絶対に童貞だとバレてはいけない尾形、男を抑える
「尾形に私の初めての相手になってほしいの」
向かいに座る女の申し出に、尾形は口にしたコーヒーを吹き出しかけた。大丈夫? と言って慌ててペーパーナプキンを寄越す彼女にお前こそ大丈夫かと正気を疑うが、ひとまず言葉とともにコーヒーを呑み込む。心臓がバクバクと音を立て、カップを置く手は震えていた。ゆったりとしたジャズが流れる老舗の喫茶店に相応しくない動揺を押し込めようと、尾形は店内を見渡す。奥の席では男女が一つのパフェを笑いながらつつき合っていて、結局それに居心地の悪さを覚えて目の前の彼女へと視線を戻した。「話したいことがある」と尾形をここに誘った会社の同期。二人でこの席についてから頼んだ食事を食べ終えるまで、尾形は彼女がとても緊張していることが分かったから促さずに待った。深い香りが立ち上るコーヒーを前にようやく本題を切り出した彼女は、頬を赤く染めながら尾形の出方を伺っている。
「相手って、お前、それはその……」
「うん、その相手」
自分の誤解を疑う尾形に彼女が答え、さらに羞恥が込み上げたのか俯いた。二人は長い付き合いだが、この類のセンシティブな話をするような関係ではなかった。仕事終わりに二人で飲みに行くことはあっても、こうして休日に会うこと事体が今日初めてだ。しかし、尾形が彼女からの会えないかというメッセージに躊躇う時間すらなかったのは、このような機会をずっと望んでいたからだった。
「男、いたって言ってなかったか」
「うん、でもそうなる前に別れちゃって」
宇佐美にどれくらい彼氏がいないか聞かれていた入社当時に「半年」と返していたのを尾形は覚えていた。踏み込んでほしくなさそうな彼女の様子を、思い出すたびに心を曇らせていたのだ。
「何でだ。そういう捨て方をするものじゃねえだろ」
腹の中に沸き上がる喜びを悟られないように、尾形は再びコーヒーを口にして彼女にたずねた。尾形の知る彼女は、軽い気持ちでこんなことを口にする倫理観の外れた女ではない。
「少し前に、違う課の人とデートしたの」
一呼吸おいて彼女が話し出す。それが誰かを尾形は知っている。彼女がその男と連絡先を交換したと知った時は気が気じゃなかったが、結局発展しなかったようで安堵していた。
「その人が同僚と話してたのをたまたま聞いちゃって、……あの感じだと処女だろうから面倒だって」
彼女が唇を硬く結んで俯く。自分が経験豊富のように振る舞いたい馬鹿な男のイキりだと、その手の猥談に居合わせたことがある尾形は知っていた。尾形にとっては自滅してくれてありがたい限りで、本音とは限らないとは教えるつもりはない。
「ずっと気にしてたけど、もう経験がないことが喜ばれるような歳じゃないから。早く捨てて、恋愛で重い女だと思われないようになりたいの」
尾形の頭に彼女を説得する言葉が浮かぶ。本当にお前を大事にする相手なら、歳など関係なく喜ぶはずだ。経験がないことを「重い」と受け取る男の気持ちなどそもそもその程度だと。しかし、傷ついてここまで決意した彼女の胸に正論が響くことはないのだろうと察した。断じてこのチャンスを失いたくないとかではない、と尾形は自分に言い聞かせる。
「なんで俺なんだ?」
「え?」
「俺を選んだ理由だよ」
「あ、そうだよね……。アプリで知り合った人とかはさすがに怖いし、じゃあ知り合いでって考えた時に、遊んでる人にはまたバカにされそうで嫌だなって。尾形なら口も硬いし程々に慣れてるかなって」
