準決勝

「いけえええやったれ飯田くううん!!!」


「やったれええええ!!!」


お茶子ちゃんと一緒に飯田くんを応援する。何故かって?命の危機を感じているからさ。


「うわ、良いの入った!!」


「凄いぞ飯田くん!!」


凄い!!!飯田くん速い!!


「やったれ飯田くん!!その綺麗な顔面をボコボコにしたれえええ!!!!」


「…………美悪ちゃん……男子の目が怖いよ……。」


「え?」


「お前さぁ……男の夢を壊すなよ……。」


「夢?」


問い返せばはぁ。と溜息をついた瀬呂くん。何?なんなの?


「夜魔みたいに可愛くてさ?個性使っても綺麗系美人な子はさ?そんな言葉使って欲しくないじゃん?」


「おいら達の夢と希望を壊すなよ!!可愛子ちゃんは可愛子ちゃんであれ!!」


「……………………飯田くん!!急所!!轟くんの急所蹴りあげたれええ!!!」


「おいやめろ!!!」


「急所とか言うな!!!」


「隠さず言った方が良い?……轟くんのち」


「やめろって!!!!」


うわあああ!!と勝手に絶望している峰田くん、瀬呂くん、上鳴くんを冷めた目で見つめる。勝手に想像したのはそっちでしょ。そういう猫かぶりは私には求めないで母に求めてもらっても??


なんてキレながら轟くんの急所、と叫んでいると飯田くん自体が氷漬けにされてしまい、轟くんが勝ち上がった。


うわ…………次勝っても負けても地獄じゃん……。


爆豪くんにボコボコにされるか、轟くんにボコボコにされるかの違いだけ。轟くんには嫌われてるからまだ爆豪くんの方が…………いや彼は元より異常者だ。手加減とか慈悲とか知らないタイプの異常者。…………。


「はぁ………………。」


「美悪ちゃん……。」


「大丈夫?美悪ちゃん……。」


「…………逝ってくるね。」


「どこに!?」


緑谷くんの激しいツッコミを後ろに聞きながら、私は控え室へと向かった。





「……あ。」


「………………あっ……。」


控え室へと向かっていると、試合終わりの轟くんとエンカウントしてしまった。


…………………………。


「凄い試合だったね、飯田くんも凄く速かったのに勝っちゃうなんて凄いなぁああ!!!あははははそれじゃ。」


口を挟む隙を与えずに競歩で彼の横を通り過ぎる、すると


「……お前の、」


そう言葉を発した轟くん。え?何?お前の首を、今から折るぞ?……折られてたまるかぁああ!!!


死の危険を感じて急いで彼から離れようとすると、


「……待ってくれ。」


腕を掴まれて動けない。強!!力強!!!


「な、……何?」


諦めて向き直ると、


「……お前の言葉。八百万とお前の試合の後、言われた言葉に違和感を感じた。」


「……。」


「俺の力って、何かわからなかった。……でもその後緑谷に言われた言葉がお前の言葉と重なって、……きっかけになった。」


「きっかけ?」


「……昔のことや、お母さんのことを思い出すきっかけ。」


だから、とこの時初めて目が合った轟くん。その瞳があまりに綺麗で目が離せない。


「……ありがとな。どうしても礼が言いたかった。」


ふ、と緩んだ目尻。初めて見た彼の緩んだ表情に胸が掴まれ上手く言葉が出てこない。


「それだけだ、悪ぃな試合の前に。」


そう言って私の腕を離した轟くん。その腕を今度は私が掴む。


「っえ?」


「よ…………良かったね!!」


「……え?」


「その、……思い出したかった事、なんだよね?お礼を言ってきたってことは。」


「……あぁ、そうだ。思い出したかった、忘れちゃいけない事だった。」


「…………なら、良かったね。私の言葉が少しでも轟くんの役に立ったんなら良かったよ。」


そう笑うと、轟くんは驚いたように目を丸くして、そして笑った。


「……ありがとう。俺にあの言葉を掛けてくれて。」


「……いえいえ!」


「じゃあ。……試合頑張れよ、相手爆豪だから一筋縄じゃいかねぇと思うけど。」


「うん。……頑張る。」


「……応援してるから。」


「えっ。」


「じゃあな。」


応援って…………彼らしからぬ言葉に振り返ると、既に轟くんはこちらに背を向けて歩みを進めてしまっていた。


…………それにしても、


「…………熱い。」


イケメンの笑顔半端ないって……。手を頬にあてると予想通り熱くてきっと顔色もすこぶる良くなっている事だろうと項垂れる。


全然轟くん怒ってなかった。むしろお礼を言われてしまった。


…………そっかぁ、少しは役に立てたのかぁ。


勇気を出して言ったかいがあった。その後暫くは命の危機を感じていたけれど。


……それにしてもあんな風に言われるとは思ってなかったから、先程の試合で轟くんの急所ー!!と叫びまくってしまった。


ほんとごめん轟くん、その、悪気はないんだ。頼むから誰も言わないでおくれよクラスメイト諸君。

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