「……あ、お茶子ちゃん。」
「お!!美悪ちゃん!!凄かったよー!!一瞬だったね!!」
「あ、あはは……ありがとう。」
「…………なんかあった?」
聞かれてギクリ。としてしまう。
「……あ、お茶子ちゃん試合の準備?頑張ってね!!」
「ちょっと。何逃げようとしてるん。」
笑顔を浮かべてすれ違おうとするが、がっしりと掴まれて絶望。
「何かあったん?私まだ時間あるし、聞くよ?」
「い、いやいや……自分のことに集中して頂いて、」
「ほら!!話す!!」
「ひぃ!!」
凄い剣幕だ、お茶子ちゃん将来旦那さんを尻にひいてそう……。
「……今しがた、轟くんを挑発してしまって。」
「え!!?死にたいん!?」
酷い。酷い言い様だ。でもほんとそうだよね、1回戦の瀬呂くんを思い出すと本当に事故的な感じで殺されるかもしれない。
「な、なんでまた挑発なんて……。」
「……轟くんが私と轟くんは同じだ、とか言うからムカついて。」
「え!?嫌なん!?本当に友達になる気ある!?」
「あ、それなんだけど、既に轟くんから嫌われすぎてるから撤回するよ。」
「そんな怒らせたの!?」
「うん…………すっごい眉間に皺寄ってた。怖かったぁ……最後なんか顔見るの怖過ぎて、煽るだけ煽って逃げてきちゃったや。」
「美悪ちゃん……轟くん同じクラスって知っとる……?逃げ場なんて無いの知っとる……?」
なんか話してたらすっきりしてきた。お茶子ちゃんは私より絶望的な顔してるけど。
「うん、まぁなんとかなるよね。ごめんね!ありがとう話聞いてくれて!」
「え!?今の会話で解決した部分あった!?美悪ちゃんが轟くんに命狙われてるって事ぐらいしかわからんかったけど!?」
「やだなぁ、もう。冗談だよ冗談。」
冗談であってくれ。大氷壁を思い出すとちびりそうになる。
「とにかく私はもう大丈夫!次の試合の事でも考えとくよ!!それよりお茶子ちゃん爆豪くんとだよね……?私なんかよりずっと心配だけど……。」
「……うん、でもやるしかないから。」
そう言ったお茶子ちゃんは凄く凛々しくて。とてもかっこよかった。
「……そうだね、観覧席から梅雨ちゃん達と応援してる!!頑張ってね!!」
「ありがとう!!」
◇
しかしながら無情にもお茶子ちゃんの作戦は爆豪くんによって打ち砕かれ、2回戦進出者が出揃った。
……正直お茶子ちゃんが心配だが、私もぼけっとはしてられない。言ってしまえば次勝てば3位に入賞は確定。つまり次勝てば私は勝ち!!
あれだけ轟くんに負けないとかほざいておいて、3位以上の順位にこだわってないなんて。口が裂けても言えないな……。
なんて考えているとまさに今考えていた轟くんと緑谷くんの試合。
緑谷くん……また瀬呂くんみたいに氷漬けにされちゃうのかな…………。
なんて心配は一瞬で打ち消される。
自損覚悟の個性によって。
「っまたあの個性……。」
「緑谷ちゃんの指…………既に動かなくなってるわ。」
見ているだけで痛々しい。峰田くんなんかは緑谷くんが攻撃を放つ度に悲鳴を上げている。
「そこまでして…………。」
いくらリカバリーガールに治して貰えるからって、痛みは今抱える痛みは何も消えないのに。
自ら激痛に立ち向かう彼の精神力。並大抵のものでは無いだろう。
彼らの会話もこちらには届いていて、期待に応える。そう緑谷くんは言った。
期待。
…………………………ばあちゃん。
「君の!!力じゃないか!!!」
彼の叫びが、私と轟くんの心に叩きつけられた。
◇
「君の!!力じゃないか!!!」
『轟くんと当たっても絶対負けないから。……自分の力で勝負して来ない轟くんに……絶対に負けない。』
俺の、力。
2人の言葉が頭の中で反芻する。
俺の力。……俺の、力で…………ヒーローに。
笑って人を救けるヒーローに。
俺だって、……ヒーローに。
燃え盛る熱が俺の半身を支配した。