最後にバツが悪そうに笑った彼女に、尾形は呆れてため息を伸ばした。もっと可愛げのある理由を言えよ。俺が好きとか。そのまま俺と付き合いたいとか。手頃な相手だと思われていることに心の中で不満をこぼす尾形だったが、彼女の頼みを断れば今度は他の男に頼むのかもしれない。そんなことを指をくわえて見ているつもりはなかった。
「仕方ねえな」
「引き受けてくれるの?」
「……これからでいいのか?」
見開かれた彼女の目が潤んで輝き、尾形は前髪を撫でつけて平静を装った。不本意な理由なものの、尾形にこれきりで終わらせる気などなかった。自分以外考えられないとこの一度で分からせればいい。順番が逆になるだけだと、こんな形だがチャンスが訪れた尾形は彼女をものにする決意で満ちていた。
しかし、尾形は彼女に一つ誤解されている。
「本当にありがとう。よろしくお願いします」
「安心しろ。悪いようにはしない」
尾形も童貞だった。
*
尾形自身は、性的な経験がないことを引け目に思ってはいなかった。尾形の物心がついた時にはいなくなっていた父。その男を忘れられない母を見て育った尾形は、恋や性欲に溺れるなど馬鹿げていると信じていた。成人する頃には周りに性的な経験が重視される価値観が浸透していて、冷やかされたくはない尾形は適当にはぐらかしてきたが、そんな価値観に影響されてやるものかという意地もあった。
彼女だけだった。誰に対しても一歩距離を置いていた尾形に、同期の彼女は屈託なく近づいてきた。彼女への感情が忙しく動くうちに、恋をした尾形は初めて誰かに触れたいと思ったのだ。
煌々と光る看板が並ぶホテル街を彼女と歩きながら、尾形のその足取りは重くなっていった。自分にそれなりの経験があると信じて彼女が頼んだと知った以上、嘘はついていないがそれを否定しなかったことは実質騙したようなものだと自覚している。 ことさらに用心深い性格ゆえに、彼女との関係性を変えようと動くことに二の足を踏んできたのだ。最中にボロが出る自分は想像に容易く、これから彼女を抱くという高揚も具合が悪くなるような不安に呑まれていく。
初体験の相手に選ばれた時点で、わりと勝算が高いことに尾形は気づいていた。彼女はああ言ったが、付き合う可能性を考えられない相手でも身体を明け渡せるような女なら、とっくに処女ではなくなっているはずだ。これからもこんなふうに尾形に愛されたいと彼女が思える時間にすれば、関係は変えられる。しかし、自分の拙い行為で幻滅させて「やっぱり投げやりになるんじゃなかった」と思わせるような時間にすれば、気まずくなってその後の距離も遠ざかるだろう。そう危惧した尾形は、ここで打ち明けてしまった方がいいと考えた。「経験はないがお前が好きだから引き受けた」と今言えば、たとえそれが拙くとも彼女は自分に心が動くはずだと。一度足を止めようとしたが、それより先に彼女が「一個聞いてもいい?」と切り出した。
「何だ」
「尾形は、初めての子とはしたことある?」
「……まあ、あるが」
たった今、嘘を上塗りした。最適解を潰した尾形は心の中で呻いている。尾形の経験を頼りにしているのだろう彼女の不安げな目を見てしまったら、今さら真実を言えなかった。
「やっぱり最初ってその、痛そうだった?」
「多少はな。大丈夫だ。なるべくお前が平気なようにする」
知ったような口を聞いている尾形だが何も知らない。そして、自分とは違い尾形が過去に抱いた女(虚偽)に嫉妬などないのだろう彼女に、尾形は地味に傷ついた。勝算は高いと思った尾形だが、自分のちんぽにしか用がなさそうな彼女を本当にものにできるのか怪しくなる。しかし、より厳しくなった挑戦を前に、自分にはそれを助ける手段があることを尾形は思い出した。
