『来たぞ!!』
その言葉に弾けるようにして気持ちが浮上する。
場所を無線で聞くと、事務所から割と近い場所で挑発的なエンジンに苛立ちを覚える。
「すぐ向かいます、プロヒーローやサイドキック達も現場に出来るだけ」
『いや、それが……!!』
「…………何かあったんですか?」
『っクソ!!こいつ、……ぐあっ。』
「!?……先輩!?先輩、何が!!」
「どうした、ヒーロー名!!」
「応答が途切れた……最後には呻くような声まで……。」
「まさかエンジンに……?」
「わからない……けど、とにかく現場へ急行。一緒に来て、バーニン。」
「あぁ!!」
◇
「…………何これ。」
無線で聞いた場所に来ると、そこにはヴィランとうちのサイドキック達が応戦中だった。
しかしヴィランの人数が圧倒的に多く、こちら陣営が押され気味だった。
「あ?やっと来たなヒーロー名!!待ってたぜ?」
聞こえた声にバーニンを連れて攻撃を避けると、そこに突き刺さっていたのはいつかの針状の水。
「…………あいつらは。」
「ん?俺の仲間!ほら、俺達って現代社会から見たらゴミみたいなもんだろ?」
「………………。」
「でもゴミみたいな扱いされてもさ、納得いかない連中って案外多いんだよ。ほら、ここにいるヤツらはみんなそう。」
「…………だから?」
「だから、俺達は思うのさ。俺たちをゴミ扱いするヒーローに卑怯でもなんでも良いから一矢報いたいってさ。」
「それで、俺たちが目をつけたのはエンデヴァー。ナンバーワンを倒したら、世間がどう思うか。どれだけ俺達に注目するか!!想像するだけで楽しかったね。」
「それで俺達は成功した。お前らは俺がエンデヴァーにちょっかいかけ続けてるだけにしか見えなかっただろうけど、よく考えてみろよ?なんで他のヒーローは来なかった?サイドキックも駆けつけなさ過ぎだろ!?」
その言葉に、私は声を失う。
そういう事、だったのか。
要するにエンデヴァーの前にこいつが現れてた時、他のプロヒーローやサイドキック達はこいつの仲間達が足止めしていたと言うこと。
こちら側は関連性なんて知らないから、全てそれぞれで現れたヴィランとして事件の処理をしていた。
…………完全に、出し抜かれていた。
「その結果!!俺はエンデヴァーを病院送りに!!お前もな!ヒーロー名!!でもな、俺たちの大切な仲間。ファイアをお前らにやられた。…………この仇は討たなきゃなんねぇ。だから今日はお前だヒーロー名。」
「…………今回も、プロヒーロー達は足止めされてる、と。」
「勿論!!お前と駆けつけたプローヒーローをまとめて倒せるほど俺は自分の力を過信してねぇ。俺は俺の仕事を。あいつらはあいつらの仕事を。…………そんで今日もお前を病院送りに、…………なんなら殺して!!明日の新聞一面!!俺らとお前の話で埋めてやろ」
言い切る前に拳を奮う。
「バーニン、ここに来れる人少なそうだから民間人の避難を。」
「でも……あんた1人じゃ!!」
「…………信じて、バーニン。」
眉間に深い皺を寄せ、何かを言いたげな顔をしているバーニン。
「…………わかった、無理だけはしないでよ!!」
「うん、ありがとう。」
バーニンを見送り、目の前に立つエンジンと向き直った。
そしてこの時、多くのメディアを通して雄英の皆や、轟家の皆。エンデヴァーや、焦凍くんに見守られながら、私達の戦いは始まった。