「……あ、夜魔。」
「轟くん!それに八百万さんも凄かった…………ってえ!?どうしたの!?」
急げ急げと試験会場へ向かうと、涙ぐんでいる八百万さん。慌てて駆け寄って大丈夫?と声をかける。
「は、はい…………嬉しくて……!私のオペレーションがちゃんと通用したのが嬉しくて……!」
「そ、……そっか…………2人とも凄かった!!流石だね!!」
オペレーションって……何?どういう意味?ちょっとよくわかんないけどたぶん通用した。って言ってるから作戦、とかそういう意味だろう。うん、たぶん。
「ありがとうございます!夜魔さんも頑張ってくださいね……相澤先生は手強かったですわ。」
「あぁ。……1人で相手するなんて不利だとは思うけど、頑張れよ。」
「うん!正直自信も無いし、作戦も何も無いけど……負ける気は無いよ!」
「ふふ、相変わらずの強気ですわね。」
「弱気よりは遥かに良いな。」
「でしょ!じゃあ頑張ってくるよ、2人ともお疲れ様!」
試験会場を出ていく2人を見送って、試験開始の合図を待つ。
とにかく個性は発現出来たらラッキーぐらいで考えないと駄目だな。あとは……。
聞こえたブザー。
「夜魔、試験開始。」
「……考えてる暇も無いな!」
私は駆け出して、翼を広げた。
◇
暫く飛んでいると見つけた黒い人影。
落とされたらたまったもんじゃないので、翼をしまって地から攻める。
すると勿論気づかれて、個性が消える。
「悪いな、お前だけ1人で。だからと言って手加減はしない。」
「……知ってます、でも負けません!!」
だって、これで相澤先生に勝てたら轟くんに少しだけ近づける、いや越えられるんじゃないか?
今まで何をやっても負けっぱなしだった轟くん。彼を超えるチャンスが今、来ている。
捕縛布に片腕が捕まり、引っ張られるが、常に個性の発現を試みる。
「お、前…………意外と、」
「ちゃんと、鍛えてるんです!!オールマイトにも言われましたから!!」
個性だけに頼らず、自らを鍛える。今までの個性鍛錬に加えて現在は自重だって行っている。
付け焼き刃ではあるが、やってないより遥かにマシ。現にパワー系ではないかつ2戦目で多少疲労している相澤先生相手になら、なんとか少しだけ引きずられつつも、均衡を保てている。
この状態で均衡を保つことで有利になるのは私だ。先生もずっと個性を使い続けるなんて、
「!!」
「出来ないでしょう!?」
現れた個性、鉤爪で捕縛布を掻き切ると瞬時に先生の元へ。
「お前の個性を消し、綱引きで均衡を保って俺が時間勝ちするってのは考えなかったか?」
すぐに身を引かれて、鉤爪は届かない。でも、
「考えてません、それはさせないから!!」
翼を羽ばたかせ、先生との距離を稼ぐ。しかしその瞬間にまた個性を消されて捕縛布での綱引き。
そしてまた個性を使おうと試み続ける。この距離なら、使える。必ず使える。先生は個性を消すために私を見ないといけない。
この距離で、先生のの視界いっぱいに私を。
………………来た!!
捕縛布を同じように掻き切る、そして
「っ!?」
先生の片腕に両足を乗せるにして動きを止め、ほぼゼロ距離で発現させる。母の個性。
「個性を使わないでください、そのまま動きを止めて。」
「…………クソ…………やられたな…………。」
咄嗟に捕縛布へとかけていた手を降ろし、大人しくなった所でそのまま手錠をかけた。