道中で一番シンプルな外装のホテルに彼女と入る。部屋のパネルが並ぶロビーに「本当にこういう感じなんだ」と彼女が少しはしゃいで、尾形にも新鮮な光景だったがそれを悟られぬよう慣れたふりをして適当に選んだ。
入室して、周りを見渡して落ち着かない様子の彼女に尾形が声をかけてトイレに入る。中でスマホを取り出すと、Safariのタブから昨日閲覧したページを開いた。周囲の人間が最近になって日常的に頼っている話題のAIサービスに、「犬みてえな名前のやつになんでも聞きやがって」と尾形は懐疑的だった。しかし、昨日彼女からLINEが来た時に真意が分からず【同期の女から休日に二人で会うよう誘われたのは俺が好きだからか】【考えられる用件は何か】と質問していた。彼女と付き合える可能性を全肯定されて「ふん、まあまあ使えるじゃねえか」と認めたAIに、今日はこう質問する。
【経験のない女とのセックスで経験のない男が気をつけるべき実用的なことは?】
数秒の思考時間の後、それぞれの注意点と詳細な説明が一気に表示される。それを速読して頭に叩き込む尾形は、これからセックスするというよりは重要な仕事を前にした時のテンションに似ていた。トイレを出ると、彼女が神妙な面持ちでソファに座っている。【まずは会話をしてリラックスさせましょう】というアドバイスに従おうと隣に座る。
「その服、初めて見た」
「会社には派手過ぎるかなと思って着て行ってないから」
彼女が自分の履くフェミニンなシルエットの水色のスカートに視線を落とす。女性のファッションに興味がない尾形だが、彼女の着る服は何となく好みだと思っていた。
「似合ってる」
早速【服装や髪型などを褒めて相手の気分を高めるのがオススメです】を実践したところ、彼女が信じられないものを見るような目で尾形を凝視する。
「いつもの尾形じゃない」
「何がだ」
「だって尾形、人のこと褒めたりしないじゃん」
面白くないが否定はできない。人を褒め慣れていない尾形は、事実を率直に伝えようとするだけでもむず痒くなる。
「なんか意外。尾形もこういう時は優しくなるんだ」
そうじゃない、お前だけにしか言うかと尾形は思った。尾形が慣れないことを無理に実践しているのは、彼女に自分を選んだことを絶対に後悔させたくないからだ。
はにかんで笑う彼女に効果があったことを確信して、尾形は彼女の手の甲に自分の手を重ねた。「本当にいいんだな」と最後に確認を取る尾形に彼女が頷く。互いの視線が熱を帯びていき、尾形が恐る恐るもう一方の手で髪をかきあげるように彼女の耳に触れた。その愛おしい眼差しの引力に引かれるがまま唇を合わせる。【最初は短く、しだいに長いキスにする】というアドバイスの通り、一度目と二度目はそっと触れるだけ、三度目から深く重ねる。彼女の小さな舌に自分の舌先が触れて、びくりと身体を震わせた彼女に嗜虐心を覚えて中に入り込む。どう動けばいいのかはよく分からなかったが、口の中を撫でるだけで彼女が力が抜けるように背もたれへ倒れた。尾形がうっすらと目を開けて彼女を見ると、尾形からの刺激を受け止めるのに必死な表情で、今すぐにでも押し倒したく衝動を覚えた。ベッドに移動してからキスをすれば良かったと思いながら、彼女の頭の後ろに回していた手で頬を撫でる。
