小湊春市

「重い…」

なんだ、この量は。



先程の眠かった授業がやっと終わった時のこと。


私は運悪く先生と目が合ってしまい、案の定、「これ、資材室に運んでおいてくれ」と荷物運びを命じられた。



手伝いを頼もうにも倉持には「ヒャハ、永瀬ドンマイ(笑)」と笑われ、御幸に目を向けてみるも時すでに遅し。

彼は愛しのスコアと2人っきりの世界に入っていた。



仕方ないと諦め、重い段ボールを持って向かった。



そして現在、目の前の階段を前に絶望する私。

絶対登り切れない。登り切れても次の授業に間に合う自信がない。
「やだなー」と思いながらもこの階段の先にある資材室を目指して一歩を踏み出した。



足元が見えない中ゆっくりと登っていくと、


春「あれ、菜穂先輩?」


後ろから自分の名前を呼ばれた。



「春っち?」

春「あはは、はい。そーです。」

「え、ちょっ」



笑いながらヒョイっと私が持っていた段ボールを持つ春っち。
そのスマートさはやはり可愛くても男の子といったところか。



「い、いいよ!今移動教室なんでしょ!?」

春「どーせ資材室なら通り道ですから。」

「やばい春っち、惚れそう。」

春「あ、それは結構です。」

「春っちでさえも辛辣…」



さっきまであんなに苦労していた階段をあっという間に登り切れた。
さすがだなーと感心する。


すると春っちがこちらを向いて「そういえば…」というので私も彼の方を見やる。


「ん、なーに?」

春「今日、栄純君が昨日の練習で菜穂さんに受けてもらったって、興奮しながら報告してきたんですけど…。」

「うわー、沢村に口止めしておくの忘れてた…。」

春「菜穂先輩、野球経験あったんですか?」

「いや、シニアチームにマネージャーとしていたときにちょっとね…。」



あまりみんなに知らせるつもりはなかったことなので
少し曖昧に答える。


昨日沢村に言っておくのを忘れたのはやらかした。
この分だと沢村のことだから1年生には既に言いふらしているだろう。


これ以上広まってしまうのは個人的に避けたい。




「春っち…沢村にも他の子にもそのことは口止めしておいてくれないかな…。」

春「いいですよ。」


思いのほかサラッと頷く春っちに少し驚いて彼の顔を見ると、私の方を見て彼は笑っていた。


春「その代わり、もう少し詳しくお願いします。」




◇やはりあの人の弟◇




「あの…詳しくと言いますと…」

春「詳しくです。」

「はい…」

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