コンコンコン。
轟くんが言ったハンドクラッシャーとかの、おかしな冗談に笑っていると聞こえたノック。
「は、はい?」
「失礼するよ。」
聞こえた声と同時に開かれた扉。すると入ってきたのは……。
大きな角に、キリリと凛々しい表情。大きな尻尾に鋭い鉤爪。
僕が見た事のある姿より幾分老けてはいたが、それでも尚凛々しくかっこいい悪魔。
「……ルシファー…………!!?」
「おや、私の事知ってるのかい。」
「し、しし、知ってます!!!雄英高校でも教鞭を奮っていたと聞いてますし、それ以前も非常に活躍したヒーローの1人だと……!!」
「若いのによく知ってるね!」
そう言うとあっはっは!と快活に笑ったルシファー。
でもなんでここに…………あ、
「あの、夜魔さんなら別の病室ですけど……。」
「あぁ、知ってるよ。さっきまだ寝てたから張り手してきたところだ。」
「張り手!?」
ルシファーの言葉に僕は叫び、飯田くんと轟くんは口を開けてぽかん。と呆けた。
「本当は1発ぶん殴りたいところだったけどね、せっかく治して貰ったんだ。お医者さんにご迷惑だから張り手までにしておいたよ。」
「そ、それで夜魔さんは……?」
「まだ寝てるよ、恐らく血を流し過ぎたんだろう。その内目覚めるってさ。」
「そ、そうですか……。」
少し前に聞いた容態と変わらないようで、未だに目覚めぬクラスメイトが心配になる。
「それより君たちには美悪の戦っていた時の様子を聞きたくてね。」
「様子?」
「何か変わった様子は無かったかい。……最近、特に体育祭以降はより力を入れて鍛錬に勤しんでいてね。磨いてきていた……新技のようなものが形になってきていたんだ。」
新技…………。
「……関係あるかわからないんですけど、」
静かに声を出したのは轟くん。
「あんたは……轟の息子だね?確か……末っ子?」
「あ、……はい。」
「良かったね、父親に似なくて。あのゴツい男より母親の血を色濃く継いだんだろう、男前じゃないか。」
「え、……ありがとうございます……?」
「それで?何かあったのかい。」
「はい、……最後の最後。敵に夜魔が刃物で切りつけられて、その腕を血を流しながらも掴んで拘束しました。」
「……ほう。」
「恐らく俺達に攻撃の機会を与える為に。でも敵は暴れて抜け出そうとしていて、…………たぶん。気づいてなかっただけかもしれませんが、その時ぐらいから姿が変わっていました。」
「え!?あの時だったの!?」
「たぶん。……あの状態の夜魔がステインの腕を掴んでいたような……気がする。」
「どんな姿だった?」
そう聞いたルシファーは目を輝かせていて、少しだけ驚く。
「ど、どんな。…………大きな角が生えていて……。」
「翼は無くなっていたような気がしたが……?」
「そうだね、無くなってた。あとは……普段の個性発現している状態よりも、耐久性の高そうな服装に見えた気がするな……。」
「確かに。布面積も多かった。」
「…………………………ありがとう、それだけ聞ければ充分だ。」
そう言ったルシファーは酷く、それは酷く嬉しそうに笑った。
「あの……?」
「あの姿は、なんなんですか?」
「……お前たちの言っているそれは、シュトリ。普段のナイトメアが扱う姿はサタン。同じ悪魔の個性内のものだが、得意分野が変わる形態だ。」
「…………あの姿だけが個性じゃねぇのか。」
「だからこそ悪魔の個性は珍しく、だからこそ強い。…………だからこそ、正しく使わなければならない。」
「正しく……。」
「……お前たちの事は体育祭で見ていたよ。3人とも意欲的かつ好戦的で大変よろしい。だが、まだまだ発展途上も良いとこだ。」
「うちの孫と一緒に、沢山雄英で扱かれな。…………更にその上を知りたいのなら、学びたいのなら。」
ドアへ向かって歩くルシファーが振り返り、
「いつかもっと強くなって私の元へおいで。学校では教えられないものを教えてやろう。」
ルシファーが直々に…………!?
「は、……はい!!必ず!!!」
「その時は、……よろしくお願いします。」
「光栄です!!必ず向かいます!!」
「ははは!!元気でよろしい!……寝坊助なうちの孫のことも、よろしく頼むよ。」
「「「はい!」」」