【キス中の手の位置は上から下に】【そして最後に胸を触る】とあった通り、首の後ろへと手を下ろした。くっきりと浮き出た華奢な鎖骨に触れてからさらに下ろそうとしたがそこで止まる。もう胸に触れていいのか? 手順としては間違いでないだろうが、【相手が初めてならなおさら焦らないことが大事】とあったことも覚えていて、自分が余裕なく焦っていると思われないかという懸念が尾形の動きを止めた。普通はもっとキスを繰り返してからの方がいいのか。正解が分からず逡巡していると、尾形の胸に彼女の手のひらが触れた。今度は尾形がびくりとするが、その手が下を滑ってシャツの中に入り込んでいく。
「待て待て待て待て」
慌てた尾形が唇を離して自分の肌に触れかけた彼女の手を握る。なぜ止められたのか分からずきょとんとした顔をしている彼女に、尾形は不覚にも可愛いと思ってしまったがそれどころではない。
「何やってる」
「え? 私からも触った方がいいかなって」
「……本当に初めてなんだよな?」
「尾形に任せっぱなしも良くないと思って、相だ……いや、調べてきたの」
それ、絶対犬みてえな名前で呼んでるAIだろと、彼女が最近何かとそのAIに尋ねているのを知っている尾形は額に手を当てる。しかし、自分がもたもたしていると彼女にリードされる形になってしまうと危機感を覚えた。再び主導権を自分に戻さなければと、「お前は任せてればいい」と言って、触れるだけのキスをする。
「だって、尾形のキス上手いから、焦らされてる気分になっちゃって……」
甘えるような彼女の上目遣いに、尾形は理性を保つので精一一杯だった。昨日は「まあまあ使える」という評価を下したAIサービスだったが、「やっぱりお前だけだ頼りになるのは」と心の友になりつつある。
尾形が彼女の手を引いて、整えられた白いベッドへ乗せる。そしてゆっくりとそこへ仰向けに倒すと、尾形が跨って再びキスをした。互いの唾液が絡みながら、さっきまで躊躇っていた彼女の胸に尾形の手が触れる。包んだ手のひらに少し力を込めただけで弾力のある柔らかさが伝わって、昂りを抑えながら唇を離して彼女の反応を見た。頬が上気した彼女が先を望む目をしているから、尾形が彼女の服をめくって肌を露わにする。白いレースがあしらわれた下着。包まれた双丘が飛び込んできただけで、尾形はため息が漏れた。早くその中を見たくて彼女の背中へと手を回す。そして後ろの留め具に触れたが、ここで問題が起きた。普段は器用な尾形だが、下着のホックがなかなか外れない。
「大丈夫?」
手こずっている尾形を彼女が心配そうに見上げる。尾形も一応構造は知っているのに上手くずれない。まずい、絶対これ童貞仕草だと思われるだろと焦って手を動かしていると、見かねた彼女が「ちょっと固いかな」と背中を起こした。彼女の手を後ろに回す姿に、尾形は自分が雰囲気を削いだことが情けなくなる。つい先ほど心の友になりつつあったAIサービスに「下着の外し方ぐらい挙げとけよ気が利かねえな」と心の中で悪態をついていた。
しかし、ホックの外れた彼女の下着が緩んで、彼女が肩紐を抜くとその膨らみに目を奪われる。自身に熱が集まっていくのを感じながら手を伸ばす。下着越しとは違う、手に吸い付く柔らかさに夢中になって揉みしだく。時おり彼女の服の上からのそこを眺めている尾形だったが、この感触を知ってしまったら今後ふしだらな目でしか彼女を見れないのではと恐ろしくなった。指の間で主張するように硬くなっている先端を弾くと、彼女が「あっ」とあえかな声を漏らした。それに尾形がさらに興奮を掻き立てられる。先ほどはAIに苛立った尾形だが、【胸の敏感な部分は強く触れない】という教えに一応従い、加減に気をつけながらもっと彼女に声を漏らさせようと優しく捏ねる。快感に耐えて彼女の反応を観察しながら、どんなふうに触れるのが一番感じるのかじっくりと試した。そして、まるで吸われるのを待っているかのような頂に、腰をかがめた尾形はその片方へと唇を運ぶ。
