特別講師

じゃがいも、皆じゃがいも。そう、じゃがいも。


「今日は特別講師としてヒーロー名に来てもらった。皆挨拶しろぉ。」


「「「お願いします!!!」」」


「ぅおっ…………お………………お願い、します。」


「お前が1番元気ねぇじゃねぇか。」


イレイザーに蹴りを入れられて、うっ!!なんて出てしまい恥ずかしいし痛いしで既に泣きそうだ。


「せ、先生!!質問良いですか!」


「なんだ。」


「先生とヒーロー名ってどういう関係ですか??」


「確かに、気になった!!」


「仲良さそうだよなー!」


蹴りを入れられてるのに仲良さそうって。先輩どんな教育してんの??


信じられないものを見るような気持ちで見ていると、何故かバレて仮面ごと頭を掴まれる。


「い、いだだ……!!!」


「こいつは俺の雄英時代の後輩だ。エンデヴァーの事務所に入ってからも何かと縁があってな。」


取れる!!仮面が取れる!!!


「せ、せんぱ……!!!イレイザー!!」


「おぉ、デカい声出るじゃねぇか。腹から声出せ。」


「………………………………。」


「よし、じゃあとりあえずはヒーロー名の個性を紹介がてら…………そうだな、緑谷!!お前ヒーロー名に1発入れてみろ。」


「え!?ぼ、僕!?」


緑谷、とは。声を上げた彼を見ると、いつかの心優しき生徒だった。


「あぁ、とりあえず組手だ。緑谷はとりあえず1発入れることに全力出せ。」


「は、はい!!」





「準備は良いな?」


本気は出してはいけないだろう、あくまで訓練。訓練。


「はい!!」


「……はい。」


「それでは、開始。」


それに私も彼の個性はしらな


「っ!?」


早っ!?思わず距離を取る。なんだあれ、早い。増強型?にしても使い慣れてるな!!


「すいません、本気で行きます!!」


彼の攻撃を避けると、地面に大きなクレーター。……クレーター!?!?


口をあんぐりと開けてしまう。今どきの高校生こんなに凄いの?私雄英いた時もっともっと弱かったのに。


凄いなぁ、頑張ってるんだろうな。


そんな気持ちで彼の動きを眺めるが、


「ごめんね、仕事だから。」


拳を彼の鳩尾へと突っ込む。


「がはぁっ!!!」


そのまま彼は吹っ飛び、遥か彼方で動かなくなった。





「えー、今のがヒーロー名の個性です。」


「何が!?!?」


「全然理解出来ないんですけど!!」


「……げほ……単なる、増強型では、無い。ですか?」


緑谷くんの言葉に頷く。


「そうだ。ヒーロー名の個性は水流。水を操る個性。しかしながら水のある場所でしか使えない個性なので、基本的にはあまり使えない。」


「……ヒーロー名が水使ってるのなんか見たことねぇな。」


「確かに、いつもぶん殴っておしまいだものね。」


「そうだ、ヒーロー名は基本的には殴ったり蹴ったりでヴィランを退治する。そのパワーはどこから来るのかと言うと、」


言うと。イレイザーは私のマントをひっぺ剥がした。


「!?!!???」


「見ろ、この筋肉を。」


「す、……すげえええ!!引き締まってんなヒーロー名!!」


「必要な分だけ筋肉を……。」


「だからあんな風に素早い攻撃も……ってえ?もしかしてワンパンってマジでヒーロー名の筋力で出来てんの!?」


「それは違う、個性も使ってる。だが基本はこの考えてつけられた筋肉だ。」


へええ!すっげええ!!なんて言って皆にじろじろ見られる。は、恥ずかしい……!!!


マントの下は基本的には動きやすいよう身軽な格好にしていて、露出している面積も広い。なので筋肉を惜しみなく見せているようになってしまって、私はセクハラが怖い。露出狂とか言われたらどうしよう。


「そして、この筋肉と合わせて使うのが先程の水流の個性。ヒーロー名は空気中に含まれている水分を凝縮し、水圧を生み出して、その圧を拳や脚に乗せて相手にぶつけている。」


「…………わかる?」


半分ぐらいの生徒が頷き、半分ぐらいが首を傾げている。だ、だよねぇ。


「じゃあここまで聞いてから、もう一度見てみよう。」


今度は誰でも良いが…………。とイレイザーは言ったので、私はすかさず


「しょ、焦凍くんは駄目ですか。」


「轟?……まぁいいだろう。轟、準備しろ。」


「……!……はい。」


良かった、彼には訓練つけると約束したのだ。こんな私の個性の説明で時間食ってる場合じゃない。少しでも彼と手合わせをしてあげたい。


「……ありがとう。ヒーロー名。」


「……え?」


聞こえた言葉に振り返れば、嬉しそうに微笑んだ焦凍くん。


そ、………………そんな顔、無作為に振り撒いちゃ駄目だよ!!!


私は今度、冷さんと冬美ちゃんに文句を言ってやろう。そんな気持ちで彼の氷壁に向かって拳を放った。

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