「麗日さん、発目さん、夜魔さん。……よろしく!!」
戦いの火蓋が切って落とされた。
◇
「緑谷くん!!これは早々に、」
「うん、わかってる!!」
発目さんのサポートアイテムを早々に使い、空へと舞い上がる。
「どうですか!?私のベイビーは!!」
「ベイビー凄いよ、発目さん!!」
発目さんのアイテムを使って移動し、
「着地するよ!!」
麗日さんのゼログラビティを使って軽量化。着地もスムーズに。
そのまま駆けて、時間を稼ぐ。
「っ待って、」
前騎馬の夜魔さんが止まる、すると視界に入ってきたのは紫の……
「峰田くん!?どこから……。」
と思っていると舌も伸びてきて、蛙水さんもいると勘づく。
「……障子くんの中!?ずるくない!?」
夜魔さんの声にそちらを見ると、テントのように覆われた中から彼らの声がする。
そ、そんなやり方も…………一応騎馬になってるのかそれ……。
「やばい!!とりあえず逃げよう!!」
そう言って逃げようとするが、麗日さんの足に峰田くんの球が。
しかしながら無理やり上昇を続けた為、サポートアイテムが壊れてしまう。
「ああああ!!ベイビー!!」
「まずいな……着地が上手くいかない、」
冷や汗を流すと、聞こえた爆発音。
好戦的な幼馴染を彷彿とさせ、振り返るとやはり。彼がすぐそこに。
「っ夜魔さん!!」
「了解!!」
恐らく瞳で照準を合わせたのだろう。突如空気中で爆破が繰り返され、かっちゃんを遠ざける。
「ここは危ない、移動しよう!……私に掴まってて。」
そう言われ、情けない格好ではあるが彼女にしがみつく。
すると夜魔さんはその黒翼を羽ばたかせ、僕達ごと空を移動した。
凄い、夜魔さん単体で出来ることが非常に多い!!彼女を軸に防戦し続ければ勝てる!!
◇
そう踏んだ訳だったが、やはり上手くはいかない。行かせて貰えない。
目の前に立ちはだかる轟くんチーム。遥か後方では多くのチームが彼によって氷漬けにされていた。
「緑谷くん……あと1分。なんとか堪えよう。」
防御の軸として奮闘してくれている夜魔さんが、静かに汗を流しながら呟く。
「うん、必ず死守するよ……!!」
そう、誓ったのに。
舞う土埃。目の前にいた彼は消えて、え、
追うようにして振り返ると、息を切らした飯田くんとハチマキを手にした轟くん。
「…………っ取られた!!取り返そう!!!」
「っでも!!今轟くん達取りに行くよりは、他を当たった方が、」
「駄目だ!!他のポイントの散り方がわかってない!!ここしかない!!」
「……行こう!!」
強く頷いてくれた夜魔さん。
「負けるためにこのチームに入ったわけじゃない!!」
唇を噛み締め、彼女に頷く。
「…………勝つぞ!!」
勢い良く前進する、なんとか距離を取ろうと動く彼らに、
「夜魔さん!!アレを!!」
僕は目を瞑りながら叫ぶと、了解!!と快活な返事が返ってくる。
アレ。…………競技前最後に教えてもらった、夜魔さんが使える個性。
『うちの母さん……アスモデウスは、同じ個性悪魔の中でもサキュバスなんだ。要するに誘惑する悪魔。』
『基本的には母さんは、誘惑して動けなくしてから悪魔の筋力でボコボコにする。って言うえぐいやり方でヒーローやってて。』
『母さんほど強力な誘惑は使えないけど、多少動きを鈍らせる事なら出来る。相手が特に異性なら。』
『ただ使う時は言うから、私の姿を目に入れないで。私を見てしまうと皆もかかっちゃうから。』
目を瞑り、ただ前進する。
「距離を取るぞ。…………おい、飯田!!」
「飯田さん!?」
「す、すまない……体が、うまく、」
「っ、応戦する。…………!?」
「轟さん!?」
「緑谷くん!!目開けて!!」
夜魔さんの声に目を開けると、目前に怯んだように体を強ばらせている轟くん。
ワンフォーオール……!!
大丈夫、当てはしない。夜魔さんが作ってくれた隙を大きくするだけ……!!
彼が咄嗟に出した左腕を、払う!!
その隙に1番上に付けていたハチマキを奪う!!
「……っ取ったぁ!!!」
「……!?待ってください!!数字違く無いですか!?」
「えっ、」
慌てて見ると、70。そう書かれていて。
「念の為にハチマキの位置は移動させてありますわ!!甘いですわね!!」
八百万さんに言われ、頭が真っ白になる。
「……あんの澄ましたお嬢様めぇ…………!!」
ビキビキと顔に入ったヒビが広がっている夜魔さん。……どうしよう、このままだと、順位は
…………圏外。僕だけじゃない、協力してくれた皆までここで終わってしまう、
「っ取り返そう!!!」
そう轟くんの元へと駆け出したが、
無情にも制限時間は、止まってくれなかった。
◇
「…………ごめん。」
3位を発表しているプレゼントマイクの声が遠くに聞こえる。
発目さんに装備させてもらったサポートアイテムを外されながら、彼女達に謝った。
こんな僕に、狙われるってわかってて手を差し伸べてくれたのに。
しかし彼女達、発目さんと麗日さんは目をぱちくりと瞬かせ、後方を指さした。
そこへ立っていた夜魔さんは、
「緑谷くんのハチマキを取られたのは、緑谷くんだけの所為じゃない。でも、」
……………………あっ。
彼女に生えている大きな尻尾。その先に引っ掛けるようにしてハチマキが1本。
「緑谷くんに意識が向いてる間に、尻尾がなんとか届いた1本貰っておいた!この1本は他の誰でもない、轟くんの意識を逸らせた緑谷くんの1本だよ。」
「4位!!!チーム緑谷!!!!」
「うわあああああん!!!」
彼女の言葉が嬉しくて、決勝に進めたのが嬉しくて涙が止まらない。
良かった、……本当に良かったぁ……!!!
洪水のように涙を流す僕を見て、彼女たちはおかしそうに笑っていた。