戦闘開始

「麗日さん、発目さん、夜魔さん。……よろしく!!」


戦いの火蓋が切って落とされた。





「緑谷くん!!これは早々に、」


「うん、わかってる!!」


発目さんのサポートアイテムを早々に使い、空へと舞い上がる。


「どうですか!?私のベイビーは!!」


「ベイビー凄いよ、発目さん!!」


発目さんのアイテムを使って移動し、


「着地するよ!!」


麗日さんのゼログラビティを使って軽量化。着地もスムーズに。


そのまま駆けて、時間を稼ぐ。


「っ待って、」


前騎馬の夜魔さんが止まる、すると視界に入ってきたのは紫の……


「峰田くん!?どこから……。」


と思っていると舌も伸びてきて、蛙水さんもいると勘づく。


「……障子くんの中!?ずるくない!?」


夜魔さんの声にそちらを見ると、テントのように覆われた中から彼らの声がする。


そ、そんなやり方も…………一応騎馬になってるのかそれ……。


「やばい!!とりあえず逃げよう!!」


そう言って逃げようとするが、麗日さんの足に峰田くんの球が。


しかしながら無理やり上昇を続けた為、サポートアイテムが壊れてしまう。


「ああああ!!ベイビー!!」


「まずいな……着地が上手くいかない、」


冷や汗を流すと、聞こえた爆発音。


好戦的な幼馴染を彷彿とさせ、振り返るとやはり。彼がすぐそこに。


「っ夜魔さん!!」


「了解!!」


恐らく瞳で照準を合わせたのだろう。突如空気中で爆破が繰り返され、かっちゃんを遠ざける。


「ここは危ない、移動しよう!……私に掴まってて。」


そう言われ、情けない格好ではあるが彼女にしがみつく。


すると夜魔さんはその黒翼を羽ばたかせ、僕達ごと空を移動した。


凄い、夜魔さん単体で出来ることが非常に多い!!彼女を軸に防戦し続ければ勝てる!!





そう踏んだ訳だったが、やはり上手くはいかない。行かせて貰えない。


目の前に立ちはだかる轟くんチーム。遥か後方では多くのチームが彼によって氷漬けにされていた。


「緑谷くん……あと1分。なんとか堪えよう。」


防御の軸として奮闘してくれている夜魔さんが、静かに汗を流しながら呟く。


「うん、必ず死守するよ……!!」


そう、誓ったのに。


舞う土埃。目の前にいた彼は消えて、え、


追うようにして振り返ると、息を切らした飯田くんとハチマキを手にした轟くん。


「…………っ取られた!!取り返そう!!!」


「っでも!!今轟くん達取りに行くよりは、他を当たった方が、」


「駄目だ!!他のポイントの散り方がわかってない!!ここしかない!!」


「……行こう!!」


強く頷いてくれた夜魔さん。


「負けるためにこのチームに入ったわけじゃない!!」


唇を噛み締め、彼女に頷く。


「…………勝つぞ!!」


勢い良く前進する、なんとか距離を取ろうと動く彼らに、


「夜魔さん!!アレを!!」


僕は目を瞑りながら叫ぶと、了解!!と快活な返事が返ってくる。


アレ。…………競技前最後に教えてもらった、夜魔さんが使える個性。


『うちの母さん……アスモデウスは、同じ個性悪魔の中でもサキュバスなんだ。要するに誘惑する悪魔。』


『基本的には母さんは、誘惑して動けなくしてから悪魔の筋力でボコボコにする。って言うえぐいやり方でヒーローやってて。』


『母さんほど強力な誘惑は使えないけど、多少動きを鈍らせる事なら出来る。相手が特に異性なら。』


『ただ使う時は言うから、私の姿を目に入れないで。私を見てしまうと皆もかかっちゃうから。』


目を瞑り、ただ前進する。


「距離を取るぞ。…………おい、飯田!!」


「飯田さん!?」


「す、すまない……体が、うまく、」


「っ、応戦する。…………!?」


「轟さん!?」


「緑谷くん!!目開けて!!」


夜魔さんの声に目を開けると、目前に怯んだように体を強ばらせている轟くん。


ワンフォーオール……!!


大丈夫、当てはしない。夜魔さんが作ってくれた隙を大きくするだけ……!!


彼が咄嗟に出した左腕を、払う!!


その隙に1番上に付けていたハチマキを奪う!!


「……っ取ったぁ!!!」


「……!?待ってください!!数字違く無いですか!?」


「えっ、」


慌てて見ると、70。そう書かれていて。


「念の為にハチマキの位置は移動させてありますわ!!甘いですわね!!」


八百万さんに言われ、頭が真っ白になる。


「……あんの澄ましたお嬢様めぇ…………!!」


ビキビキと顔に入ったヒビが広がっている夜魔さん。……どうしよう、このままだと、順位は


…………圏外。僕だけじゃない、協力してくれた皆までここで終わってしまう、


「っ取り返そう!!!」


そう轟くんの元へと駆け出したが、


無情にも制限時間は、止まってくれなかった。





「…………ごめん。」


3位を発表しているプレゼントマイクの声が遠くに聞こえる。


発目さんに装備させてもらったサポートアイテムを外されながら、彼女達に謝った。


こんな僕に、狙われるってわかってて手を差し伸べてくれたのに。


しかし彼女達、発目さんと麗日さんは目をぱちくりと瞬かせ、後方を指さした。


そこへ立っていた夜魔さんは、


「緑谷くんのハチマキを取られたのは、緑谷くんだけの所為じゃない。でも、」


……………………あっ。


彼女に生えている大きな尻尾。その先に引っ掛けるようにしてハチマキが1本。


「緑谷くんに意識が向いてる間に、尻尾がなんとか届いた1本貰っておいた!この1本は他の誰でもない、轟くんの意識を逸らせた緑谷くんの1本だよ。」


「4位!!!チーム緑谷!!!!」


「うわあああああん!!!」


彼女の言葉が嬉しくて、決勝に進めたのが嬉しくて涙が止まらない。


良かった、……本当に良かったぁ……!!!


洪水のように涙を流す僕を見て、彼女たちはおかしそうに笑っていた。

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