決勝、そして

「……お。夜魔、お疲れ。」


「轟くん…………。」


「大丈夫か?だいぶ派手にやられてたけど。」


「あいつ許さん……。」


「……とんでもねぇ顔してるぞ、大丈夫か。」


大丈夫に見えるか???


相も変わらず綺麗な顔をしている轟くんを見つめ、そして彼の両肩を掴んだ。


「お。」


「轟くん…………爆豪くんボコボコにしてきて。」


「お前ボコボコにすんの好きだな。」


「それはもう徹底的に。再起不能になるぐらいに。お願い。」


「再起不能は駄目だろ。」


「頼んだからね。」


「……聞けよ。」


彼の両肩から手を離して、痛む体もそのままに観覧席へ戻る。許さん……あのヤンキーは許さん……!!


◇


「大丈夫!?美悪ちゃん!」


「うん、爆豪くんはいつか絶対泣かす。」


「何があったの!?!?」


「負けてきたのに安定の強気ね、美悪ちゃん。」


なんなんだあのヤンキーは。許さん。マジで、マージーで許さん。


「最後何か言われたの?もう映像切れてて聞こえなかったけど。」


「……………………思い出すと腸煮えくり返りそうだから、言えないや。」


「本当に何言われたの……。」


「でも大丈夫。轟くんに爆豪くん再起不能になるぐらいボコボコにしておいてってお願いしてきた。」


「え!?と、轟くんはなんて……?」


「…………なんて言ってたかな。」


あれ、思い出せないぞ。ひたすらに爆豪くん許さん。しか考えてなかったからな…………あれ?


「……轟くんの返事無視してきたなこりゃ。」


「相当ご立腹だものね美悪ちゃん。」


「とは言え美悪ちゃん結構短気だよねぇ、すぐ頭に血上る。」


「…………よく言われる。」


喧嘩っ早いと言われながら育った、けどそれを悪く言う人も窘める人もいなかった。喧嘩を推奨する悪魔のような家族だったもので。


ふんす、と鼻息を荒くしながら席に着く。頼んだぞ轟くん。こうなったら爆豪くんの急所を燃やすとかでも良いからさ、頼むよ。


未だに残る悔しさから暴れだしそうなのを抑えてステージを眺める。


向かい合った両者。プレゼントマイクの声に観客は大盛り上がり。


……あそこの舞台に私がいられたら良かったのに。


3位以内に入れたというのに、私の心は全然満足していなかった。


◇


「夜魔。」


「相澤先生?」


「お前3位だからな、表彰式出るからこっち来い。」


そう言って先生に手招きされる。あれ?


「飯田くんは……?」


「飯田は家の用事で先に帰った。」


「あ、そうなんですね!」


それならば。と先生に着いて歩いて表彰台まで向かう。


3と書かれた表彰台の上に立ち、わーわーうるさい1位を眺める。


「…………いい加減静かにしたら?」


「んー!!!ん!!!んーーーー!!!!」


「何?何だって?」


「んがああああ!!!」


にやにやと笑って煽ると更につり上がった目尻。楽しくなってケタケタ笑うと


「いでっ!?」


「煽るな夜魔。こいつ拘束すんのにどれだけ時間かかったと思ってる。」


相澤先生に睨まれてしまってはもう何も出来ない。未だ暴れている爆豪くんを尻目に表彰式に臨んだ。


◇


「3位おめでとう!夜魔少女!!」


「ありがとうございます!」


大きくて沢山の人の希望と憧れを背負ったオールマイトに笑いかけられる。


メダルを掛けてもらって、嬉しい限りだ。オールマイトに憧れていない人なんていないのだから。


するとそっ、と抱き締められて


「素晴らしい個性、素晴らしい動きだったよ!でも相性の善し悪しはやはり避けては通れぬ道だ。……個性に頼るだけじゃなく、自らを鍛えて更に高めてくれ!」


「……はい!」


大きくて暖かな温度が離れていき、今度は轟くんの方へ。


…………3位。最低限のノルマだったけれど、簡単な道のりでは無かった。


顔を上げて観覧席を見ると、こちらを見ていた母。


目が合うと母は悪魔のような笑顔、ではなく屈託の無い笑顔をこちらへ向けて親指を立てた。


……ノルマ、だけど喜んでも良いよね。ばあちゃん。


首から下がった重み。見ると銅色に輝くメダル。


今日も入試同様轟くんには適わなかったけれど、まだまだここからだ。とりあえずすぐ後ろまでは追いつけた。


卒業するまでには轟くんも、爆豪くんも。皆抜かして1番で卒業してやる!!


新たに超えたい壁と出会った体育祭となった。

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