「今年からはより実践に近い形式での実技試験になったのさ!!」
…………お?
「組み合わせと対峙する教師はもう決めている。それらを発表するが…………まずは、轟と八百万。」
あの二人がペアなの!?力偏りすぎじゃ……?
「お前らの相手は……俺だ。」
◇
「あれ?美悪ちゃんとデクくんも見学?」
「うん。……かっちゃんと作戦会議したかったけど……出来なくて。麗日さんは?」
「私はもう……そういう問題じゃなくって。」
「2人とも大変だね……。」
「大変なのは美悪ちゃんもでしょ!?いくら相澤先生が連続して相手するから疲れるって言っても、1人で戦わないといけないんだし……。」
「ほんとにね…………私より轟くんの方が1人は向いてるよなぁ。」
ざっくりと相澤先生に何故この組み合わせになったのか言われたところ、必ず1人余るのでそれは元々推薦組の中から出そうと考えたそうな。
それで個性から考えて私にした、なんて言われたけれどんな馬鹿な。私は、…………私は未だに轟くんに何か一つでも勝てたことが無い。体育祭も、ステインの時の動きも。頭の良さだって。
なのになんだって私が…………向こうには八百万さんもいて、作戦を組み立てるブレーンにだってなれるのに。
「はぁ……。」
せめてよく見ておかないと。彼らがどのように相澤先生へ立ち向かうのか。
私がゴリ押しでしか対応出来ないとしても。
◇
ぽこぽことマトリョシカを創造しながら移動する八百万さんと轟くん。
しかしながらすぐに相澤先生がやって来て、2人は分断される。
「相澤先生相手に1人はやっぱりキツイよな……。」
蹴りを繰り出した轟くんを見つめるが、やはり個性ありきでの実力。厳しいことに変わりはない。
「うん……八百万さんだけ先に行かせてゴールさせるって言う算段だろうけど、たぶん相澤先生は……。」
緑谷くんの思惑通り、個性を使わせずにあっさりと轟くんを捕らえた相澤先生。ご丁寧にまきびしまで撒いて即座に八百万さんを追う。
「このスピードだと八百万さん逃げきれないよ……!!」
2人と共に固唾を飲んで見守るが、やはり。すぐに相澤先生は八百万さんへ追いつきその華奢な腕を捕縛布で捕らえた。
「どうする、八百万さん……!」
賢くて実力も伴った2人がここで終わるなんて……と思っていると、恐らくゴールから逆方向に駆け出した八百万さん。
「なんで戻って……?」
「……たぶん、轟くんを助けに行ったんじゃないかな。」
「なるほど。」
轟くんが吊るされた場所へ戻ってくると、何かを話している2人。すると後ろから電線を駆けてくる相澤先生。
「また個性消されちゃうよ!?」
「どうする……って!?」
突如八百万さんが腰に残していたマトリョシカを投げるとモニターは真っ白になった。
「な、何が起こって……。」
徐々に映像が元に戻ってくると、目を擦っている相澤先生と吊るされた轟くんを助けている八百万さん。
「閃光弾……?」
「なるほど!!相澤先生の目へのダメージか!」
咄嗟に、と言うかとりあえず相澤先生対策で何か物を作る。と言う時に相澤先生への攻撃としても有効な物を作るその英断。……やっぱり凄いや八百万さん。
轟くんが地面に降り立ち、仕切り直しかのように相澤先生の捕縛布が2人に襲いかかるが、轟くんが氷結を使ってその場を凌ぐ。
そして2人とも駆け出し、先生から距離をとる。
先生はもちろん2人を追うが、刹那。
「「「!!!」」」
私たちは何も言えなくなった。見るのは2度目だが変わらず圧倒されてしまって。
猛々しく構築された大氷壁。その奥に彼らは隠れて相澤先生は足を止めた。
「なんで相澤先生は追いかけないのかな?」
「……もしかしたら、ゴールが先生の背後にあるんじゃないかな?だから先生に仕掛けようともゴールに向かおうともこちらにやって来る。」
「なるほど……無駄に追いかけても仕方ないって事か!」
だとしてもここからどうする…………?
個性を消される相澤先生が相手という事に変わりはない。ならば……?
すると動き出した相澤先生。
捕縛布を向けた先には布を被った2人。
するそこから現れたのはマネキンを持った八百万さん。そしてその横には布のようなものを乗せたカタパルト。
そしてそれを発射し、相澤先生の元へ。
「凄い、相澤先生の布みたいなのを作ったんだ!!」
「撹乱……かな?凄い!!」
緑谷くんと共に作戦に驚いていると、それだけではなくて。
もう片方の布から現れた轟くんが炎熱を放つ。
するとその撹乱していた布がどんどん縮まって、相澤先生を捕らえた。
「…………え!?何今の!?!?」
「……恐らく、熱によって形状が戻る。とかそう言った素材を使ったんじゃないかな?」
凄!!頭良すぎ!!!てかそれを見ただけでわかる緑谷くんも頭良すぎでは!?
「はぁ……私には全然わからんなぁ。」
「私も…………え、大丈夫かな。あんな賢さ無い私だけど大丈夫かな?」
「……補習になったらちゃんと慰めるよ!」
諦めないで、お茶子ちゃん!!
「……じゃあ私行ってくるよ、少しでも相澤先生の体力が回復する前に。」
「だいぶ卑怯なこと言ってる自覚ある?」
「悪魔だから許して?」
すたらこらさっさとモニタールームを抜ける。どうしよう、彼らの戦いを見ても何も得られなかった。私には出来ない芸当だった。
………………ほんとに、どうしよう。