不可抗力で乳を触ってしまう展開




数日ぶりの休日、天気もよく穏やかな時間の中で午前が過ぎた頃、陽気につられたのかまたいつもの気まぐれなのか、クラウドは散歩に連れ出されていた。まったく、出会った時からじっとしていない奴だが何年経っても変わらずに大人しくしている気配がない。しかしそんな所も踏まえて惹かれてしまったのだから、こうして無理矢理連れ回されていても悪い気はしなのである。これも何年経っても変わっていない、重症だ。
どちらにせよ二人ともそれでうまくいっているからしてそれについては深く考えないことにして、ゆっくりと過ぎて行く午後を歩いていた。散歩と行っても行くあてもなく歩きまわるだけでなく、目的は買い出しもあった。この際買い込んで荷物はクラウドに持たせてしまおうという魂胆が丸見えである。それについてもクラウドは文句は無い。女性に重たい物を持たせようなどとそこまで無神経ではないつもりだ。何より自分が大事に大事にしている女性に、自分も使うだろう日常品の補充を押し付ける気もなかった。
何が少なくなっていただとか、これはどこそこが安いのだとか、いつの間にかすっかりこの辺りに詳しくなっている彼女についていく。その道中も落ちつきなく目に入るものを端から捉えているのではないかと思うくらいにキョロキョロしているのは見ていて危なっかしい。これも昔からだが、彼女の興味範囲は自分と比べられないくらいに広かった。初めて目にするものは勿論、それがどんなものなのか知っていても楽しそうに向かって行くのだ。この世界で彼女が初めて目にした物と言えばミッドガルの乱雑した廃墟だとか廃材らしいのだが、それすらも見た瞬間わくわくしたなどと言っていた。それを思い出すと、今この街で見るものはそれは魅力的に見えているのだろう。街の外に広がる荒野や遠くで見た草原に木々が生い茂る森、刺すような寒さを体験した雪山。そのどれもが彼女にとっての興味対象である。まとめてしまうと、彼女はどんなものにも興味深々なのだ。
だからこうして何気なく歩いている今も注意は周りに注がれている。それがクラウドの悩みの種でもあった。何度言い聞かせてもこいつは言うとおりにはしない。

「また転ぶぞ」
「またってなんだ、そんなに転んだ記憶はない」
「俺はお前が転んでるのを数えきれないくらい見てきた」
「はぁ?なんだよじゃあわたしが転んだ場所全部言ってみろ!!」
「ミッドガル、ミッドガルエリア周辺、カーム、グラスランドエリア、ジュノンエリア……」
「嘘だそんなに転んでない!!ていうか行ったとこ全部言ってるだけじゃん!」
「違う、ミスリルマインでは転んでない。モンスターに突っ込んだんだ」
「そんな違いはどうでもいいわ!!っとに細かい奴だな!!」

どれもこれも鮮明に転んでいる姿を思い出せてしまうクラウドは否定する声に淡々と返していた。一々覚えていないくらい転んでいるということじゃないのかと、やはりどこでも勢い余って転んでいる姿を思い浮かべた。
と言っている端から、クラウドに言い返す為に見上げて歩いていた足元がふらついた。彼女のいつものおかしな声を聞きながら、言わんこっちゃないと呆れつつも手を伸ばす。こうして支えるのも何度目だろうか、覚えていない。

「だから言っただろ」
「う、うるさいな!」

反論の余地がない状況で、後ろからクラウドに支えられている。本当にそんなに転んでいる覚えはないのだが、今は何を言っても効果がないと間の悪い躓きに憤りを感じた。
それも束の間、クラウドが素早く手を放した。いつもならゆっくりとしっかり立たせてから離れて行くというのに。いつもならなんて思っている時点でいつも転んでいるとは気付かないのはこうしていつもクラウドに助けられているからだとは思わないのが彼女の前向きな所である。
パッと離れたクラウドを不思議に思って振り向くと、何だかバツの悪い表情をしていた。あまり変わらない顔だが、それを読みとれるくらいには長く一緒に居る。何かあったのかと窺うが目が合わない。

「なに、どしたの?」
「何でもない」
「いや何でもなくないでしょ。何だよ言えよ」
「いいから、行くぞ」
「え〜!なに気になる!!なになになに!!」

喚かせたままクラウドは先に歩いていってしまう。一体何がそうなったのか、意味も分からずについていくが今度はクラウドが珍しく足元をふらつかせた。躓いたらしい。

「ちょ、何してんの!?大丈夫!?主に頭が!」
「うるさいお前が悪い」
「は?わたし何もしてないじゃん」
「ちょっとは大人しくしろ!何で俺がこんなに困らないといけないんだ」
「意味わからんキレかたすんな!!チョコボ化進んでんじゃねーの!?」
「チョコボは今関係ない!お前がもっとしっかり足元に気を付けて歩けば済むことだ!」
「だから転んでないってば!!」
「俺がいつも転ぶ前に捕まえてるからだろ!でもさっきのは……違う俺は悪くない!」
「何の話だよ馬鹿チョコボ!」
「だから、支えようとしたら手が胸に触っただけだ!」
「ああ!ラッキーハプニングに遭遇したわけですか!でもわたしのじゃアンラッキーでしかないな!って誰のおっぱいが小さいってんだちくしょう!!」
「自分で言ったんだろ!」

往来での口喧嘩もこれが初めてではないが、今は内容が悪かった。お互いにこうした口論を繰り広げると周りが見えなくなるのはいつものことである。頭に血が上りすぎだ。
そうしてようやく周りの目に気付いたのは運良く買い物を思い出したからだった。



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