じゃがいも、皆じゃがいも。そう、じゃがいも。
「今日は特別講師としてヒーロー名に来てもらった。皆挨拶しろぉ。」
「「「お願いします!!!」」」
「ぅおっ…………お………………お願い、します。」
「お前が1番元気ねぇじゃねぇか。」
イレイザーに蹴りを入れられて、うっ!!なんて出てしまい恥ずかしいし痛いしで既に泣きそうだ。
「せ、先生!!質問良いですか!」
「なんだ。」
「先生とヒーロー名ってどういう関係ですか??」
「確かに、気になった!!」
「仲良さそうだよなー!」
蹴りを入れられてるのに仲良さそうって。先輩どんな教育してんの??
信じられないものを見るような気持ちで見ていると、何故かバレて仮面ごと頭を掴まれる。
「い、いだだ……!!!」
「こいつは俺の雄英時代の後輩だ。エンデヴァーの事務所に入ってからも何かと縁があってな。」
取れる!!仮面が取れる!!!
「せ、せんぱ……!!!イレイザー!!」
「おぉ、デカい声出るじゃねぇか。腹から声出せ。」
「………………………………。」
「よし、じゃあとりあえずはヒーロー名の個性を紹介がてら…………そうだな、緑谷!!お前ヒーロー名に1発入れてみろ。」
「え!?ぼ、僕!?」
緑谷、とは。声を上げた彼を見ると、いつかの心優しき生徒だった。
「あぁ、とりあえず組手だ。緑谷はとりあえず1発入れることに全力出せ。」
「は、はい!!」
◇
「準備は良いな?」
本気は出してはいけないだろう、あくまで訓練。訓練。
「はい!!」
「……はい。」
「それでは、開始。」
それに私も彼の個性はしらな
「っ!?」
早っ!?思わず距離を取る。なんだあれ、早い。増強型?にしても使い慣れてるな!!
「すいません、本気で行きます!!」
彼の攻撃を避けると、地面に大きなクレーター。……クレーター!?!?
口をあんぐりと開けてしまう。今どきの高校生こんなに凄いの?私雄英いた時もっともっと弱かったのに。
凄いなぁ、頑張ってるんだろうな。
そんな気持ちで彼の動きを眺めるが、
「ごめんね、仕事だから。」
拳を彼の鳩尾へと突っ込む。
「がはぁっ!!!」
そのまま彼は吹っ飛び、遥か彼方で動かなくなった。
◇
「えー、今のがヒーロー名の個性です。」
「何が!?!?」
「全然理解出来ないんですけど!!」
「……げほ……単なる、増強型では、無い。ですか?」
緑谷くんの言葉に頷く。
「そうだ。ヒーロー名の個性は水流。水を操る個性。しかしながら水のある場所でしか使えない個性なので、基本的にはあまり使えない。」
「……ヒーロー名が水使ってるのなんか見たことねぇな。」
「確かに、いつもぶん殴っておしまいだものね。」
「そうだ、ヒーロー名は基本的には殴ったり蹴ったりでヴィランを退治する。そのパワーはどこから来るのかと言うと、」
言うと。イレイザーは私のマントをひっぺ剥がした。
「!?!!???」
「見ろ、この筋肉を。」
「す、……すげえええ!!引き締まってんなヒーロー名!!」
「必要な分だけ筋肉を……。」
「だからあんな風に素早い攻撃も……ってえ?もしかしてワンパンってマジでヒーロー名の筋力で出来てんの!?」
「それは違う、個性も使ってる。だが基本はこの考えてつけられた筋肉だ。」
へええ!すっげええ!!なんて言って皆にじろじろ見られる。は、恥ずかしい……!!!
マントの下は基本的には動きやすいよう身軽な格好にしていて、露出している面積も広い。なので筋肉を惜しみなく見せているようになってしまって、私はセクハラが怖い。露出狂とか言われたらどうしよう。
「そして、この筋肉と合わせて使うのが先程の水流の個性。ヒーロー名は空気中に含まれている水分を凝縮し、水圧を生み出して、その圧を拳や脚に乗せて相手にぶつけている。」
「…………わかる?」
半分ぐらいの生徒が頷き、半分ぐらいが首を傾げている。だ、だよねぇ。
「じゃあここまで聞いてから、もう一度見てみよう。」
今度は誰でも良いが…………。とイレイザーは言ったので、私はすかさず
「しょ、焦凍くんは駄目ですか。」
「轟?……まぁいいだろう。轟、準備しろ。」
「……!……はい。」
良かった、彼には訓練つけると約束したのだ。こんな私の個性の説明で時間食ってる場合じゃない。少しでも彼と手合わせをしてあげたい。
「……ありがとう。ヒーロー名。」
「……え?」
聞こえた言葉に振り返れば、嬉しそうに微笑んだ焦凍くん。
そ、………………そんな顔、無作為に振り撒いちゃ駄目だよ!!!
私は今度、冷さんと冬美ちゃんに文句を言ってやろう。そんな気持ちで彼の氷壁に向かって拳を放った。