私の話

懐かしい、懐かしい夢を見た。


可愛いね、可愛いね。周りにそう言われ続けて言われ慣れた頃。


聞かれたんだ、将来は何になりたい?アイドル?女優?タレント?


そして答えた。ヒーローになりたいって。


その時その人は、口を開けたまま固まってしまった。


そして言ったんだ、可愛いのに勿体ないって。


でも私はヒーローになりたかった。だってかっこよかったんだ、笑って人を助けるヒーローが。


なのにもっと他の道があるって、個性だって強い訳じゃないんだからって。


あまりに強い否定に、私は可愛いとか、容姿に関わる言葉を言われることがいつの間にか嫌になっていた。


なんで可愛かったらヒーローになっちゃいけないの!?そう言い始めた頃、その人は現れなくなった。


あの人は誰だったっけ。


それからは、周りの言葉なんか無視して個性の使い方、体の鍛え方を学んで自力で1つずつ登った。


そして雄英に入って、インターンでエンデヴァーと出会った。


なんて酷く冷たい瞳。この人の元へ行けば、こんな自分ともさよならできるって。こんな風に自分を隠さずとも、生きられるようになるって思って彼の元へ行った。


卒業してからも彼の元へ行ったが、ただ傍にいるだけでは足りなくなった。


わからなかったんだ、なんでそんなにも冷たい瞳をしているのか。


仕事は出来るし、コミュニケーションだって私が下手なだけで向こうは普通に出来る。


じゃあなんで。なんで、なんで。


そこからは探究心のままに動いた。


皆、初めは酷く冷たい態度をとった。冷さんには怯えられた。冬美ちゃんには家を出るよう言われた。夏雄くんには酷く睨みつけられ、暴言まで吐かれた。


それでも、私は知りたかった。何を?エンデヴァーの強さと冷たさを。


でもそれはその内、…………焦凍くんの成長とともに変わっていった。エンデヴァーは冷たさから温かさのある瞳へと変わり、轟家も歩み寄り始めた。


それでも私は探究心が止まらなかった、何を?何を知りたくて?


可愛いのに勿体ない。


その言葉で私は何かを失った?それを言ったのは誰だったっけ、現れなくなって清々したのは誰だっけ。


…………私はここまで、どうやって生きて、


あの人は。


………………あぁ、そうだ。あの人は、私に可愛いと言い続けたあの人は


母親だ。


そして母は私をおばあちゃんに預けて、二度と目の前に現れなかった。


なんで?愛されていなかったから?ヒーローになりたいとうるさかったから?違う。


今ならわかる、わかってしまった。


母はヒーローだった、父もヒーローだった。


しかし父は殉職した。そして母は危険な世界へ私に来て欲しくなかった。


だから、だから。


自分といると、ヒーローになりたいという欲求が高まるから。そんな理由で目の前に現れなくなった母親。


そして老衰により亡くなったおばあちゃん。


葬式なども全て済んだ後、親類はあなただけなので。そう言われて書類の手続き等もした。


その時気づいた、母はもういないのだと。


私が知らないところで、私が知ろうともしなかったところで亡くなっていたのだと。


別段悲しみは無かった、ほとんど私にとっての母はおばあちゃんだったから。


それでも、少し後悔はしてる。


母の気持ちに寄り添っていれば、今こんなにも飢えてなかったのかもしれない。


異常なほどの探究心。轟家への干渉。


それらは轟家が歩み寄るに連れて、探究心も薄れていった。


理由は、今となってはハッキリしてる。


家族愛を知ることが出来たから。


おばあちゃんは大好きだった、それでもおばあちゃんでしか無かった。


お母さんもお父さんも、兄弟もいる。そんな家の家族愛にきっとどこかで憧れていた。


…………寂しかったのかもしれない。


全てが繋がり、そしてやはり後悔した。


私の手を離した母の手を、いとも簡単に離したあの頃の私。


あの手を、もう少しだけでも繋いでいたら。母の愛に気づけたならば。


今はもっと違ったのかもしれない。

top