屈めた尾形くんが、つい今まで玩具が入っていたそこに自身をぐっと沈めていく。すごい熱い……♡おちんちん脈打ってるのわかる……♡♡ 尾形くんでいっぱいになってく悦びで中がきゅんって締め付けちゃうから、尾形くんが短く息を吐く。全部入り切ったところで尾形くんに手を取られて指が絡まる。こうやって普段はない熱のこもった瞳で見つめられて、大切に扱われる時間が一番好き。こんなの玩具より尾形くんとするのがいいに決まってるのに……♡
 
「んお゙っ♡♡♡♡」
 油断していたら尾形くんが思い切り腰を打ち付けてきて、汚い声を漏らして‪昇天‪‪してしまった。「ここだろ」と尾形くんが意地悪く笑いながら腰を引いて、再びそこを穿つ。さっきバイブが届かなかったところ。ようやく中イキして目の前に星が散る。我慢ならないように荒々しく腰をぶつける尾形くんの下で、次から次に来る絶頂の波に溺れている。
「イッてるっ♡♡♡、まって♡♡、あっ♡♡、そんな♡♡♡、はげしいのっ♡♡♡、ダメなのぉ♡♡♡、や゙らぁ♡♡♡♡」
「こっちはずっとお前のイキ顔見せられてんだ。止まるわけねえだろ」
 尾形くんの本気セックス♡♡ 腰の動きは早いのに、ちゃんと私の気持ちいところを攻めてくる♡♡時々腰を止めてからぐりぐりとねじ込むように掻き回すからまたそこでイッちゃう♡♡♡
 
「もう一人で使うなよ」
「ん♡♡、ぁ♡♡、んん゙♡♡♡、あっ、あんっ♡♡♡、」
「分かったのか?」
「っん゙〜♡♡♡、あ゙っ♡♡、は、はひっ♡♡♡、お゙♡♡、も゙ぉ♡♡、もうつかいませんっ♡♡♡、」
「ったく、もっとヤリたいなら言えよ。こっちも変に気遣っちまっただろうが」
 尾形くんにとっては、自分のいないところで一人で玩具を使われるって浮気みたいな感覚なのかな。ちょっと分かるかも。さっき尾形くんがえっちな動画を見てると思った時に怒っちゃったし。
 
 尾形くんが急におちんちんを全て抜いた。体勢を変えるのかと思って身体を起こそうとしたのに、もっと下へと屈んだ尾形くんが私のそこに顔を埋めている。
「ぇ、あ、まって、だめ♡♡♡、あんんん♡♡♡、やらっ♡♡♡、今だめ♡♡♡♡、だめなのそこぉ♡♡♡、おかしくなりゅ♡♡、むりっ♡♡♡、あっ♡♡♡、あ゙っんんんん♡♡♡♡、イ゙っく♡♡♡、」
 いつもとは違うタイミングのクンニで最後の確認をされている。自分の方が玩具よりいいって、身体に教え込まれてる……♡ねっとりと愛液をすくう舌遣いに悶絶していると、キスをするようにくっついた唇が音を立ててそこを吸う。
「あっ♡♡、ぁああ♡♡、あ゙〜♡♡♡、おがたくっ♡♡♡♡、またきもちぃの♡♡、くるっ♡♡♡、あ、あああ♡♡♡♡い、イク♡♡、イクぅ♡♡♡♡、」
 
 足を突っ張って達した瞬間、そこからぷしゅっ、と前兆もなく飛沫が散った。一瞬のことで何が起こったか分からなかった私は、それが潮吹きだと気づいて忘れていた羞恥が込み上げる。
「ごめん、初めてだったから、出るの分からなくて」
「吹かせるためにやったんだからいい」
 手の甲で顔を拭った尾形くんがなんて事ないように言う。そしてまた私に股がって、全く萎えていないおちんちんを埋めていく。ピクピクと波打っている中がそれだけで甘イキして、はぁ♡、はぁ♡、って息を乱しながら、眉を寄せて中の狭さに耐えている尾形くんを見上げていると、理性は情事の熱で溶けていった。抽挿が始まって、繋がったところからはさっきよりも卑猥な水音が響く。
「俺だけだろ。吹かせたの」
「うんっ♡、そう♡、あ゙♡、尾形くんだけっ♡♡、あっ♡、あ♡、しゅき♡、おがたくっ♡♡、しゅきぃ♡♡♡」
「っぐ、……そんな締めんなよ」
「だって♡♡、あっ♡♡、きもちぃからっ♡♡、かってにぎゅうってなっちゃう♡♡」
「……ヤバい」
 
 尾形くんが腕をおろして自分の身体を私とくっつけたから、本当に限界が近いのだと気づいた。唇を塞がれて舌を吸われていると、腰が動き始める。奥ごつごつされてる♡♡、息を吸いたいのに舌が絡められて逃げられず、キスをされたまま思い切り揺さぶられている。
「ん゙♡♡、ん゙〜♡♡♡、んんん♡♡♡、ぁん゙ん♡♡♡♡」
 必死でしがみついて激しいピストンを受け止めている間に、また絶頂へとせりあがってくる。お前は俺のものだと分からせるための、何度も子宮口を押し潰して孕ませるみたいなスパートの中で意識が飛びそうになる。ようやく唇が離れると今までで一番甲高く鳴いた。
「あ♡♡、あぁん♡♡、おがたくんっ♡♡♡、あっ♡♡、きもちい♡♡、イク♡♡、イッちゃっ♡♡♡♡、あっ♡♡、あ゙〜〜〜♡♡♡」
 尾形くんの腕の中で全身を痙攣させて絶頂した後、すぐにびゅるびゅるって中に熱が放たれる感触がした。搾り取ろうと中がうねっている。玩具に嫉妬した尾形くんに、本気セックスで思い知らされちゃった……♡長い射精が終わって恍惚とした余韻に浸り始めた時、私の胸に頭を乗せていた尾形くんが、「これ撮っとけばよかったな」と言って部屋の隅のお掃除ロボットに視線を向けた。
 
 
 長い夜の後、自分とする時なら使っていいと尾形くんが言った玩具たちは、結局どこか違う場所に隠されてしまった。でも、災い転じて福となすと言っていいのか、あの秘密を暴かれたおかげで前よりずっと尾形くんに抱かれるようになったから、お願いして尾形くんに引っ張り出してもらうことは多分ないかな。お互いに一歩引いていたところを通い合わせてくれたきっかけだから、いつかひょっこり出てきてくれたら嬉しい。




冷たいラブロマンスを抱いて眠る