「ヒーロー名!!ヒーロー名!!!」
「いや!!駄目よ!!ヒーロー名!!」
「しっかりしろ!ヒーロー名!!!」
ヒーロー名の体に繋がれていた数少ない機械から、異常を知らせる警報が鳴ると、騒々しく入ってきた医者や看護師。
聞かされたのはただ1つ、大変危険な状態です、と。
様々な技術を試しているようだが、一向に警報は鳴り止まない。
なんで、なんで。なんでだよヒーロー名……。
「起きろよ!!ヒーロー名!!」
頬を伝っていく涙なんかにかまけている暇なんてなく、目の前で血の気を引かせているヒーロー名に叫ぶ。
「こんな所で死ぬな、ヒーロー名!!」
少し前にやって来た親父も、ヒーロー名に向かって声をかけ続ける。
お母さんはついに涙腺が決壊し、姉さんと共に嗚咽混じりに泣き出してしまった。
ほら、悲しませんなよ、俺達のこと大事なんだろ、守るって言ってくれただろ、なぁ!!
「勝手に1人で、…………遠いとこに行かないでくれよ…………!!」
俺を、置いていかないでくれよ。
「あんたにまだ教えてもらいたいこと沢山あるんだ、もっともっと話したいことだってある、やりたい事だって、一緒に過ごす時間だってなんにも足りない!!」
処置をする医者たちの傍ら、ヒーロー名の手を握り懇願するように額に寄せ俯く。
「頼む…………起きてくれよ……!!」
願っても鳴り止まない警報。嗚咽が漏れて、苦しくなり俯いていた顔を上げると見えたのは、
静かに目尻から涙を流すヒーロー名だった。
「…………っ名前!!!」
◇
「…………っ名前!!!」
………………焦凍、くん?
重たくて仕方の無い意識の中、彼の声が聞こえた気がした。
また名前を呼ばれた気がする、…………気の所為、かな。
「起きろ!!!名前!!」
や…………やっぱり焦凍くんだ。起きろって…………起きようにも体が重すぎて、起きられない。
「戻ってきてくれよ!!名前!!」
………………戻る場所が、あるの?
どこに?
轟家にはもう役目なんてなくて、
「俺の事、傍で見ててくれよ……!!」
…………焦凍くんの、傍。
………………………………あぁ、そうだ。
私は起きなくちゃ、寝てる場合じゃない。
エンデヴァーの元でもう少し修行しないと、自立する日はそう遠くは無いんだから。
焦凍くんはあとどれくらいで卒業なんだろう、待たせるのは忍びない。寝てる暇なんて、どこにも無かった。
彼との、焦凍くんとの日々を夢じゃなくて現実にしなければ。…………ちゃんと彼の想いに応えないと……!!
私は重い体を無理にでも起こし、そして開けられなかった瞼を力技で開いた。
「………………あ………れ………………。」
目を覚ますと沢山の人、お医者さんや看護師さんに囲まれていて困惑する。あれ、焦凍くんは…………げ、げんちょ
「ヒーロー名!!!」
「っ!?」
抱きつかれるようにして何かが襲ってくる、な、なに、と思ってみれば赤と白の見間違えるわけの無い、何度も名前を呼んできた彼だった。
「……ヒーロー名…………っ良かった……本当に……!」
「!!?」
焦凍くんの後ろから見えたのは、ぼろぼろと泣いてしまっている冷さんと冬美ちゃん、そして鼻を赤くしている夏雄くんだった。え!?
そう言えば焦凍くんもなんだかぐすぐすと言ってる、な、泣いてる……?
「………………やっと、目が覚めたな。」
え、エンデヴァーまで!?とと、轟家オールスターズ……!?
なんでここに、とかあれから何が、とか言いたかったのに声が出なくて困惑する。
お医者さんの話では数ヶ月眠っていたので、声帯や筋肉やらなんやらとりあえず上手く動かないらしい。
…………………………数ヶ月!!?
想像を遥かに超えてくるほどの長い期間に驚いてしまう、ね、寝すぎじゃん……!そりゃ焦凍くんも起きろって言うよ……!!
なんでこんな状態になったのかと言えば、難しいことはよくわからないが人間としてやられてはまずいとこを色々と損傷して病院に来たらしく、その修復と治癒に体力を消耗し続けていたのでは、との見解だ。なるほど?
確かに朧気な記憶ではエンジンに色んなところを串刺しにされた気がする、むしろあれだけ血を流しておいて怪我しておいて、損傷だけで済んだのは救いだった。治るものばかりで良かった。
…………と、私は現状をとりあえず飲み込み納得したが、一向に泣き止まない轟家。
困ったようにエンデヴァーを見上げると、彼もまた困ったように笑っていた。