「よし。じゃあ一旦昼休憩。午後からまたヒーロー名も含めてヒーロー基礎学入るからな、コスチュームでここに集合する事。解散。」
終わった…………午前だけだけど…………。
はぁ、と溜息をついて、先輩に剥がれたマントを纏う。
「ヒーロー名!」
「?」
呼ばれて振り返ると、焦凍くん。……の後ろにも何名か。
「昼飯、一緒に食べよう。」
わくわく。そんな効果音でもつきそうな表情で言ってきた、ボスの可愛い息子さん。
「わ、私達も一緒が良いんですけど……?」
「だ、ダメですか!!」
ひょっこり。後ろから現れたのは緑谷くんと麗日さん。うっ、可愛い。可愛い子ちゃんしかいない。
その可愛さにやられて、私は首を立てに振ってしまった。
◇
………………そう、首を縦に振ってしまったのだ。
食堂に着いてから気づく、そうじゃん。仮面取らないとご飯食べれないじゃん。
ヒョエエエエエ。と言いそうになる口を必死に噤んで考える。ど、どうにか、出来るだけ彼らを悲しませずに1人で食べることは出来ぬか、
「ヒーロー名?来ねぇのか?」
くい。マントの袖を軽く引っ張る焦凍くん。
うっっっ…………身長はあちらの方がかなり高いのに、なんでだろう。可愛く見えるのは。
「……そ、その、…………仮面。」
「…………あ。」
恥ずかしながらそう呟けば、合点いったのか固まる焦凍くん。
「……ご、ごめん。やっぱり、…………」
「……それ、絶対付けてないと駄目か?」
「……………………出来れば。」
「どうして?」
優しく身を屈めて聞かれる。これじゃあどっちが年上かわからないな。
「…………顔とか……体とかで、判断されたくなくて。」
「……そんな事しねぇよ。」
「でも、女なら弱そうに見える人もいる。頼りなく見える人もいる。…………だから、少しでも強くて頼りになる人に見えるようにしていたくて…………。」
「…………今は、強さはいらない。」
「……?」
「何かあったら、俺が守ります。だから、今だけは気抜いてくれねぇか?」
真っ直ぐ伝わる彼の気持ちに、あぁ。やはりこの子はエンデヴァーと冷さんの息子なんだなぁ。と感じさせられる。
「………………わかった。」
そして私はつくづくこの家族に弱いなぁ。と痛感しながら、客室へと荷物を置きに戻った。
◇
仮面を外して外を歩くのは、いつぶりだろう。
休日は取っている日もあったが、最近はいつでもヒーロー活動出来るよう外へ出る日はいつも仮面と一緒だった。
…………緊張、するな。焦凍くんは何年も顔を見てきたのに、自分の顔を晒すのは初めてなんだ。
ふぅ。と息を着くとコンコンコン。と音がする。
「ヒーロー名?準備できたか?」
先にご飯食べてて良いよ、と伝えたのに、頑なに私と一緒に食べると言って聞かなかった焦凍くん。
逃げられるとでも思われたかな。……まぁたぶん逃げてただろうけど。
「…………は、はい。」
あぁ、いつもよりクリアに届いてしまう私の声。恥ずかしい、けど、だけど、
扉を開けて、綺麗な顔をした焦凍くんの前に隠し続けた素顔を見せる。
「……!」
恥ずかしいけど、君なら笑わないでいてくれるような気がしたんだ。