「す、凄い!!なんですか今の!!」
緑谷くんの言葉に、ありがとう。と返しながら答える。
「……周辺の水分じゃ足りなかったから、自分の水分も使って炎を消してみた。…………お陰でバキバキに乾燥しちゃったけど。」
いててて……と攻撃を食らってないのに左腕が痛む。ここまで水分取らなくても良かったな。
……それより。
ファイアの捕獲は先輩サイドキックに任せて、エンデヴァーの元へと向かう。
しかし
「…………えん、……でばー…………?」
「あらら。遅かったねヒーロー名。」
シューッシューッと消える寸前のような弱い炎を灯し、地に膝を着いているエンデヴァー。
遅かった………………遅かった!!もっと迅速に倒せたのに、何を私は、
「それじゃあサヨナラだエンデヴァー。」
奴が手をかざし、そこから現れた霧が
「ふふ、よく見てもらおうね。」
奴が手を動かした瞬間、1本1本の針のようになり、エンデヴァーに突き刺さる。
「っ!!エンデヴァー!!!」
「…………親父…………!!」
「あははははははははは!!!!そう!!それが、見たくて、ごはっ!!」
奴の腕を殴りつけた。落ち着け、落ち着け。感情のままに動くな。大丈夫、骨を折ったから満足に動かせないはず。あの攻撃は封じた。
「……エンデヴァー。」
「…………………………。」
「エンデヴァー!!!!」
「…………ヒーロー名、…………。」
「必ず連れて帰ります。生きてください、死んだら駄目です。こんな所で、死んで良い人間じゃない。」
「っ酷いなぁ…………まだ話してたのに…………っつつ。」
「次動いてみろ。次はお前の首を折る。」
拳に圧力を溜めながら睨みつける。
「…………駄目だな、分が悪すぎる。今日のところは帰るよ。ファイア?帰るぞ………………って……。」
「あの女なら、既に刑務所行きだ。顔を殴りつけておいたから、鼻や頬骨色々折れて見るに堪えない顔なんじゃないか?」
「…………お前…………よくも……!!」
よくも?
「……そんなの、こちらの台詞だ青二才…………!!」
ゆらりと折れてない方の腕を持ち上げたエンジン。するとその手を私にかざして、
霧が針になるのと同時に、私はエンジンの鳩尾を殴った。
「ぐあっ!!」
「っぐぅ……!!」
何本か体に針が刺さって声を上げる。大丈夫、まだ、まだ動ける。
皆を帰さないと、エンデヴァーを、連れ帰らないと。
「…………お前…………覚えてろ、次は……次はお前を殺しに来るからな…………。」
痛みに悶えていたエンジンは、そんな言葉を残して霧の中へと消えた。
それを見届けると抜けた力。肩や背中に刺さっている激痛から、よろける。
「ヒーロー名!!」
すると受け止めてくれた焦凍くん。
「しょ…………とく…………。」
「……悪い、何も、何も出来なかった…………!」
「……それで、…………良いの…………。」
あの場面、高校生である彼らが前に飛び出ればきっとエンジンは彼らを狙っただろう。
だから何もしなかった。それが1番良い選択だ。
焦凍くんに支えられながら、救護班の元へと向かう。
エンデヴァーは既にサイドキック達によって運ばれたようで、姿は無かった。
次はお前を、かぁ。
次の予告があると言われてしまって、また所長であるエンデヴァーが倒れてしまったので、彼らのインターンはこれ以上の続行は不可能だろう。
なんとも苦い経験をさせてしまって申し訳なくなる。
「…………ごめん、……ね……。」
焦凍くんの肩に寄りかかりながら、私は意識を飛ばした。