「あっ♡、あ♡、ダメ♡、きもちいっ♡♡、」
身を捩る彼女の姿に尾形の目が細まる。彼女の快感をもっと引き出すように舌で先端を転がした。そしてもう片方を指で弾くと、尾形の下で彼女の足がシーツを掻くように蹴る。尾形が愛撫を繰り返しながら彼女を見上げる。見たことのない快感に蕩けた女の顔をしていて、男を知らない彼女を自分がこうさせているという事実に尾形は悦びを覚えた。
「そんなに♡♡、あっ♡、っんん♡♡」
これならいける。あとは彼女の反応を見ながら進めていけば問題ないと、くびれ、腰となぞるように手を下に滑らせいった。スカートの横のファスナーを下ろして中からのぞく白い太ももに触れると、その脚が強ばる。
「怖いか?」
「ちょっとだけ」
「ゆっくりやる」
彼女の下着の上へと手を運んで指で触れた尾形は、下着越しからも分かる湿り気に驚いた。「濡れてる」とわざと口にすると、彼女が恥じらって膝を合わせる。しかし、尾形に「触っていい?」と聞かれた彼女は期待を灯した目で頷いた。尾形が彼女の両脚の間に自分の膝を入れて、下着の間に指を入り込ませる。しとどに濡れた割れ目の熱さに驚きながら、彼女の様子を見て上下に動かした。こんなに滑りがいいなら奥にくぐらせていけると思って入口を探した。指先が埋まるところを見つけた尾形は、少しだけ力を入れて奥へと進もうとする。しかし、彼女が先ほどまでの嬌声とは違う「うっ」と呻く声を漏らしたから動きを止める。
「痛いか?」
「少し……」
尾形も、初めて知るまだ固く閉ざされた女の狭さに、本当に自分の陰茎が入るのか疑わしくなった。処女膜というくらいだから膜が張ってるのだろうかと、その手の知識に興味を持ってこなかった尾形は分からない。簡単に「多少はな」などと言ってしまったことを後悔した。緩く指を前後させて慣らしていくが、この摩擦に何も快感がないのだろう。先ほどまでじゅうぶんにあった愛液が乾いていくのが分かる。15分は時間をかけろとAIは説明していたが、尾形はこのまま同じ動きを続けていてもほぐれていく感じがしなかった。潤滑ゼリーを使うことも一つの方法だとあったのを覚えている。しかし、それは自分の拙さに負けたようで尾形は選びたくなかった。どんなに時間がかかっても自分の力で彼女の身体を開きたいという意地で、太ももまでたくし上げていたスカートの中へのぞくように入る。そこから下着を抜き取って膝を上げると、彼女が「そんなに見ないで」と恥ずかしさから腰を引いた。尾形が逃がさないように太ももを抑えてから、そっとその秘裂に口つける。彼女が胸を愛撫していた時と同じ、刺激に我慢ならないような声を漏らした。
「そんないいかよ」
「んん、分かんない」
「いいならもっとやる」
「……じゃあ、して?」
快感への期待と恐れを浮かべた表情の彼女が手を伸ばして尾形に触れたから、尾形が恋人繋ぎのように指を絡ませる。そして待ち望んでいるそこに舌を這わせた。
「あ〜♡♡、あっ♡、あ♡、んん♡♡、ん〜っ♡♡、」
彼女の蜜口が尾形の舌の感触に悦んで濡れていく。腰を沈める彼女が、快感に耐えるように自分の手をぎゅっと握るのが尾形はたまらなかった。
「おがた♡、きもちい♡、うぅ♡、あ、あぁ♡♡」
「これ、好きなんだな」
「うん、好き♡、あっ♡、おがたの♡、ざらざらしてて♡、きもちい♡、ああっ♡♡、」
好き、という彼女の濡れた声が尾形の既に硬くなっている自身をさらに熱くする。AVの女の媚びた声には嫌悪感を覚えていたのに、彼女のことは自分の手でいくらでも鳴かせたいと思ってしまう。
「おがた、まって♡、なんか……♡、きちゃう、かも♡、一回、待って♡♡、」
「ダメ」
「なんでっ♡、あ♡、」
「なるべくお前が平気なようにするって言っただろ、また指入れたら痛いからしばらくこれな」
「無理っ♡♡、も♡♡、痛くないから♡♡、ダメ♡♡、あっ♡、っ、ああっ♡♡♡♡、」
彼女が背中を仰け反らせてつま先をぴんと張る。それが絶頂だとお互いよく分かっていないせいで、尾形が止めることなく舌を動かす。何度も身体に電流が走ったようにわななく彼女を可愛がっていると、その声が悶えるようなものに変わっていった。いつの間にかスカートの中に潜り込んでいた尾形が、ようやく彼女の手を離して指をくぐらせる。先程よりも柔らかくなったそこは尾形の指をぎゅうっと締め付けるが、ゆっくりと動かしてなんとか奥まで埋まった。「痛くないか?」と尾形が聞くと、ほどけた顔の彼女が「うん」と相槌を打つ。このあたりの段階もAIは詳細に説明していたが、尾形はそれに従うのも癪になっていた。俺が気持ちよくさせたい。二本目は腟に押し戻すような力が働いて、彼女の足も痛みに耐えるように力んでいた。彼女を少しでも楽にしたくて、尾形が割れ目の上にある小さな蕾を口に含みながら押し進めていく。
「あっ♡♡、そこダメ♡、ダメっ♡♡、あ゙♡♡、あ゙〜っ♡♡」
痛みと快楽の狭間に彼女が翻弄されながらも二本目の指を奥まで迎え入れた。尾形が慣らすように指を緩く前後させて、弱い動きで奥を突く。挿れたまま指を腹側に曲げるとまた彼女の甘い声が漏れた。
「おがた♡、もういいよ♡、いれて♡、あっ♡♡、もう♡、痛く、なくなったし♡」
「ダメだ。二本でもキツイのに、挿れたらこんなもんじゃないぞ」
「そうかな?」
「おい、どういうことだ」
「私は大丈夫だから。それより早く、ほしいの」
潤んだ瞳の彼女に煽られて、まだ準備を整えるつもりでいた尾形も「一度入るか試してみていいか」と折れた。中途半端に脱がせていた彼女の服を抜いて、尾形も裸になる。自分しか知らない彼女の生身の姿を、目に焼きつけるように凝視する。そして、その身体を抱き寄せて温度を確かめるように素肌を重ねる。彼女の顔を見ると、始まる前とは違う恍惚とした瞳は明らかにこの行為に感情が追いついていて、同じ感情をずっと拗らせてきた尾形は今までで一番情熱的な口付けをした。
頬が染まった彼女を仰向けにして、コンドームをつけた尾形が熟れた蜜口に押し当てる。先ほど指でしたように上下に擦ると、焦ったそうな彼女の甘い声が漏れた。自分を見上げる彼女の熱を乞う表情に、辛抱強いはずの尾形も我慢が効かず、腰に力をいれて奥へと入り込んでいく。先ほどほぐしたとはいえ、まだ狭いそこは男根を阻もうとして、彼女が痛みを逃すように浅く息を繰り返していた。腰を屈めた尾形が彼女の頬に触れる。
「力抜けるか」
「うん、」
彼女が尾形の首に腕を回す。こうやって甘えてこられると、尾形の無理をさせたくない気持ちの中にこのまま滅茶苦茶にしたい欲がじわりと滲んでくるから、ごまかすように頭を撫でた。
「いいよ、もっと挿れて」
そんな尾形を彼女がまた煽る。入りたくて苦しい尾形は、彼女の肩を抱いて奥まで自身を埋めた。中ほどまで入ったところで、一度腰を引いて再び落とす。
「これは痛いか?」
「ううん、思ってたより全然痛くないよ」
「そうか」
「尾形が上手いからかな」
彼女が微笑んでそう言った。彼女に童貞だとバレてはならなかった尾形にとって、何よりの言葉なはずだ。しかし、それが経験に裏打ちされた上手さだと信じられているのが、今は納得いかない。そして、彼女の微笑みが切なさを帯びているのを尾形は見逃さなかった。
「……初めてだって言ったらどうする」
「え?」
尾形が腰を引いて、緩く浅い律動を始める。尾形の台詞に戸惑っている彼女は、擦れる痛みどこではなくなっている。
「どういうこと?」
「お前しかいねえよ。俺が抱いた女」
「え!? そんなわけ、」
尾形の腰が徐々に深く埋まっていく。その動きにつれて彼女が痛みの中から快感を拾って、甘い声が漏れ出た。
「信じられねえかよ」
「だって、尾形にされること、全部気持ちよくて……」
「お前を落としたくてやってる」
「それって、あ♡、ああっ♡♡」
根元まで陰茎が埋まると、彼女の中が尾形の形を覚えるように締め付ける。それに堪えた尾形は、熱情に溶けた彼女の顔を見ながら抽送する。
「お前にしかやらない」
「あっ♡、や♡、待って♡♡、まだ動かないでっ♡♡、中、叩いちゃ♡、んんっ♡、やっ♡♡、尾形のこと、ぎゅって♡、しちゃうっ、あ、あああっ♡♡♡」
「あー、中きっつ。はぁ、どうだよ、処女卒業した感想は」
「ぁ、初めて、なのに♡♡、あ、んっ♡♡、きもちくてっ♡、あっ♡♡、ああんっ♡♡♡、どうしよ♡♡、あっ♡、尾形のこと♡、好きになっちゃう♡♡」
「もうなってんだろ」
「あ゙っ♡♡、ダメ♡♡、あ゙♡♡、ごめんなさい゙っ♡♡♡、んん゙っ♡♡、ん゙っ♡♡、すき♡、尾形♡♡、すきぃ♡♡」
「よかったな、好きな男で卒業できて」
お前は俺のものだと、尾形が彼女に教え込むように律動を早める。今日まで男を知らなかった彼女の身体は、とめどない快感に痛みも忘れて尾形の動きに合わせて腰を浮かせていた。
「あっ♡、くる♡♡、あ♡、これ♡♡、いく♡♡、あ♡、あああっ♡♡」
「初めてなのにイけるんだな」
「だってっ♡♡、全然、がまんできにゃ♡♡、あっ♡♡、ん♡♡、尾形のこと♡♡、好きって思うと、♡♡、よけいきもちいっ♡♡、あっ♡♡、だめ♡♡、まって♡♡、まっ♡♡、あ♡♡、ああっ♡♡、あ♡♡、んんっ♡♡、あああっ♡♡♡――」
喘ぎ混じりの彼女の言葉に、尾形は我慢できずに余裕なく腰を打ち付ける。自分の腕の中で彼女の身体ががくがくと痙攣して硬直する。達したのだと分かると、のぼりくる吐精感のまま彼女の中に勢いよく出した。何度も脈打ちながら吐き出してもまだ求め足りず、半ば放心した彼女を起こしあげて、自分の足の上に跨らせる。彼女がよく分からないまま尾形に抱きつくと、正常位とは違う奥まで届く陰茎に鳴いた。尾形がまた夢中になって彼女の腰を揺さぶる。
「だめっ♡♡、まだイ゙っ♡♡、お゙っ♡♡、あ゙〜〜♡♡♡、あ゙っ♡♡、きもち♡♡、いっ♡♡、あ゙っ♡♡♡、んん゙♡♡、ぁ、あ゙ぁあ♡♡♡」
「才能ありすぎんだろ」
「おがたにだけだもんっ♡♡♡、んお゙っ♡♡、あ゙っ♡♡♡」
「あ? 他があるわけねえだろ」
「そういういみっ♡♡、じゃ♡♡、あ゙っ♡♡♡、またイぐっ♡♡、イぐうう♡♡♡♡」
尾形が彼女の身体を貪るように腰を突き上げると、しがみついた彼女が背中を逸らして吠えるような淫らな悲鳴をあげる。それはもう、初めての者同士の男女のセックスには到底見えないだろう。しかし、恋に溺れた二人が快楽に溺れていくのは容易いことだった。